- Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
- / ISBN・EAN: 9784788515222
作品紹介・あらすじ
◆情報通信技術は環境だ!
モノのインターネット、スマホ、人工知能、無人自動車、サイバー戦争……デジタルICT(情報通信技術)が、単なるツールを超えて私たちの現実をつくりかえつつあります。渦中にあるためとらえにくいですが、私たちは広範な文化的革命の始まりを目撃しているのです。それは大きな可能性とリスクをもっています。ICTが個人、社会、世界、環境に与える影響を予測し、制御し、経済や社会、政治的なダイナミクスを向上させるために、今起こりつつある根底からの変化を読み解く、新しい概念と哲学が求められています。私たちが直面する新たな困難に意味づけを与え、適切な知的枠組みを開発するための、情報の哲学です。本書はその試みです。人間はコペルニクス革命によって宇宙の中心ではなくなり、ダーウィン革命によって特別な種ではなくなり、フロイト革命によって自らの主人でもなくなりました。そして第四の情報革命は、人間をどこに導くのでしょうか?
感想・レビュー・書評
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情報革命の可能性を引き受けた思想
ビジネス書のように読みやすく、それでいて哲学的に深い本です。
この本で最も重要な概念は、副題にも入っている「インフォスフィア(情報圏)」です。
著者は、「インフォスフィア(情報圏)とは我々を取り巻く情報の総体である」「現実とはインフォスフィアの別名である」と述べます。ヴィトゲンシュタイン風に言えば、「世界は情報の総体である」というような世界観です。そこから、倫理や政治や経済や環境についての様々な議論を展開していきます。しかし、議論は発散することなく、前半で提示された基盤の上に、一章ずつ積み上げられていきます。
この本の前半(「哲学編」と呼ぶことにします)では、「情報革命によって、我々人類の自己イメージが書き換えられつつある」という大きな問題が論じられます。「我々にとって歴史とは何か」「我々が生きる環境とはどのようなものか」「我々とは何者か」といった人類にとって重要な哲学的問題について、情報革命は新たな回答を求めており、著者はそれに応えようとしているのです。
そして後半(「倫理編」と呼ぶことにします)では、より実戦的・政治的な問題が論じられます。「我々はどのようにプライバシーを概念化すべきか」「我々は知性をどのように捉えるべきか」「我々は技術をどのように用いるべきか」「我々は政治の概念をどのように更新すべきか」「我々は環境に対してどのような責任を負っており、何ができるか」といった倫理的な問題が論じられます。
そのような内容の本ではありますが、この本は、万人に開かれたビジネス書のような文体で書かれています。ICT、クラウド、IoT、ビッグデータ、AIなどのキーワードや事例が無数に登場することから、読者はクリス・アンダーセンやニコラス・カーの本を連想するかもしれません。
この本は、著者のルチアーノ・フロリディ教授が、一人で様々な問題について縦横無尽に語っている本です。そして、読みやすいビジネス書のような文体で書かれています。したがって、フロリディ思想の入門として最適な一冊でしょう。この翻訳によって、ルチアーノ・フロリディ教授の読者が日本にも増えることを期待します。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ともさん私物
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フロリディの情報哲学に手を出そうと思ったのでまずは和訳されていたこれを手に取ってみた. 今後の情報社会の在り方を、さすがにうまく冷静に捉えているんじゃないかと割とテンション高めに読めた. さすがに難しい箇所も結構あったけど.
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ITCが広まって普段なんとなく思っているいろんな価値観、社会的な合意事項の見直しが必要そうという感覚が言語化されていた。ただ読みにくい。。
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奥トレにもよく来てくれてたイヌアツが本を出したというので、読んでみた1冊。分厚い本で、最初は「これ読むの?」と思ったけど読み始めると興味のある分野だからかスラスラ読めて、おもしろかったです。特に、技術の分類について一次技術、二次・三次技術の概念は目からウロコというか、そういう分け方があったかーと思いました。いちエンジニアとして、予測される世の中の流れを見ながらこの先も技術とともにどう進むか、誰の何を、社会のどの課題を解決しながら暮らしていこうか、その前提知識を補強してもらったような1冊でした。
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和訳がこなれていなくて、読みにくい。
・教育とは、主に、知識と、知識量を増やす手法の伝達である。
・ICTは、集中型の政府から、分散型の統治と、国際的、グローバルな調整へと、そのバランスが移行するのを助けるのである。 -
哲学的・概念的な話が多く、ゆっくりと噛み砕きながら読む必要があり時間がかかる。しかし、読書をしていていちばん楽しいのはこういう時間かもしれない。