自治体を民間が運営する都市: 米国サンディ・スプリングスの衝撃

  • 時事通信出版局
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  • Amazon.co.jp ・本 (292ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784788709676

作品紹介・あらすじ

すべての業務を民間企業に委託した、米国サンディ・スプリングス市。一体どのように運営されているのか?PPPモデルの導入を提案し実現させた当事者の著書2冊を訳出。

感想・レビュー・書評

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  •  これは久しぶりに面白かった本です。約1年間で、郡の中のある地域「サンディ・スプリングス」が独立した市になるまでの経過を記した本です。約1年で実施するにはさまざまな点で革新性がなければならないわけですが、決定的なのは民間委託がほとんどの業務で行われていることです。そもそもそんなものを引き受ける民間企業があるのかというのも疑問だったのですが、アメリカの大手建設会社がそれを実現したようです。カメラをトラックの前につけて撮影し、すべての路面データ等を収集する方法など、革新性はさまざまな点で見られます。
     もっとも強い公権力行使は行政が担うべきだとされている日本の場合、サンディ・スプリングスほど広範に民間委託が行えるとは考えにくいことも確かです。しかしながら、サンディ・スプリングスでも最も強力な公権力行使は市の裁判所や警察等が実施しており、公権力行使をある軸で切っていくことこそ、PFI刑務所同様必要な思考法なのだろうと思われます。
     ただ、日本の基礎的自治体は総合行政機関としての役割を強く有しており、その役割を主に郡が担っているアメリカとは業務範囲も大きく異なっていますので一概に比較はできません。
     それを乗り越えて、「役所の役割とは何だろう」「民間への委託とは何だろう」を考えるのに、大きな一助となる本であることは間違いありません。久しぶりの星5つです。

  • 「Q PPPとはプライバタイゼーション(民営化)と同じですか?
    A いいえ。ー。プライバタイゼーション(民営化)とは官の資産を売却することであり、PPPとは市の運営とサービスを民間企業に委託することです。」

    この本を読めば、この本のタイトルが誤解を招きやすいと分かる。このタイトルからは、民間が自治体を支配しているように感じるが、実際は官と民間の協力によって自治体が運営されている。一般的な協力よりも、その度合いが強いだけである。

    この本では、サンディ・スプリングスの立ち上げから詳しく書かれている。その中でも、広報の部分(p.78)に興味をそそられた。なぜなら、費用と収益に関する情報を事前にはほとんど公開しないという路線を採り、うまくいったからである。さらに、民間企業を選ぶ際の評価プロセス(p.133)の方法はとても参考になる。

    民間企業が市を経営するという誤解(この本を読むまで私もサンディ・スプリングス市はそのようなモデルだと考えていた)は、市の意思決定の構成によって解消される(p.193)。あくまで官がメインであり、民間はパートナーに過ぎない。それは、市と民間の契約が、市によって一方的に破棄できる点に強く表れている。しかし、民間は結びつきが強いパートナーである。

    とても面白い本だった。

  • 民間委託にせよ公務員直営にせよ、住民の参加による合意が何より大切。サンディ・スプリングスの事例ではボランティアの活躍がたいへん興味深い。

  • 米国ジョージア州サンディ・スプリングス市の市職員はなんと「4名」。業務の大半は同市から一括委託された民間企業が実施している。一体どのように運営されているのだろうか―。著者のオリバー・W・ポーター氏は、民による地域経営の発案者で、サンディ・スプリングスの住民の意思、そして民間企業との契約をまとめた人物である。

    先進国において、少子高齢化による国や地方の財源の減少により、官から民への流れは歴史的必然であるといわれている。そうした中で重要となる、官と民が協働し、両者がリスクとリターンのシェアリングを行いながら市民が求めるサービスを効率的に提供する手法がPPP(Public/Private Partnership:公民連携)だ。

    日本ではじめて公民連携のプロを育成するために設立した東洋大学大学院経済学研究科公民連携専攻の教員が翻訳・監修し、PPPの手法と実態が詳細に記された一冊、これからの地域再生のヒントが隠されているかも知れない。

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