学びの本質を解きほぐす

著者 :
  • 新泉社
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本棚登録 : 72
感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784787721044

作品紹介・あらすじ

校則で「下着の色」は指定できるのだろうか? グローバル化が進む現在、地毛証明書はとんでもなく時代遅れではないのか? いま、学校で行われているこうした事柄は、学校の外で行ったら人権侵害で、時には犯罪として訴えられてもおかしくないことである。ところが、学校という閉鎖された空間のなかでは、すべてが「学力向上のため」というお題目を立てられ、生徒も保護者もこうしたおかしな校則にも声を上げられない。そればかりか、逆に自ら進んで従順に、隷従していくのである。
学校における「評価」で卒業後の生活の多くが決まってしまう現代社会では、みな、なるべく高い値段をつけてもらえるように頑張り、上手くいかなければ非難され、そして傷つき、疲弊していく。
すべてが自己責任であるという間違った道徳的価値を押し付けられているために、その抑圧的な構造を自らが支えてしまっていることに気づかせてもらえない。
もし、そのおかしな構造に気づいてしまったら、その子は「問題のある子」として扱われる。
それが今の日本の「学びの場」で起きていることである。
著者は、この本で一貫して、「学ぶことの権利」について主張している。本来、学ぶということは、誰かにいい評価をつけてもらうためではない。もっと自由で楽しいものであるはずだ。いい「評価」をもらわなければ!と子どもたちを追い詰める「学校教育」の呪いの正体を探る。

感想・レビュー・書評

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  • 世界中で行われているこの手の議論の中でも、特に日本の学校制度やそこで取られる政策、イデオロギーのあり方や勉強の位置付けなどを、辛口に批判している。「ここがヤバいよ日本の公教育」的な内容。引用や参考文献もよく読まれるものが多く、平易な文体かつ網羅的な内容で、筆者の言うように学部一年なんかにちょうどいいと思った。そんな感じなので、逆にいうと目新しい議論は見当たらない。むしろ筆者がこの中で列挙したような問題意識を未だに声高に叫ばねばならない現状があるのだということ自体が、この国の教育の病なのだと思う。

  • 少子化なのに増える不登校、特別支援学級、特別支援学校を増設し、子ども達を分断する。仕事の種類が増え、心も体も壊してしまう教員の増加、なのに採用数を増やさないので、休むこともできず、ギリギリで働かされる。教員も子ども達も保護者も「評価」と「指導」でがんじがらめになっている現状が分かりやすく書いてある。学歴がないと生きていけないとか、学校に行けない子どもや、行かせられない親が世間に対して申し訳ないとか、思わされる限り、子どもを産み育てたいという人も増えないのではないかと思う。

  • 生徒の得意・不得意や好き・嫌いという自己評価は、教科の成績(テストの点数)に依拠してしまっている。
    インクルーシブな環境をつくるために、工夫をする(合理的配慮をする)ことで、インクルーシブな学級が成立する。逆に、「条件が整っていないから障碍者の受け入れは困難」とする考えは差別的。
    「寝た子を起こすな」理論では、一面的には事なきを得るかもしれないが、その他の場面での無意識の差別はなくせない。
    現行の道徳教科書では、「障害の社会モデル」の視点は登場しないため、障害を個々人の努力ややさしさで解決する(解決できる)ものと矮小化している。
    生徒心得は、学校が生徒に対して求めるという性質のものであるから、これを生徒自身が作るということには本来違和感が付きまとう。

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著者プロフィール

中央大学文学部教授。専門:教育制度学。
主な著書:『フランスの移民と学校教育』(明石書店、2001年)、『学びの本質を解きほぐす』(新泉社、2021年)。

「2021年 『人の移動とエスニシティ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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