学校で育むアナキズム

著者 :
  • 新泉社
3.20
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本棚登録 : 77
感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784787722119

作品紹介・あらすじ

新自由主義の猛威によって、わたしたちは「従属・服従」することに慣れてしまい、あろうことか、そのことを「自由」だと思い込むようになっています。支配されることに快感さえ覚えるようになっているのかもしれません。こうした錯覚は、学校現場で特に顕著です。新自由主義の下、学校では「管理」「秩序」が重んじられ、それがまるで教育を受ける権利を保障する条件のようにイメージされています。その結果、強固な学校権力が確立され、その支配の下では「考えない」ことがいいこととされてしまうのです。
こうした現状に対して、「何かおかしい」「声を上げなければ」と感じる人たちの輪も、じわじわ広がってきているように思います。それは、ブラック校則への反発であったり、部活の体罰問題への告発であったり、という形で表面化しているのではないでしょうか。
私たちは、常に同じ状態でいることはありません。さまざまな関係性の中で、少しずつ変化しています。一方で、「個を確立すること」が近代社会の基本とされており、学校はこの近代的「個人」を養成する場として位置づけられています。この相反する状態が、子どもたちと学校の間に齟齬を生じさせるのです。その一つが「不登校」なのでしょう。
「子どもに任せる」。これがアナキズムと教育を結びつける核心部分です。大切なのは相互に信頼し合うこと。そのために、日頃から「おしゃべり」をして、「縦の命令系統」ではなく、「横のつながり」を作っていく必要があります。静かな教室や職員室からは何も生み出されないからです。
学校教育がアナキズムの視点でどのように変わりうるのか、考えていきます。

感想・レビュー・書評

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  • えーっ 日本の子どもたちに
    一人一台のタブレットPCが 渡されている
    いや 渡されてしまった(!)

    なんじゃ それは
    それは 由々しきことだ
    なにを 日本の政府は 企んでいるのだ

    と 思ってしまった方は
    ぜひ ご一読を!

  • 権力支配のもとでは、みんな考えなくなり、それにより維持される秩序とは支配と隷従である。
    オルタナティブスクールとは、一定の子どもに対し学校から「出ていけ」、学校に「来るな」と促し、権利侵害をするものであるから、現行の学校の問題から目を背けるのではなく、そもそも学校の中で多様な子どもが共に過ごせるよう学校環境を変えるべき。
    現状の校則が禁止事項の羅列であるという点を批判的に検討せずに子どもたちに校則を作るよう促すと、どんな禁止事項が必要か話し合ってしまい、自らの自由を束縛する方法を考えさせてしまう。
    校則の役割は、学校という場でいかに安心・安全に学習を進行できるか、障害となるものがないかをチェックし、子どもの権利を守ること。
    子どもの話を教師がうなずきながら聞くと、子どもの安心を生むが、同時に教師という「評価者」との権力関係が生まれ、教員の顔色を窺うようになってしまう。
    「世の中に出たらだれも助けてくれない」という言葉は、「学校の中において、本人のためを思い誰も助けてくれない」という状況を作ってしまう。本来は、「自分一人の能力で何でもこなさないと生き残れない」ではなく、「いかに他者と助け合いながら全体として安全を確保するか」を問うべき。集団行動とは、助け合いを学ぶことであるべき。
    現状のICTを用いた個別最適化された学びとは、設定された目標に対し、進度に応じた課題を延々と出される「受け身」で「自己完結」な「画一的」な学びになってしまっている。
    「社会に出てから困る」という言葉は、学校は社会ではないということの肯定。

  • 学校で育むアナキズム 池田賢市 新泉社

    成熟した民主主義社会をアナーキズムと呼ぶ
    その成り立ちを見たければ
    自分の肉体を構成しているひとつ一つの
    あり方を観察すれば一目瞭然
    内臓にしても筋肉にしても
    神経や経絡にしても
    免疫システムや腸内細菌にしても
    全てが自律と共生を調整し合いながら
    全体と部分の入れ子状態の中で
    あたかも俯瞰しているかのように
    自然体でヤリクリしている
    人間社会も同じように個々を保ちながら
    全体観に溶け込んだ流れを創り出せるはずだ
    こうして一瞬一瞬のバランスをとりながら
    人と人が成長して行く関係を
    アナーキと呼ぶが
    組織に依存した競争社会に怯えながら
    甘えていたい存在はアナーキズムを
    無政府主義による無秩序と恐れ
    あらゆる悪態をついて暴力的に
    人々を洗脳しようとする
    悪魔は悪行を以て前向きな行為を
    否定する事で自らを正当化する
    以上は私の持論だけれど
    この本の内容は
    日々の暮らしに中で切磋琢磨してきたのだろう奥が深くて超面白い
    噛み締めながらもう一度読み返してみたい

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著者プロフィール

中央大学文学部教授。専門:教育制度学。
主な著書:『フランスの移民と学校教育』(明石書店、2001年)、『学びの本質を解きほぐす』(新泉社、2021年)。

「2021年 『人の移動とエスニシティ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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