- Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
- / ISBN・EAN: 9784780312621
作品紹介・あらすじ
「国家」とは何だろうか。国家を抜きにして成り立たない現代において、この問いへの回答は不可欠である。固有の領土のない国家、外国人も皇帝になれた国家、儀式以外の機能を備えていない国家──。17世紀以前のヨーロッパを対象に、現在の常識からかけ離れた国家のさまざまな姿を描くことで、この問いに迫る。
感想・レビュー・書評
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本巻では、西洋を中心に、17世紀以前の国家が論じられる。近代国民国家成立以前には、様々な形態の国家があった。
代表的な国家としてまず古代ギリシアの都市国家と、世界帝国アケメネス朝ペルシアが取り上げられ、次いでアレクサンドロスの大帝国の成立とヘレニズム国家の分立と続くが、特殊な国家形態としてギリシアに現れた都市同盟、連邦国家が紹介される。BC3世紀半ばからBC2世紀初めにかけて発展したが、最後はローマにより解体されてしまう。その基礎を築いたアラトス、「最後のギリシア人」と呼ばれたフィロポイメン、人物まで含めてこの辺りのことは初耳だった。
第2章では、都市国家から世界帝国へと変貌したローマの歴史が論じられる。「ローマ人の物語」で史実は結構知っているが、グラックス兄弟の改革の歴史的意義やマリウスの軍制改革がその後にどのような影響を与えたか、またローマのユダヤ支配の具体例などのポイントが要領よくまとめられていて、とても勉強になった。
第3章では、神聖ローマ帝国の実態、またカペー朝フランスとイングランドとの関係が百年戦争を経て新たな関係を作り出したことなどが紹介される。
国家には様々な在り様があることを歴史に照らして良く理解させてもらえたが、この時代は、やはり戦争、軍事力が大きく影響していることを改めて実感した。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
古代アテネ、アケメネス朝ペルシア、ローマ、中世に入り神聖ローマ帝国、百年戦争に至るまでの英仏。本シリーズ3と異なり、具体的事象に即して割と素直に歴史を追っている感じ。
古代はもちろんだが、現代の国境線に少しは近づいてくる中世すらも、領邦の分立、王家の血縁、戦争等による領土の変化が目まぐるしい。著者によれば主権国家という理念はその後の絶対王政のもとで確立。国民国家は19世紀からで、ジャンヌ・ダルクもその中で英雄化されたという。
今我々が考える国家の枠組みが中世以前では絶対ではなかったこと、またドイツ史、英仏百年戦争などと今の国家を基準に考えて良いものかに気づく。