社会問題の変容 ―賃金労働の年代記―

  • ナカニシヤ出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (632ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784779506376

作品紹介・あらすじ

失業と労働条件の不安定化がもたらす今日の社会的危機の根源は何か。賃金労働の軌跡を14世紀から捉え返し、社会的なものの成立過程とその危機を明らかにするロベール・カステルの主著、待望の完訳。

感想・レビュー・書評

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  • 半分も読み進んでいないが、神本の予感しかしない。

    なによりも、労働関係の議論にありがちな告発系の議論ではなく、一義に「徹底的に流動化するポストモダン、脱工業化時代における社会は如何に可能か。社会システムは社会的凝集性をどのように達成するのか」というような、社会学的関心の王道をいく議論を、(単に経済的生産としてだけではなく社会へ組み込みとしての)労働とそれによって形成される領域(社会に組み込まれ統合された領域と、そこに組み込まれず排除された領域との関係)の歴史的経緯を背景に進めようとしているところがすばらしそう。

    社会学は何を根本的問題として扱うか、を知るための本としてもよさげ。

    二段組み約600ページ、価格6500円。勿体無いから真面目にコツコツ読み進めている。前書きだけでも読む価値あるんじゃないだろうか。

    前書きの〆はこんな感じ。

    「社会組織がますます複雑化する一方、それを構成する諸部分のあいだに相補的関係が成立することを保証するこの紐帯のことを、エミール・デュルケームと十九世紀の共和主義者たちは連帯(ソリダリテ)という名前で呼んだ。それは社会契約の基礎であった。デュルケームが社会契約に、このような新たな表現を与えたのは、伝統と慣習に基づく秩序の再生産に依拠していた古いかたちの連帯が、工業化の進展によって脅かされたまさにそのときであった。二十世紀のはじまりとともに、連帯は、社会が自分自身を自覚的に支える行為となり、そのとき社会国家(著者が恣意的に福祉国家を呼びかえた名)はみずからその保証人を引き受けた。二十一世紀を目前に控え[原著出版は一九九五年]、今度は工業社会という枠組みのもとで機能してきた調整(レギュラシオン)の仕組みが根本から動揺しているいま、あらためてこの社会契約を定義し直さなければならない。社会契約とは連帯の契約であり、労働の契約であり、市民権の契約である。それはすべての人びとを包摂し、啓蒙主義の時代に述べられていたような意味で互いの交流(コメルス)を可能にする条件、すなわち「社会形成」の条件とはいったいどのようなものかを考えることなのだ。」

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著者プロフィール

1933年フランス・ブレスト生まれ。社会学者。パリ社会科学高等研究院(EHESS)教授などを務めた。主な著作に『精神分析主義――精神分析的秩序と権力』(Le Psychanalysme : L'ordre psychanalytique et le pouvoir, Maspero, 1981)、『精神医学の秩序――精神医療の黄金時代』(L'Ordre psychiatrique : l'age d'or de l'alienisme, Minuit, 1977)、『精神医学社会の進展――アメリカモデル』(Francoise CastelおよびAnne Lovellとの共著、La Societe psychiatrique avancee : Le modele americain, Grasset, 1979)、『リスクの管理――反精神医学からポスト精神分析へ』(La Gestion des risques : De l'anti-psychiatrie a l'apres-psychanalyse, Minuit, 1981)、『社会問題の変容――賃金労働の年代記』(Les Metamorphoses de la question sociale : Une chronique du salariat, Fayard, 1995)[前川真行訳、ナカニシヤ出版、2012年]、『私的所有、社会的所有、自己所有――近代的個人の構築をめぐるインタヴュー』(Claudine Harocheとの共著、Propriete privee, propriete sociale, propriete de soi : Entretiens sur la construction de l'individu moderne, Fayard, 2001)『社会の安全と不安全――保護されるとはどういうことか』(L'lnsecurite sociale : Qu'est-ce qu'etre protege ?, Seuil, 2003[庭田茂吉、アンヌ・ゴノン、岩崎陽子訳、萌書房、2009年]、『否定的差別――市民か、あるいは植民地先住民か』(La Discrimination negative : Citoyens ou indigenes ?, Seuil, 2007)がある。2013年死去。

「2015年 『社会喪失の時代 プレカリテの社会学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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