- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784791770939
作品紹介・あらすじ
三名人かく語りき
「また、見てもらいます」(西条凡児)、「さて、みなさん……」(浜村淳)、「私が上岡龍太郎です」(上岡龍太郎)――語りだせばすぐさまその声が聴こえてくる。生粋の関西弁の、五七調の、漢文調の、それぞれの話芸が響きわたる。落語、漫談、講釈を捉えかえし、自らの一人芸を創りだした三人の話術の妙を記した、爆笑と悲哀の話芸史。
感想・レビュー・書評
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関西の話芸というテーマで、三人に着目して記述した本。このひとが問題提起するように、こうした芸のあるひとたちをちゃんと評価していかないと、後につながっていかないですよね。
あと、上岡龍太郎のノックさんへの弔辞は、本当にすばらしいと思います。【2023年12月16日読了】詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
一般に「一人芸」いうと真っ先に浮かぶのは落語である。本書はもうひとつの芸である「漫談」に焦点を当てる。
笑いの聖地大阪には、この一人芸の系譜の中に、
3人の名人が存在した。
「また、見てもらいます」(西条凡児)
「さて、みなさん…」(浜村淳)
「私が、上岡龍太郎です」(上岡龍太郎)
である。
お馴染みの語りからはじまる話芸。
それぞれの話芸を生んだ背景には、
西条凡児=落語、浜村淳=漫談、上岡龍太郎=講談
といった芸脈が流れていると著者は喝破する。
とりわけ、その先駆者である西条凡児の
インテリジェンスを感じさせる知的な笑いは、
上岡龍太郎にしっかりと引き継がれ、
上岡龍太郎自身も西条凡児を評して
「まさしく大阪のひとりしゃべりの基盤を作った人」
と述べている。
芸風はまったく異なるが、その上岡龍太郎が弟子入り
志願したのが浜村淳というのが面白いし、
お互いが京都人であるところにも興味を抱く。
余談になるが、11PMの後発番組としてマニアックな
企画で業界の話題をさらった「EXテレビ」で
上岡龍太郎とコンビを組んだ島田紳助も京都人である。
上岡龍太郎の衣鉢を継ぐのは島田紳助であろうと
一時期に言われたのが今となっては懐かしい話。
名調子の御三方の現役バリバリ時代を知る者として、
芸人としての来し方・芸風を鋭い考察で概観できたのは
喜びであり、上方芸能現代史としても貴重な資料に
なり得る著作だと思う。