- Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
- / ISBN・EAN: 9784785504250
感想・レビュー・書評
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ペガサスクラブの主催者、流通経営コンサルタント、渥美俊一のチェーンストアの入門書です。
できるだけ平易に、商業のあるべきビジョンと確立された方法論としての路線を明確にしようと初心者向けに叙述したものです。
読んでいて結構ボリュームがありました。経営戦略・理念、商品、店舗、計数管理、人的マネジメント・教育です。
気になったことは以下です。
・暮らしを営む人たちに必要なものを提供するのが、商業である。そのために生産者を探し、生産者がいなければ生産を依頼して作ってもらう。作ることができない場合は、そのための技術を供に考え、共同開発をして、生活用品の供給をする。
・著者はコンサルタントになる前は、新聞記者をやりながら、インダストリアル・エンジニアリング(IE)の下請けを何年もやっていた。IEとは、経営上のあらゆる問題の合理化を、工学的な手法に基づいて推し進めていくこと。
・第二次世界大戦で日本がなぜ敗戦にいたったのか、それは、技術トシステムにおいて立ち遅れがひどすぎたためである。
・当時、商業の一番の問題は、”人を育てる”、”技術者を育てる”というイデオロギーが欠如していたことである。
・経営戦略論、システム論、組織管理論の3つを日本の小売業と飲食業に導入できれば、”商人道”にのっとった本当の活動ができるようになると考えた。
・ビジョンとは、今は到達できそうにもない、高遠なる到達点のことである。ビジョン主義とは現状を常に否定し続けることだ。いつも現在の状況は何かをするための途中の段階と考える。
・経営戦略の5つの原則、①一番主義、②集中主義、③先制主義、④経験主義、⑤目標主義 である。
・まず売上の多い繁盛店をつくること、それも大型店で。次に、繁盛店をもうかる成長店へ切り替えていく。店長にとって、売上ではなく大切なのは利益だ。
・資金調達に重要なこと 回転差資金(現金を先にいただき、あとから支払いに充てる)
・サービスの本来の意味は、”お客様に心から満足してもらえるような状況を創り出すこと”
・商業の原点は、”たった一人のお客に、いやたった一個の商品を買ってくださったお客様にも、心から満足をしていただくように、努力の限りをつくすこと”
・売価のもっとも正確な定義は、お客に買っていただけた価格。お客にどんどん買っていただけるような価格の品を出発点とすること。すなわり、売価をあらかじめ決め、さらに仕入原価の数字を計算して出してから、仕入れに出かけていくということだ。
・今取引中のベンダーにそのような条件の商品がなければ、見つかるまで他のベンダーを探す。国内になければ地球上をくまなく探し続ける。そして、どこにも作られていないし提供されていなかったら、そこで初めて製品開発に取り組む。
・高くて良いもの、良くて高いものを仕入れるのは、子供でもできる。一方で安くてよい、良くて安いものを仕入れて売るには、本格的な技術が必要だ。
・全時間の八割を仕入に費やすべきだ。売れ筋は奪い合いだからだ、本当に信頼がおけないとおろしてはくれない。
・ベンダーから支援を受けるには、①支払いの絶対厳守、②ギリギリの支払いを約束する ③前向きの努力を懸命にしていると思える条件を提示すること
・仕入量はすくなくてもいい、足しげくベンダーに通うことが必要。とにかく会い続けることである。
・計数管理の徹底 ①自社で毎月試算表を作成すること ②実地棚卸は、月1回、できれば週1回やる。(キモ:できなければやり方をビックストア企業に教わること)③脱税をしない
・数字を扱う以上、常に正確であることを厳密に要求し続けること
・計数管理で一番大切なことは、現場の管理手法である”部門別管理”である。
・利益は、中小なら、20%~25%、大企業でも15%~20%をめざす。江戸時代からいっているように、元は5年でとる。
・労働分配率 粗利益中の人件費の割合は、38%~40%がのぞましい
・総資本回転率 小売業なら3回転、飲食業なら、2回転以上。
・組織問題の基盤は技術者集団の育成にある。技術者を育成することこそ組織づくりの努力の大部分であると自覚する
・組織づくりの原則は、階層の削減である。組織を①トップマネジメント、②スペシャリスト、③ワーカーの3階層にとどめること
・マネージャーの5つの課題 ①部下の稼働計画と作業割り当て、②考課と現場作業教育、③法規上の作業条件の確保、④資産の保存と、緊急事態対策、⑤報告書の完全記入と期限内提出
・自己学習、自らの学び方そのものを変えなければならない ①原理原則を謙虚に学ぶ ②ビックストア企業、チェーン化している企業と同じ理論で行動する ③技術も素直に学ぶ ④理解するために、全て書き取ってみる ⑤調査出張をして確認する
目次は次の通りです。
序
第1部 商業復権への道
第2部 ビジョンと経営戦略
第3部 商品と仕入れの原則
1 商品の基本
2 商品扱いの技術
3 仕入の急所
第4部 店舗の本質
第5部 成長の経営数字
第6部 組織・管理・教育
あとがき詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
昭和63年刊のチェーンストア経営のコンサルティング理論書。
渥美俊一氏の本は初めて読んだが緻密かつ現実的な指導がまとめられています。 -
チェーンストアを題材に経営論について、ていねいに具体的に解説されている。経営はエンジニアリング。
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スーパーの教科書とでも呼べる本。商人の歴史的な立ち位置の確認からはじめ、仕入れ、店舗開発、管理、人材育成まで多岐にわたる範囲をカバーしている。
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「新版」と銘打つために必死に新しいものを取り入れてしまったことで、逆にメッセージが伝わりにくくなったように感じる。
しかし、図表やデータは、小売商業の世界をざっくり掴むのに参考になる。