自由慄

著者 :
  • 太田出版
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本棚登録 : 193
感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784778319052

感想・レビュー・書評

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  • これはどうでもいい手紙ではなく「じゆうりつ」


    ルーズリーフを折る事で作られた小さな手紙。299の書簡に書かれた断片的な言葉をもとに構成した(という体裁の)本です。

    自殺した子とその友達の話? 赤い字の言葉は自殺した子に関わる文言? 色々な事を考えられて、ほんのりと恐ろしく、どこか儚い言葉の欠片から背景を想像し、考察するのが好きな方にはとても楽しいと思います。
    もちろん、純粋に自由律俳句、あるいは詩として読んでも繊細で不気味で美しい。

    印刷方法やフォントも凝っているので、そういう観点で見ても面白いです。

    近々『自由慄』トークイベントのアーカイブ視聴しようかと思っているので、もしかしたら後で少し追記するかも。

    ※2024/02/26追記
    梨さん×朝宮運河さん『自由慄』刊行記念トークイベント、アーカイブ視聴しました。見なくてもその人なりの楽しみ方がいろいろできると思いますが、こちら視聴してから読み返すと、解像度がとても上がるので興味ある方は視聴をお勧め。
    お二人ともお話が上手で、『自由慄』の話を除いてもとても興味深いです。

  • 新進ホラー作家が放つ最新作は前衛的な問題作。亡くなった友人の霊がある日から来たが恨みは感じない。友人と交わした小さな手紙を中心に時間が流れます。手紙には死の影が漂い、すぐにでも壊れそうな脆さが…果たしてこれは詩なのか怪奇小説なのか。

  • 8月31日から遡る形で7月1日のじゆうりつへと続く。友人の死と幽霊になって現れる生と死の痕跡。死に憧れた友人のその最後は分かったような分からないようなうすらぼんやりしたものだが、友人への愛惜の情がそこはかとなく漂っていて不思議な世界観だった。
    装丁もいい

  • 怖くもなく良さも分からなかった。装丁とデザインは凝ってる。10代向けなのか?単語の組み合わせが独特で、個々の文の気味悪さの解読のために何度も読んでいくような本なのにテーマが少女の自殺(しかも現実を匂わせている)なのはきつい。わかった風の人たちに消費されていくだけ。

  • 短い自由律短歌の連続なのに、毎回きちんと怖い。
    面白かった。
    セーラー服の少女が屋上から地面を見下ろしている様子が脳裏をチラつく。
    最初は詩集かと思っていたのに、通して読めば関係性が薄らと見える。



    以下、特に好きだったもの



    朝焼けに黒い液体をまきちらして、夜を散骨するように

    いっぱい名前を呼んでくれた、死体になってはじめて

    夢に出てきた故人にふれると、ブラウン管に
    指でふれるときと全く同じ、やわらかな拒絶の触感がする

    空が肌色のときだけ現れる鉄塔

    一匙のくすりの粉をわけあった日が
    プラセボになれますように

    静物画みたいな葬儀だった

    名札の安全ピンが初めての自傷だった少女が
    頭の中で空に泳がせていた魚

    カショオする専用の
    うどんの茹で方があるように、
    幽霊になる専用の
    死に方があるんだと思う



  • 学生時代にあの形の手紙をまわしあっていたから懐かしさと少し寂しさを感じた

    から私に送られる追悼句集

    2回目を読むのが楽しみ

  • 言葉少なに語られる友人の死と生前交換しあった「じゆうりつ」。
    そこにあった暗い気持ちや少女時代の恋、多くを語られる事はないがそれゆえ背景に何があったのか、何を思っていたのかを考えてしまう。
    短歌には比喩が多く用いられており直接的に何があったのかを知ることはできないが、それが想像を掻き立てて暗く陰鬱とした気持ちにさせられる。

  • 一語一句噛み締めるように、読了

    *****

    入れない大縄跳びをこわごわと
    みている人をみているようだ

    逃げきれなかったことだけは分かる留守電

    「もう教唆にはならない」と言い出してからは早かった

    自分ひとりだけ叫び声に気づけなかった

    讐の字を書けないあなたと作った復讐の計画

    突然に家族が「あなたのせいじゃない」としか言わなくなった

    紙パックの雑な開け方は変わっていないことを供えてから知った

    「死んだときの服装で出るって聞いたから、ディオールの、いちばん好きだったものを着せたんです」

    その日、校庭のオジギソウが一斉に閉じた

    プールサイドの水溜りの温度で浴室の裸足に血液がまとわりついた

    芸術選択も文理選択も違っていたわたしたちが唯一共有していた悪夢

    ボイスメッセージは聞かずに削除した
    まだ聞いていないあなたの言葉が残っていることを救いにするために

    三叉路でふりかえると全く同じ三叉路

    東京もあなたのこと嫌いだよ

    例えば大切なひとの、
    14歳ごろのプレイリストを見てみたいと思うとき

  • フリーダム!

  • ページをめくるたびにニヤニヤしちゃう。
    梨さんの書籍で一番好きかも。
    なんてフォントだろ、気になる。
    「と」は普通なのに「あ」「ど」がなかなか見かけない崩れ方してて特徴的。

    世にも奇妙な物語や、ネトフリとかのオリジナル配信みたいな感じで15分くらいのドラマで観たい!

    p.114 壁に「いつも清潔にご利用いただきありがとうございます」と書かれている祠
    ↑これ、イタズラ書きなのか、丁寧に気持ちを込められて書かれているのか気になる。

    p.125 証明写真機から出られない
    ↑怪異伝播放送局でも、こんな感じの配信あったよね。それ思い出してソワッとした。

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著者プロフィール

インターネットを中心に活動する怪談作家。日常に潜む怪異や民間伝承を取り入れた作風が特徴。主な作品に『かわいそ笑』(イーストプレス)、原案『コワい話は≠くだけで。』(KADOKAWA)などがある。そのほか、2021年10月よりWebメディア「オモコロ」でライターを、BSテレ東「このテープもってないですか?」で一部構成を担当するなどあらゆるメディアで活躍している。

「2023年 『6』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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