ちんどん屋の響きー音が生み出す空間と社会的つながり

  • 世界思想社
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784790717805

作品紹介・あらすじ

通り抜ける音が、巷の情動に響きわたる
数十年の停滞ののち再起した、路上の巡回広告業ちんどん屋。大阪の路地裏、震災後の仮設住宅、脱原発集会など、様々な場に集う情緒、力、関係が、〈ヒビキ〉によってあらわになる。初のちんどん屋研究書。

◇推薦の辞より
彼女の質問は、実にきめ細かく執拗だった。
出版を心から喜ぶ。
――林幸治郎(ちんどん通信社創始者)

本書は刺激的な議論に満ちている。
〔ちんどんは〕洋楽受容の歴史のど真ん中にある。
――大熊ワタル(音楽家/文筆家)

◇解説より
ヒビキは現場の人を繫ぎ、歴史の蓄積を縫い合わせ、情動を活性化する……本書はちんどん屋を見たことのない読者に向けて、今日的な音楽/音響研究の諸テーマへと導くのに巧みだが、彼らを見聞きし、よく知っているつもりの日本人読者にとっても新たな発見に富むだろう。
――細川周平(音楽学者)

◇本文「プロローグ」より
 ある日、私はこの〔渋谷のスクランブル〕交差点を歩いていた。心身ともにかなり弱っていたときだったこともあり、至るところに氾濫する消費主義の感覚的標徴に圧倒され、すでに経験していた孤独の感覚がさらにはっきりと浮き彫りになった。そんな中、突然、交差点を横切ってそれぞれの道を歩く人の波の中で、大阪でインタビューをしたちんどん屋の林幸治郎の言葉がよみがえってきた。
「家の中にいる人に聞かせているのよ。……街中ハッピーな人はいないよ。あんまりね。……鬱の人が〔家から〕出てくるような音を〔出さなきゃいけない〕」。
インタビューのときは、その発言はなんだか悲観的なように聞こえた。もしかして、自分自身の苦難を大阪都市部の見えない聴衆に投影しているのではないかとさえ思った。
でも、そのとき、交差点の途中で、私は突然、林と同じように世界が聞こえたのだ。この群衆の中で孤独の重さを感じていたのは私だけではないだろう。ちんどん屋の実践者がどのように社会関係やその断絶を「聞いている」のか、私はそのとき理解した。……ちんどん屋の音の労働は、ある社会的つながりに関する哲学に深く根ざしていることに気づいたのだ。
……彼らの仕事が作り出そうとする音のアフォーダンス(環境が生み出す能力)に注目することで、公共空間をいかに理解しうるのか、そして、ちんどん屋の音が響く都市空間においていかなる社会的結合と断絶が生起しているのか、ということを考察していきたい。

感想・レビュー・書評

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  • ちんどん屋研究書『ちんどん屋の響き~音が生み出す空間と社会的つながり~』日本語訳版、ついに出版! | ちんどん通信社 (有)東西屋
    https://bit.ly/3yQWy1C

    特別演習: 阿部万里江さん(ボストン大学准教授、音楽学・民俗音楽学)を迎えてチンドン屋の響き:現代日本の音響空間と社会性 | 東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科アートプロデュース専攻(2019年6月25日)
    http://ga.geidai.ac.jp/2019/06/16/abe/

    ちんどん屋の響き - 世界思想社
    https://sekaishisosha.jp/book/b621496.html

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著者プロフィール

1979年生まれ。エスノミュージコロジスト(民族音楽学者)。ボストン大学音楽学科教授。専門はサウンド・スタディーズ、人文地理学、音の政治学、ポピュラー音楽研究など。カリフォルニア州立大学バークレー校大学院(エスノミュージコロジー)修士・博士課程修了。ハーバード大学ライシャワーセンター博士研究員(2010年)、国際日本文化研究センター客員研究員(2018年)。研究のかたわらアコーディオン奏者として様々なジャンルのバンドとレコーディング・ツアー活動。主な共演者や所属バンドはDebo Band、Japanese Elephants、Fred Frith、Carla Kihlstedt、Jinta-la-Mvta、地中池、エチオピアジアなど。

「2023年 『ちんどん屋の響き』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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