自由慄

著者 :
  • 太田出版
3.36
  • (5)
  • (10)
  • (8)
  • (0)
  • (5)
本棚登録 : 175
感想 : 12
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784778319052

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • これはどうでもいい手紙ではなく「じゆうりつ」


    ルーズリーフを折る事で作られた小さな手紙。299の書簡に書かれた断片的な言葉をもとに構成した(という体裁の)本です。

    自殺した子とその友達の話? 赤い字の言葉は自殺した子に関わる文言? 色々な事を考えられて、ほんのりと恐ろしく、どこか儚い言葉の欠片から背景を想像し、考察するのが好きな方にはとても楽しいと思います。
    もちろん、純粋に自由律俳句、あるいは詩として読んでも繊細で不気味で美しい。

    印刷方法やフォントも凝っているので、そういう観点で見ても面白いです。

    近々『自由慄』トークイベントのアーカイブ視聴しようかと思っているので、もしかしたら後で少し追記するかも。

    ※2024/02/26追記
    梨さん×朝宮運河さん『自由慄』刊行記念トークイベント、アーカイブ視聴しました。見なくてもその人なりの楽しみ方がいろいろできると思いますが、こちら視聴してから読み返すと、解像度がとても上がるので興味ある方は視聴をお勧め。
    お二人ともお話が上手で、『自由慄』の話を除いてもとても興味深いです。

  • 新進ホラー作家が放つ最新作は前衛的な問題作。亡くなった友人の霊がある日から来たが恨みは感じない。友人と交わした小さな手紙を中心に時間が流れます。手紙には死の影が漂い、すぐにでも壊れそうな脆さが…果たしてこれは詩なのか怪奇小説なのか。

  • 学生時代にあの形の手紙をまわしあっていたから懐かしさと少し寂しさを感じた

    から私に送られる追悼句集

    2回目を読むのが楽しみ

  • 言葉少なに語られる友人の死と生前交換しあった「じゆうりつ」。
    そこにあった暗い気持ちや少女時代の恋、多くを語られる事はないがそれゆえ背景に何があったのか、何を思っていたのかを考えてしまう。
    短歌には比喩が多く用いられており直接的に何があったのかを知ることはできないが、それが想像を掻き立てて暗く陰鬱とした気持ちにさせられる。

  • 一語一句噛み締めるように、読了

    *****

    入れない大縄跳びをこわごわと
    みている人をみているようだ

    逃げきれなかったことだけは分かる留守電

    「もう教唆にはならない」と言い出してからは早かった

    自分ひとりだけ叫び声に気づけなかった

    讐の字を書けないあなたと作った復讐の計画

    突然に家族が「あなたのせいじゃない」としか言わなくなった

    紙パックの雑な開け方は変わっていないことを供えてから知った

    「死んだときの服装で出るって聞いたから、ディオールの、いちばん好きだったものを着せたんです」

    その日、校庭のオジギソウが一斉に閉じた

    プールサイドの水溜りの温度で浴室の裸足に血液がまとわりついた

    芸術選択も文理選択も違っていたわたしたちが唯一共有していた悪夢

    ボイスメッセージは聞かずに削除した
    まだ聞いていないあなたの言葉が残っていることを救いにするために

    三叉路でふりかえると全く同じ三叉路

    東京もあなたのこと嫌いだよ

    例えば大切なひとの、
    14歳ごろのプレイリストを見てみたいと思うとき

  • フリーダム!

  • ページをめくるたびにニヤニヤしちゃう。
    梨さんの書籍で一番好きかも。
    なんてフォントだろ、気になる。
    「と」は普通なのに「あ」「ど」がなかなか見かけない崩れ方してて特徴的。

    世にも奇妙な物語や、ネトフリとかのオリジナル配信みたいな感じで15分くらいのドラマで観たい!

    p.114 壁に「いつも清潔にご利用いただきありがとうございます」と書かれている祠
    ↑これ、イタズラ書きなのか、丁寧に気持ちを込められて書かれているのか気になる。

    p.125 証明写真機から出られない
    ↑怪異伝播放送局でも、こんな感じの配信あったよね。それ思い出してソワッとした。

  • 何回か読んだけど、やっぱりよく分からなかった
    分からないように、私がしてるのかもしれない
    ただただ不穏

  • ここ最近梨さんがツイートしてた短歌の系統だー!
    本の仕掛けがすごくて色んな箇所で考察ができそう。
    考察させるの上手すぎ

  • ・2月6日に読み始め、10日に読み終えました。

    ・おもしろかった~。梨さんの本(流通に乗ってる本)はその怪文書を読みましたか以外たぶん全部読んでるんだけど、どれもガラッと変わった構成とか手法で書かれてて、シンプルにものがたりがうまい……と読むたび思っている。

    ・『かわいそ(笑)』と『6』読んだときは梨さんの話ってキモくて嫌(なのが良い)だな~って思ったけど、今作は全然そんなことなかったな。個人的には全然怖くもなかったかも。ふつうに少女の自由律句集から成る物語みたいな感じで読んじゃった。

    ・まあ、冒頭の凡例のおかげで、単なる物語として消費できないようになってるんですけどね。ほんとにうまい。


    ・句(…?)の内容的にはなんというか、たぶん5年前くらいは好んで読んでた系統なんだけど、ここ最近自傷とか精神疾患をコンテンツとして見ることがあまりできなくなってるので、直接的なものはあんまり…!って感じだった。だから黒い方のが好みだったかな。やっぱり不気味というか、い、嫌~…って感じのがこの人の本読んでるなって感じする。

    ・ただこういう思春期の病的なあれそれ…みたいなテーマって一種の美しさとか、切なさとかの「エモ」的な感情も内包してると思ってるんだけど、そういう切なくてうつくしい、風に見られる彼女たちの物語と同時にゾッとする薄気味悪さが並べられてるのはかなり良い。物語の見たくないところの存在を示されてるようで、対比が効いてる……

    ・組版もすごくよかったな。梨さんの本って、紙媒体になってこそ最大限のおもしろさを発揮するように作られてるから、本出るたびに欲しいなと思う。

    ・また梨さんの新作読みたいな♪

全12件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

インターネットを中心に活動する怪談作家。日常に潜む怪異や民間伝承を取り入れた作風が特徴。主な作品に『かわいそ笑』(イーストプレス)、原案『コワい話は≠くだけで。』(KADOKAWA)などがある。そのほか、2021年10月よりWebメディア「オモコロ」でライターを、BSテレ東「このテープもってないですか?」で一部構成を担当するなどあらゆるメディアで活躍している。

「2023年 『6』 で使われていた紹介文から引用しています。」

梨の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×