生命倫理学入門 第3版 (哲学教科書シリーズ)

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  • 産業図書
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  • Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784782802120

作品紹介・あらすじ

健康と病気の問題、医療の問題は、昔から人々の関心事であったはずである。とはいえ現在、以前の何倍もの関心を人々に呼び起こしているようにみえる。その背景は何かを探る。

感想・レビュー・書評

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  • 生命倫理学の比較的コンパクトな教科書です。なお2020年現在、第4版が刊行されているようです。

    わが国の状況にそくした具体的な問題を掘り下げることで、読者に生命倫理学的な発想を紹介するというスタイルで書かれています。とくに前半は、人工授精や脳死移植、妊娠中絶などの諸問題がとりあげられており、読者みずからがこれらの問題について考えるための手がかりを提供しています。後半に入ると、パーソン論の紹介や、QOL(生命の質)とSOL(生命の尊厳)、ターミナル・ケアをめぐる諸問題から見えてくる「人間とは何か」というテーマがあつかわれることになります。

    具体的な問題を導入にしているだけに読みやすい本だと思います。その一方、欧米の生命倫理学における原理的・体系的な考察についての説明はすくないように感じました。

  • 生命倫理学の入門書としては良い方ではないかと思いました。

  • 【目次】
    まえがき [001-002]
    目次 [003-006]

    第1章 生命倫理学とは何か 001
    1 生命倫理学の成立 001
      医の倫理/バイオエシックス
    2 倫理学という学問について 005
      功利主義と義務論/原理とその実践
    3 生命倫理学の位置づけ 009
      理性的存在/生命倫理学の諸原理/生命倫理学の範囲

    第2章 健康・病気・医療 015
    1 健康と病気 015
      健康の概念/病気の概念
    2 予防と診断 019
      予防/診断
    3 治療 024
      治療の目的と方法/対処療法と原因療法

    第3章 生殖技術 029
    1 生殖技術の発展・拡大 029
      AIHとAID/体外受精/その後の展開
    2 倫理問題への対応 033
      「ウォーノック報告」/生殖技術と法的措置/クローン技術
    3 日本の状況 037
      日本産婦人科学会の「会合」/「会合」の問題点

    第4章 移植医療 043
    1 脳死 043
      死と脳死/脳死の判定/脳死と植物状態
    2 臓器移植 048
      様々な臓器移植/脳死からの臓器移植
    3 移植医療の問題点 052
      「臓器の移植に関する法律」/臓器移植をめぐる諸問題/臓器移植法施行後の状況/臓器移植法の改正

    第5章 科学的医学の論理と倫理 059
    1 科学的医学の成立とその論理 059
      西洋の医学/科学的医学の成立/科学的医学の論理
    2 人体実験 064
      治療的実験/治療と関係のない実験/動物実験
    3 「ヘルシンキ宣言」 069
      ナチスの人体実験から「ヘルシンキ宣言」へ/「ヘルシンキ宣言」の内容と性格

    第6章 人工妊娠中絶 075
    1 人工妊娠中絶 075
      日本の状況/出生前診断
    2 アメリカの中絶問題 079
      ロウ対ウェイド裁判/中絶問題の現状
    3 胚・胎児・新生児の資格 082
      胎児の資格/胚の資格/新生児の資格

    第7章 安楽死 089
    1 安楽死と安楽死裁判 089
      治療行為の中止/安楽死/横浜地方裁判所判決
    2 アメリカの安楽死裁判 094
      安楽死/植物状態患者の安楽死――クインランとクルーザン/安楽死容認の動き
    3 もうひとつの安楽死 098
      対応能力が欠けている患者の安楽死/安楽死問題の現段階

    第8章 人間とは何か 103
    1 世界の中の人間 103
      人間の位置/意識の働き/人間中心主義の問題点
    2 パーソン論 107
      トゥーリーのパーソン論/エンゲルハートのパーソン論
    3 パーソン論と動物の地位 111
      パーソン論の射程/シンガーの動物の権利論

    第9章 ターミナルケア 117
    1 ガンの治療 117
      不治の病/ガンの治療とその限界
    2 ターミナルケア 121
      死について/キューブラー=ロスのターミナルケア論/その他のターミナルケアへの取り組み
    3 緩和医療 125
      緩和医療の流れ/緩和医療の定着

    第10章 遺伝子技術 131
    1 遺伝子技術と医療 131
      ゲノム解析/ADA欠損症の遺伝子治療
    2 遺伝子診断 135
      発症前診断・保因者診断/出生前診断
    3 優生学的問題 139
      優生学/「優生保護法」と消極的優生学/積極的優生学

    第11章 インフォームド・コンセント 145
    1 インフォームド・コンセントの理念 145
      インフォームド・コンセントの確立/パターナリズム批判(ヴィーチ・モデル)
    2 患者‐医療者関係 149
      「患者の権利章典」/チーム医療
    3 インフォームド・コンセントの問題点 153
      実施上の問題/「説明と同意」か「理解と選択」か

    第12章 今後の医療と生命倫理学 159
    1 医学・医療批判 159
      イリッチの医学・医療批判/ルソーの文明論/イリッチの批判の受け止め
    2 医療・福祉政策 163
      医療の経済/保険制度/高齢者の福祉
    3 生命倫理学と環境問題 168
      環境問題の多様性/環境倫理学の原理/生命倫理学と倫理的基礎

    問題を考えるための手がかり [173-182]
    参考文献 [183-193]
    あとがき(平成十一年二月 今井道夫) [195-198]
    第2版あとがき(平成十七年一月 今井道夫) [199]
    第3版あとがき(平成二十二年十一月 今井道夫) [200]
    事項索引 [201-202]
    人名索引 [203-204]

  • 医学の世界の、哲学の1部、どのように生きるべきかを考える「生命倫理学」の入門書、章立ては下記の通り。

    生命倫理学とは何か
    健康・病気・医療
    生殖技術
    移植医療
    科学的医学の論理と倫理
    人工妊娠中絶
    安楽死
    人間とは何か
    ターミナルケア
    遺伝子技術
    インフォームド・コンセント
    今後の医療と生命倫理学

    医療とは何か、どこまで許されるかという問題と、どのような方法がよいのかという部分があるが、どちらも扱って全体としての概論としては良くできていると思う。

    巻末に参考文献があるので、必要に応じて読み進めればよいと思う。

  • 科目名:生命倫理学入門(医)

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著者プロフィール

東京大学文学部哲学科卒業。北海道大学大学院文学研究科(哲学専攻)修了。札幌医科大学名誉教授。科学論、ドイツ・オーストリア思想史。著書に『生命倫理学入門』(産業図書)、『思想史のなかのエルンスト・マッハ』(東信堂)、訳書・共訳書にハート『レオナルド・ダ・ヴィンチ小伝』、マクギネス『ウィトゲンシュタイン評伝』、ブロッホ『チュービンゲン哲学入門』、リュッベ『ドイツ政治哲学史』(以上、小局刊)ほか。

「2017年 『力の場〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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