関係からはじまる―社会構成主義がひらく人間観

  • ナカニシヤ出版
4.30
  • (5)
  • (4)
  • (0)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 130
感想 : 11
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784779514234

作品紹介・あらすじ

社会構成主義の第一人者ガーゲンが、独自の関係論から世界を徹底的に記述しなおし、新たな知の地平を切り開く。
存在を隔てる壁を無効にし、対立を乗り越える未来への招待状。
PROSE Awards(心理学部門、2009年度)受賞作。

●原著者
ケネス・J・ガーゲン(Kenneth J. Gergen)
1957年イェール大学心理学部を卒業、1962年デューク大学心理学部で博士号を取得。ハーバード大学助教授を経て、1967年よりペンシルバニア州スワースモア大学心理学部の助教授、1971年より同教授。2006年に退職。現在、同大学名誉教授。社会構成主義の第一人者として数多くの著作を発表。多くの研究者や実践家と対話を重ね、社会構成主義の理論と実践を結集して社会に変化をもたらすために活動を続けている。邦訳に、『あなたへの社会構成主義』『社会構成主義の理論と実践』『もう一つの社会心理学』(以上、ナカニシヤ出版)、『現実はいつも対話から生まれる』『ダイアローグ・マネジメント』(以上、Discover21)、他。

●訳者
鮫島輝美(さめしま・てるみ)
京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了
博士(人間・環境学)
現在,京都光華女子大学健康科学部准教授
主要著作:
『「生きづらさ」に寄り添う〈支援〉』(単著,ナカニシヤ出版,2018)

東村知子(ひがしむら・ともこ)
京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了
博士(人間・環境学)
現在,京都教育大学教育学部准教授
主要著作:
『発達支援の場としての学校』(共編,ミネルヴァ書房,2016)
『音楽アイデンティティ』(共訳,北大路書房,2011)
K. J. ガーゲン『あなたへの社会構成主義』(翻訳,ナカニシヤ出版,2004)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 「あなたへの社会構成主義」が、まだ検討しなければならないことがたくさんある、というトーンだったので、その後のガーゲン理論の発展を知りたくて、読んでみた。

    が、正直なところ、帯に書いてあるほど「新境地」は感じなかったかな?

    「あなたへの」との比較では、
    ・学術的な記載の度合いがへった
    ・あわせて、他の理論への批判が少なくなり、より身近な事例の紹介が増えた
    ・ガーゲンの個人的なエピソードも増えた
    ・具体的な実践事例の紹介が増えた
    という感じかな?理論的な「新境地」はなくても、「伝え方」が違うことは、言葉による社会構成という観点では、新しいことなのかもしれない。

    一番、「新境地」を感じたのは、道徳的な相対主義の乗り越えの部分かな?最後の章は、なんと言葉を超えたスピリチュアリティについて言及してあって、とくに仏教とのリンクについての記載は、面白いというか、おお、ガーゲンもそっちにいくのかという感慨があった。

    あいかわらず、「個人主義批判」、「本質主義批判」、「科学主義批判」は強い。そうしたものへのオルタナティヴという意味で「関係主義」?みたいなものを提唱するわけで、そのロジックに一段の洗練は感じるが、本人も否定しているはずの「関係性決定論」的な印象は残る。

    わたしも、基本的なスタンスとしては、「反個人主義」「反本質主義」なんだけど、ここまで「関係性」から「はじま」ってしまうと、なんか「個人主義」の良さを主張したりしたくなる。

    私はきっとへそ曲がりなんだろうな。

    「関係」を強調するのは、「個人」の強いアメリカでは意味のあることだと思うけど、「関係」に絡めとられている感じの日本だと、むしろ「個人」を強調したほうがいいのかなと思う今日この頃。

    結局、なにごとも中庸が大事みたいなところに落ち着くわけだが、これって当たり前すぎて、一貫した議論にはなりにくいよね。

    ガーゲンも、その辺のところはわかったうえで、一つのロールとして、「関係性」を主張しているのかもしれないな。

  • 「我つながる、故にわれあり」

    心を個人という枠でとらえるのではなく、関係性の中にあると捉らえることで現在の多様な問題への解決となるという主張が中心テーマとなっている。
    地球を中心に太陽が回っているのではなく、太陽を中心に地球が回っているコペルニクス的転回に類する転換である。



    デカルトから始まる従来異的な個人観である「境界画定的存在」に対して、「関係規定的存在」としての人間像を示される。また、関係性(コンテキスト)の中で人は変わるという「変幻自在的存在」としての生が示されている。心は個人の「内的な」状態ではなく、関係性の状態?(協応行為)として描かれる(この意味でも従来的な認知心理学とは大きな見直しを図ることになる)

    また、心の存在を関係性として描いたとしても、自他の境界が自身が所属するコミュニティの内と外にシフトするだけという課題の発生について、善の問題として取り上げている。この点については、ロールズから始まる正義論の議論を軽くなぞっているレベルに感じた。
    また、その「善そのもの」については、本書では、「(どうやっても?)わからないため、いったん留保して実践から考えよう」という結論。実践として紹介される企業、セラピー、社会などの事例において、この個人、チーム、コミュニティの境界をなくす、融合させる取り組みについて丁寧に挙げている。これらについては、社会心理学者としての著者の強い課題意識を感じた。

    全体内容は、他書で見聞きしたととがあることが多く(こちらが本家かもだが)、あらためて丁寧に説明、整理されて事例があるなどわかりやすく記載されているが、自分は新しい示唆としては得ることは少なかった。

  • 関係規定主義。
    関係に価値を置く。

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB50217095

  • 卒論のテーマそのものではないが、読むといろいろとヒントになるであろう。また、専門の研究、ということで大学での研究環境に役立つことが1章にあてられていた。具体的な例が豊富になるので、例だけを読んでもいいかもしれない。

  • 東2法経図・6F開架:361.4A/G36k//K

全11件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1957年イェール大学心理学部を卒業、1962年デューク大学心理学部で博士号を取得。ハーバード大学助教授を経て、1967年よりペンシルバニア州スワースモア大学心理学部の助教授、1971年より同教授。現在、同大学Senior Research Professor。社会構成主義の第一人者として数多くの著作を発表。多くの研究者や実践家と対話を重ね、社会構成主義の理論と実践を結集して社会に変化をもたらすために活動を続けている。邦訳に、『関係からはじまる』『あなたへの社会構成主義』『社会構成主義の理論と実践』『もう一つの社会心理学』(以上、ナカニシヤ出版)、『現実はいつも対話から生まれる』『ダイアローグ・マネジメント』(以上、Discover21)、他。

「2023年 『何のためのテスト?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ケネス・J・ガーゲンの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×