スティッチ あるアーティストの傷の記憶

著者 : デイビッド・スモール 藤谷文子

• 青土社 (2013年11月22日発売)

作品紹介・あらすじ

アメリカで高い評価を得るイラストレーター、デイビッド・スモールの回顧録。

感想・レビュー・書評

[Miraさんの感想 · 2014年1月23日]

『スティッチ』というタイトルは目にしていたのだけど、てっきりディズニーの本なんだと思っていた。デイビッド・スモールの自伝だと知ってびっくりし、アマゾンで取りよせて読んだ。

スモールを知ったのは『リディアのガーデニング』が最初。一読してうるうるし、何度読みかえしても飽きない絵本のひとつ。あの明るくて、温かい絵本をつくった人がこんなにもすさまじい少年時代をすごしていたなんて。

「君のお母さんは君を愛していない」
この言葉が子どもを救うこともあるんだ。
親子関係は「べき論」で語ってはいけない。
そして親が原因であるか、学校や友達が原因であるかを問わず、今、高い壁に塗り込められたような、息苦しくて行き場のない毎日をすごしている若者に、そっと手渡してみたい。解決にはならないかもしれないけど、君だけじゃないよ、と。今置かれた世界を見る方法はひとつじゃないし、抜けだし方もいろいろあるんだよ、と。だから生きのびて、自分の世界をつかめ、と。

あらためて『リディアのガーデニング』を読むと、むっつりしたおじさんや、壁に囲まれた都会の生活に、いろんな思いが込められていたんだなと感じる。やっぱりいい絵本だ。