怪奇漫画家・日野日出志の傑作選。
血や異形の表現に、まず、ぎょっとさせられるけど、『藏六の奇病』や『水の中』などの作品は、突き詰めたおどろおどろしさの中に、底から滲み出るような美しさがあって、淡々とした語り口には不思議に上品さすら感じられた。
長編『地獄変』は満州で産まれたという作者の現実の過去と、妄想上の一族、家族そして住む町の様子とが渾然一体となって渦巻いていて、作品に充溢した狂気に終始圧倒される。
おぞましいながらポップな表紙のアートワークに目を惹かれ手に取ったのだけれど、濃厚で読み応えのある作品集だった。