ライチ☆光クラブ (f×COMICS) (Fx COMICS)

著者 :
  • 太田出版
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (327ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784778320171

感想・レビュー・書評

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  • 頭がいいようで子供な、そしてバラエティに富んだ光クラブの面々を使って精神の壊れ方、組織の自滅するさまを描いたエログロアングラBL作品。

    作中の不条理(冒頭の女教師の後始末とかライチの構造とか)はあまり気にしてはいけない。現実的な不条理はさておき、作中の伏線なんかはすごくスマートに几帳面に回収してるし、そのナンセンスさで光クラブというものがどういう存在でその構成員はどういった属性なのかが非常にわかりやすく簡潔に示されているのだと思う。
    ヒロインのカノンという少女(この子もたいがいおかしな人物)の微妙な正しさが光クラブ破綻の引鉄になっていて、その崩壊劇の容赦なさはこの世界の無常さや暗い未来を暗示している気がしないでもない。

    タミヤが舞い戻って以降の息をもつかせぬ怒涛の展開は…滅びの美学というか…ああ…やっぱりそうなっちゃうのかという感じ。(ジャンプ脳的にはそうなってほしくないんだけどそこはアングラ作品)

    で、すべてが終わったラストのコマを見て、やっぱりカノンもおかしな子だなあ…と。

  • 期待しすぎたせいか、評判よりは楽しめなかった。ひたすらグロいしキモい、サディスティック

  • 雷蔵の死に様がいちばんうつくしかった。
    「せめて顔はやめて」という,気高さ。
    死より美に重きを置く。

    しかし好きなのはジャイボですけれどもね。
    ええ,如何にも,好きそうでせう?

  •  ある町のある廃墟の奥。そこに「光クラブ」と名づけられた少年たちの秘密基地がある。
     そこにはゼラと名乗る少年が帝王として君臨し、手下の少年らと1つの計画を進めいていた。
     その計画とは少年たちの欲望を満たすための機械「ライチ」の製作。そして今まさに「ライチ」が目覚める時が到来し…。
     残酷劇(グランギニョル)が幕を開けた!

     1985年12月、劇団「東京グランギニョル」による第三回公演「ライチ・光クラブ」が上演された。東京グランギニョルは数年の活動期間にわずか4作品を発表しただけながら、作品中では廃墟や学生服をフィーチャー、暴力的・退廃的な描写でマニアックな評判を呼び、今なおカルトな人気を誇るという伝説的な劇団である。
     今回はその東京グランギニョルによる「ライチ・光クラブ」を古屋兎丸氏が漫画化。思春期の少年たちの破滅衝動と残酷性を耽美に描く。

     作者自身がこの劇に大きな思い入れをもっているだけあって(あとがきでは非常に熱っぽく本作や劇団に対する思いを語っている)、とにかく渾身の筆致である。至る所で人が死んだり人体が破壊されたりと残酷描写が登場するので、そういうのがダメな人は受け付けないかも知れないが、それらの残酷描写でさえ耽美な作品全体の雰囲気を壊さないよう洗練されたタッチで描かれている事だけは付け加えておこう。

     古屋氏はつい最近まで『π』という爆笑必至なバカ漫画を描いていたのだが、本作では180°方向転換し、妖艶にして残虐、そしてダークな少年たちの世界を余すところなく描ききっている。

     こんな事をしたら大事件になって社会問題になってしまうのでは?とか、こんな事をしてなぜバレないのだろう?とか、現実的な整合性の合わない部分も多数あるが、そこらへんはまあ深く考えなくてもよいらしく、とにかく頭からこの雰囲気に浸かってしまえばよいらしい。

     特に少年たちのボス・ゼラというキャラクターに関しては出色の描写である。大人になることを罪とし、類稀なカリスマにより廃墟に君臨する学生服の帝王は、その頭脳により悪事の限りを尽くすのだがその表情の美しさばかりが印象に残る。最期の場面の壮絶なまでの美しさは強烈だ。

     童貞の少女に対する抑えきれない衝動、いくら拒んでも大人になってしまう焦り。本作ではそれに薔薇的な関係を取り込み、そこにライチというロボットの人間に対する感情を絡みつかせている。少年たちの暴走はやがて取り返しのつかない破滅へと導かれていく。

     少年たちにとって重要な役割を担うカノンという少女の行動原理がいまいちよくわからなくて読みながら戸惑ってしまったのだが、彼女が少年たちの憧れと欲望を一身に背負わされたヒロインである事を考えれば、彼女の行動も何となく理解できる。少年らにとって彼女は女神そのものだったのだ。

     分量の割に続きをどんどん読ませる技術は素晴らしい。作画も雰囲気たっぷり。
     だいぶ原作の劇とは違う部分もあるらしいが、とにかく本書は演劇「ライチ・光クラブ」の単なる漫画版という訳ではなく、古屋氏による新しい解釈を経て20年後に蘇った「ライチ・光クラブ」だと考えた方が良いのだろう。

     読み終えた後、≪ゴウン、ゴウン≫という工場の不気味な響きがいつまでも耳に轟く作品である。

  • 本書を読む前に。
    まずは食事前後を避けることをお勧めする。
    そしてこれから食事に向かうというなれば、肉類などは口にしない方がよいだろう。
    この手の漫画に慣れている人にはこのような前書きは必要ないのだが、
    慣れていない人にとっては苦痛でたまらない描写がつづくからだ。

    廃工場を秘密基地として活動する8人の少年の狂った話。
    少年たちが「ある計画」のためにロボットを開発する。
    「ある計画」というのは「少女の捕獲」といういかにも少年らしい・・・
    というよりもこのように大きな描写をしていて
    すでに死者もでているなかで「そんなこと?!」と思ってしまうのが大人だろう。
    この少年特有の不可思議さに少し笑いを浮かべながらも
    読み進めていくと
    「ライチ」と名付けられたロボットが人間に近づくための物語や、
    一人の少女との出会いがライチの感情にどのようなものをあたえるのかが
    美しいといわせるまでの人間関係とともに描かれていく。

    最後の局面に向かうほど、読むのが辛くなるが、読み終えた後は
    ついもう一度読んでしまう。

  • 面白かった…。
    カノンが思ったよりずっと可愛かった。
    頭のネジが外れた少年達は私が思っていたよりもずっと普通に少年で、それが意外でした。
    ゼラとかもっといっちゃってる感じだと思ったのですが最後怯えたり驚いたりかわいくて、そしてリアルだった…。
    薔薇と水葬のシーンは綺麗だったなあ。腹からなんか出てましたが。

  • この漫画はアンダーグラウンドの極みです。
    エログロ・耽美・ボーイズラブ・ミステリーの要素がうまーく融合されています。
    好きな人は本当にハマるけれど、
    嫌いな人は本気で焼き捨てたくなるんだろうな~(´-`)モッタイナイ


    イラストが本当に美しい。
    登場人物全員(例外ありw)が美しい。
    けれど雰囲気は最初から最後まで本当にダーク。
    暴力の連続。
    目を背けたくなるシーンだらけだけれども、ものすごく魅力的。
    私はこの漫画大好きです。


    「異性が気になる」
    「好きな人から好かれたい・お気に入りになりたい」
    「自分達だけの秘密を持ちたい」
    「自分がトップでいたい」
    「性行為への興味」
    「死に対する憧れ」
    そして「醜い大人なんかになりたくない。若くて美しいままでいたい。」など思春期の少年・少女なら誰でも持っている欲望、願望が凝縮されています。
    普通ならその欲望はほとんど実行に移される事はありません。
    なぜならやっては「イケナイ」事、実現が「不可能」な事が大半を占めるから。
    欲望を抑圧しなければいけないジレンマに
    苦しんで、悩むのが「普通」の人間。
    けれど、この物語に出てくる光クラブのメンバーは、
    その欲望を満たすために、実際に行動を起こしてしまいます。
    少年犯罪を起こすような中高生って、きっとそういう心理なのかなーとぼんやり思いました。

    なぜ、光クラブのメンバーはむちゃくちゃな計画を実行できたのか。
    それは光クラブでの絶対的存在であるゼラ(表紙真ん中のメガネボーイ★)がいたからでしょう。
    若干13歳にして天才的なセンスを持つゼラ。
    美しい容姿と優れた頭脳を持つ彼は光クラブのメンバーの憧れ。
    ゼラはメンバー達にとって自分達と同じ「人間」ではなく
    「神」だったのではないでしょうか。
    私自身も前半のゼラはどことなく人間的なものを感じませんでした。


    13歳の中学生達が人知れず完成させた、会話もできて自分で考える事もできる人型ロボットのライチ。
    こんなに大掛かりなものを作ってまで少年達がたくらんでいる事はなんだろう?きっと、とてもスケールが大きい事に違いない!
    と思って読み進めると、ゼラが命令したことは「少女の捕獲」
    光クラブのメンバーは男子中学校の生徒で同年代の女の子なんて見た事がないから。
    なんて稚拙な目的なんだ…
    でもだからこそ、この物語の登場人物がどこにでもいる普通の中学生なんだなと改めて認識できました。


    そして、衝撃のラスト。
    謎だらけだったゼラという人物が
    本当はどのようなものだったのかが明らかになります。
    私はゼラと『DEATH NOTE』の大詰めシーンの夜神 月がなんとなく重なって見えました。


    ピーターパンシンドロームな私にとって、
    この作品は色々考えさせられる事が多かったです。


    またこの作品は東京グランギニョルという劇団の『ライチ光クラブ』という同名作品が原作となっています。
    漫画オリジナルの要素もありますが、この物語の劇、非常に見てみたかったです。
    漫画を読みながら、「このシーンは舞台上で、どうやって表現したんだろう」とか「もしキャストを決めるとしたら誰がいいかな」とか考えながら読むのも楽しいです。
    ちなみに私は演じるなら雷蔵(向かって右側の上から2番目丸の中の男の子)をやってみたいです。
    超お茶目なおねえキャラ☆なんか憎めない。

    とにかく面白かったです。久々のヒットでした。

  • 今一番好きな作品でごわす。
    読み終わった後は心臓鷲掴みされたような感じになる。
    皆切ねえよ(ノД`)

  • これは本当に面白かった。

    基本的にグロいし、濃厚な同性愛描写等の要素があるにもかかわらず、特に目を伏せる事もなく、じっくり読めた。
    キャラたちがとても個性的で楽しいところもあって面白かった。
    なかなか中毒性があるよ。

  • 残酷、サイコ要素が混在する病的な恐ろしさ、その容赦無いグロテスクさをも凌ぐ美麗な描写。
    主人公「ゼラ」の狂気じみた思考、そして盲目的なまでに彼を支える仲間たちに、人間独自の恐怖感を通り越しながらも強い魅力を感じます。

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著者プロフィール

一九六八年東京都生まれ。九四年に『月刊漫画ガロ』より「Palepoli」でデビュー。卓越した画力と多彩な画風で熱狂的な支持を集める。著書に『ライチ☆光クラブ』『帝一の國』『女子高生に殺されたい』などがある。

「2021年 『谷崎マンガ 変態アンソロジー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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