- Amazon.co.jp ・本 (362ページ)
- / ISBN・EAN: 9784788502956
感想・レビュー・書評
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<2013.7.10再読>
1988年出版なので、ちょうど四半世紀前の本である。しかし、ほとんど古びた感じはしない。脳科学的な分野はそれなりに進歩を見ているのだろうが。
著者は基礎研究的なことをやっている方なわけだが、いつも現実社会の問題を強く意識している。この本でも、その意識が全体を貫く背骨となっていて、早期教育の是非とかにけっこう踏み込んで言及している。
全体をざっくりまとめるとこんな感じか。
「赤ちゃんは「白板」なのか、若しくは生まれつきすごい能力を持っているのか、という対立的な命題があるが、ことはそう単純ではない。赤ちゃんが生まれつき持っているのは可能性としての能力、未来に向かって開かれた能力であり、それは大人や環境との相互作用によりはじめて開花する。」
以下、個別のメモ
・ものを見る経験が後の視力の発達に影響する「臨界期」は立体視を手に入れる4ヶ月目ごろかららしい。それ以前は、変化や運動をキャッチする視覚は敏感だが、モノを精緻に認識する視覚は未発達(人間の視覚はいくつもの要素の組み合わせであるとするラマチャンドランの本を想起)。5ヶ月目以降になると、質的に大人同様の視覚(感度や精度はもう少し上がるが)を手に入れると考えられる。
・モノの「同一性」や「永続性」の概念が成立するのは6から12ヶ月目くらい。それまではモノを隠したりしても反応しない。これは未分化(世界、たとえばお母さんと自分が未分化)から分化への流れに対応する。
・視覚、聴覚、触覚の対応づけは意外と自明なことではない。赤ちゃんは能動的な探索から得られるフィードバックによって、これらの結び付けをしている。イボイボおしゃぶり実験では平均2ヶ月齢でもイボイボを認識した。
・鏡を鏡として認識するのは一歳過ぎてから。ものまね行動のほうが先。
・「泣くとおっぱいが出てくる」みたいなフィードバックを学んでいくのが赤ちゃんの本領である。
この本、2006年に新装版が出ていたのですな。良書なので結構なこと。詳細をみるコメント0件をすべて表示