こうして店は潰れた: 地域土着スーパー「やまと」の教訓

著者 :
  • 商業界
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  • Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784785505394

作品紹介・あらすじ

2017年12月6日早朝、倒産劇は一本の電話から始まった。
「やまとが今日倒産するという話が市場で出ている!本当なのか?」
「社長、今日納品予定の商品が入ってきません!」
「社長、魚屋からも納品がありません!」「米問屋が売場から商品を引き揚げています!」

“地域土着”を信条に、地域の人々の暮らしを支えるために
移動スーパーを走らせ、頼まれればシャッター街へも出店した。
住民から熱烈に愛され、最盛期には16店舗、64億を売り上げた
スーパーやまとは、なぜ倒産しなければならなかったのか?

三代目で元社長の著者による、“倒産ドキュメンタリー”。
当事者だけが語ることのできる生きた「教訓」が、そこにある。


<目次>

はじめに 「負け犬の遠吠え」にこそ宿る真実

第1章 師走商戦の某日、やまと突然の撃沈!
 やまと沈没の瞬間
 倒産劇は一本の電話から
 最悪の中でも最善の方法
 運命のときまでの数時間
 朝刊一面トップでの報道
 あたたかい言葉のオンパレード
 ライフライン喪失で湧き起こる悲鳴
 救世主か? 乗っ取り屋か?

第2章 三代目の若造社長、復活をかけ改革断行
 県外大手スーパー進出に激震走る
 県内大手スーパーからの買収話
 競合激化で経営状況は暗転
 赤字脱却を目指して改革断行
 「月夜の晩ばかりではないぞ……」
 公正で公平な職場環境を整備
 継承2期目で実現した黒字転換
 方向を決めた個人スーパー倒産の記事

第3章 誰かが喜ぶなら、迷わず即断即行
 「家庭の生ゴミ仕入れます!」
 全国ネットのテレビ番組に登場
 地域密着を超えて「地域土着」へ
 舞い込んだレジ袋有料化計画
 マイバッグ無料配布とレジ袋下取り
 有料レジ袋を実質無料にする
 環境保護で儲けてはいけない
 貧困家庭へ食料品支援
 ホームレスを正社員として採用
 失踪先からの一通の手紙
 障がい者を雇用するとは
 正義の味方「やまとマン」誕生

第4章 頼まれたら、選挙以外は断らない
 発祥の地からの出店要請
 「移動スーパーやまと」発進!
 続々と届くやまとマンへのSOS
 クレームの最初の窓口は社長
 やまとばかりでロケが行われた理由
 激安大盛り弁当に活路求める
 爆発的ヒットとなった298円弁当
 東日本大震災でも一番乗り
 ヴァンフォーレ甲府応援どんぶり誕生!
 ポイントカードは貴重な個人情報

第5章 夢の街への出店で、見えたもの学んだこと
 夢の街からの出店要請
 やまと甲府銀座店開店
 請われて出店したものの……
 商店街で商売をするとは
 巨大モール増床計画の見返り
 新たな起爆剤登場でお払い箱に

第6章 正義の味方やまとマン、教育委員長になる
 将来の夢は金八先生だった
 教育委員日誌◯月◯日「また会える?」
 教育委員日誌□月□日「震災を乗り越えて3年目の春」
 教育委員日誌△月△日「贈る言葉」

第7章 やまと航海、終わりの始まり
 おんぶ日傘ながら不憫な幼少期
 駄目なものは駄目、子どもに示しがつかない
 赤字でも店を閉めない大切な基準
 取引銀行との丁丁発止
 そうは問屋が卸さない
 仕入先からの強い要求
 見えてきた光明……

第8章 生かされている身の上、感謝と恩返しで生きる
 広がるやまとマン支援の輪
 順調な元従業員の再就職
 自己破産で起きたこと
 静かな債権者集会
 大丈夫! 心配ない! なんとかなる!
 やまとマンからの伝言

あとがき これからも、やまとマンは断じて滅びず

感想・レビュー・書評

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  • 山梨の小さなスーパーの3代目社長が、社長を引き継いでから会社の隆盛期を迎えるまで、そして破綻に至るまでが生々しく描かれた本。山梨県民として読んでみたかった。各金融機関や問屋、大手スーパー、行政との関係があまりにもリアルだった。また、衰退している地域が何か取り組みをしようとするときには、補助金漬けになっている現状がよく分かった。

  • わたしの解釈だと
    倒産したのは、問屋の出荷停止、商品引き上げが引き金。これが無ければ、苦しいながらも金融シンジケートの了解を取り付け済なので、再建はかなった。

    第2章 そこそこの事業規模なのに、コンサル丸投げじゃないのは好感。
    第3章 補助金を断る姿勢には好感。
    きれい事を肯定する割に、今までの付き合いや親族を切り捨ててきたのは、矛盾じゃないのか。
    第4章 これが現実なのか、補助金を受け取るように。
    第5章 現地で商売もしなければ住んでもいない、ただ所有するだけ=不在地主への嫌悪感たるや。やまとへの頼み事はまるでたかり。

    「自慢話」が目立つのが鼻につくのはともかく、各々の事業がいつの話なのか不明かわかりずらく、事業継続に影響があったのか無かったのか不明なのは、今後の人のためにという執筆意図にそぐわないと思ったのでした。

    なので、これを読んで事業継続できるようになることは無いかと。

  • 山梨の方ではそこそこメジャーなスーパーチェーンである「やまと」の元社長の手による顛末記。
    もう少し経営面の話にフォーカスを当ててもらえると参考になると思うのだが、散漫で全般に「自分はあれもこれも他に先駆けてやっており、とても頑張ったのだけど仕方なかった」というトーンが目立ち、読後感もスッキリしない。
    馴れ合い的に高値で仕入れを続けていた問屋との関係を切り、家賃も適正なものに見直し、高給を食むだけの無能な親族を切り、赤字店舗を閉める。これで黒字転換はしたのだが、最終的には資金繰りが上手くいかなくなり、倒産が噂されるようになると商品などを突然引き上げられて黒字倒産してしまったようだ。

    ・マイバッグは万引きが増えるのをいやがって積極的には導入していないスーパーも多い

    ・韮崎市のようなところでは、駐車場のない旧商店街はさびれる一方になっており、郊外のモールにほとんどの客を取られている。

  • 店はつぶれたけれども、今までこんなに社会に貢献してきた、という内容。確かに小林氏の行動力はすばらしい。こうなってしまうのは残念である。単なる成功体験よりも身近に感じながら読むことができた。・・・しかし、読後感がいまひとつすっきりしないのはなぜだろう。著者が本に書くにあたり、本当の本音の部分は書かれなかったことだろうか。

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著者プロフィール

長野県生まれ。茨城大学農学部教授。新潟大学理学部卒,東京農工大学大学院連合農学研究科修了。農学博士(東京農工大学),技術士(農業部門)。建設コンサルタント会社勤務,コンサルタント事務所主宰を経て,現職。専門は,地域資源計画学,再生可能エネルギーシステムなど。農村計画学会・全国小水力利用推進協議会の理事などを務める。著書に『コミュニティ・エネルギー―小水力発電,森林バイオマスを中心に』(シリーズ地域の再生13)(共著,2013年,農山漁村文化協会),『事例に学ぶ 小水力発電』(共編,2015年,オーム社)など。

「2020年 『再エネで地域社会をデザインする』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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