- Amazon.co.jp ・本 (214ページ)
- / ISBN・EAN: 9784788794269
感想・レビュー・書評
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(2005.09.16読了)(2005.07.09購入)
1970年にイスラエルに留学し、それ以来イスラエルで暮らしているという著者によるイスラエルの話です。「週刊時事」に1994年9月まで100回近く書いたものをまとめたものです。
●テレビ
イスラエルは最近までテレビ後進国でした。何しろ国営放送局が一つあるだけ。国営テレビの経営は視聴者が払うお金で賄われますが、問題は視聴料。テレビを買うとその店が局に通報するらしいのです。しかも万一払っていないことが発見されると、強制執行でテレビもビデオも没収されてしまいます。しかし、その独占が破れました。ケーブルテレビの出現です。いきなりチャンネルの数が30以上に増えてしまった。ヘブライ語の放送だけでも5チャンネル、そのうち一つは朝から晩まで、映画ばかり。湾岸戦争以来有名になったCNNを初めBBCなども入ります。ロシアのテレビが二局、トルコ、ドイツ、フランスと軒並みです。(いろんな国からイスラエルにやってきているのがわかります。)
●移民
イスラエルは、ユダヤ国家として1948年に建国して以来、ユダヤ人が外国で困っていたらそれを無条件で受け入れるのを国是としています。1989年から始まったソ連移民の波は大変なもので、人口の一割をニ、三年で受け入れてしまったのですから、えらい騒ぎでした。
●葬式
イスラエルでは死んだらすぐ埋葬というのが普通です。朝のうちに死んだら午後には葬儀、まだ日のあるうちに埋葬となります。日本では24時間以内は火葬できないことになっており、そのためでしょうか通夜という習慣がありますが、イスラエルではもしかしたら墓の下で生き返った例もあるのではないかと思うほど手際がいいのです。急げるのも国が小さいせいでしょう。エルサレムを中心に見れば、車で4時間以上かかる所はないのですから。
●占領地
イスラエルは1967年の第三次中東戦争で、本体より大きな地域を占領してしまいました。その一つがヨルダン川西岸です。そこにパレスチナ人国家を作るのか、それとも元の家主ヨルダンに返還するのか、はたまたイスラエルが併合してしまうのか、そのあたりの交渉がだいぶ長く続いています。
●パレスチナ和平合意
確かに1993年9月13日にホワイトハウスの庭で賑々しく自治権に関する基本合意なんてものが調印され、宿敵だったラビン・イスラエル首相とアラファトPLO議長が握手したりして、一時的に雰囲気がよくなりました。
●週に一回休む
週に一回休むという習慣をこの世に持ち込んだのはユダヤ人なのです。ローマ人は「ユダヤ人ほど怠け者はいない。7日に一回休む」と書いている。おそらく当時のローマ帝国では正月と薮入りにしか休めなかったのかもしれません。
●ゴラン高原
ゴラン高原は南北80キロ、東西40キロくらいの小さな土地です。仲の悪いイスラエルとシリアの中間にあり、イスラエルとの境で急に高くなっており、大した地理的障害なしにダマスカスまで着いてしまいます。つまり、シリアがゴラン高原を占拠していればイスラエル攻撃はごく簡単であり、イスラエルがゴラン高原を占領していればダマスカスまで一気に戦車で走れる、というのです。
著者 笈川博一
1942年 東京生まれ
1970年 東京教育大学言語学科修士課程修了
ヘブライ大学留学
1975年 ヘブライ大学古代エジプト学科、極東学科講師
●関連図書
「古代エジプト」笈川博一著、中公新書、1990.08.25
(「MARC」データベースより)amazon
日本人には理解しがたい生活習慣、宗教国家ならではの特異な出来事。エルサレム在住の自称「中東屋」が、四半世紀に及ぶ異文化体験をつづる。ニュースでは伝わってこないイスラエルの生活がよくわかる。詳細をみるコメント0件をすべて表示