- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784780312614
作品紹介・あらすじ
「世界」とはそもそも何なのか。17世紀以前のアジアを対象に、各地域世界の誕生、発展とその一体化の歴史を追う。その際、ヨーロッパとアジアがどう出会い、お互いをどう認識したのかを重視し、「出来事の歴史」の積み重ねをふまえつつ、その意味を分析することによって、「考える歴史」として捉えていく。
感想・レビュー・書評
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新しい高等学校学習指導要領により、歴史教育について「歴史総合」が設けられることになった。これまでのように世界史と日本史を切り分けるのではなく、また「覚える歴史」から「考える歴史」への転換、これらが目指されている。こうした動きに対応して関係書籍が刊行されてきており、この「講座:わたしたちの歴史総合」シリーズもその一つの試みであるとのこと。
第1巻の本書では、16世紀までのアジアが対象とされる。
一回限りの「あった歴史」「出来事の歴史」と、その意味を考えたり叙述する「考える歴史」との相互不可分の関係、本書では具体的にはヨーロッパとアジアとがどのような形で出会い、おたがいをどのように認識しあうようになったのか、それが世界史上のどのような出来事のつみかさねとして生まれてきたのか、この観点からの叙述を本巻の課題の一つとして取り組みたい、著者は言う。
第1章では、過去、人々は世界をどのように認識してきたか紹介した上で、松田壽男や家島彦一の地域区分論を参照し、著者は地域世界を7つに区分する。それぞれの地域世界は境界線と境界領域を持っているが、様々な交通関係を通じて、相互作用圏が作り出される。
第2章では、農耕社会と遊牧社会の起源、展開の概要が
説明される。
第3章では、まず首長制社会の誕生が取り上げられ、モンゴル、インド、中国の例が紹介される。そして初期文明、さらに国家の形成へと筆が進む。
第4章からは地域世界の相互作用に焦点を当てて時間の遷移に即した説明がされる。漢と匈奴の対立と併存から始まり、中央ユーラシアの動向、イスラームの勃興、チュルク民族の西方への移動とそれに伴う各地の変動、そして大元ウルスの形成へ。
これだけ広大な地域の、しかも古代から16世紀までの歴史を取り上げており、特に第5章は駆け足で通り抜けている感は否めない。あくまでも個々の出来事に関する知識等は別の形で習得した上で、大きな動きを掴むという形で本書を読むことが適当かと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
農耕社会と遊牧社会の形成・展開に始まり、部族制から首長制、次いで初期文明、文明の発展。本書では欧州世界は脇役で、主役はユーラシアの各地域だ。
扱う地域も時代も広いが、実感するのが国民国家以前の時代、国や文明の境界が曖昧で相互作用もあったこと。ユーラシア東西、また東方世界やイスラム圏のそれぞれ内部での衝突、民族移動、交易など。ある特定の地域史、と明確に区分できない。