加藤楸邨全歌集

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  • 青土社
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  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784791772728

作品紹介・あらすじ

解説=中村稔
俳人加藤楸邨は短歌を生涯にわたって詠み続けていた。未収録70首を含む全800首を収録。

佐佐木幸綱氏 推薦
「楸邨が短歌をつくっていたのは知っていたが、これほど数が多いとは知らなかった。とくに驚いたのは、戦後すぐの昭和二十三年二月から四月の日付のある「短歌ノート」四百五十余首。斎藤茂吉をふかく読みこんで実践的に彼の技法をとりこみつつ、敗戦直後の社会を家族を自身を自然をていねいにうたっている。戦後短歌としても注目すべきだが、何より『野哭』以後の楸邨の俳句を読み込むうえで必読の一冊とおもう。」

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  • 荒びゆく時代【ときよ】のこゑの中にしてひとつのこゑをわれは保たむ
     加藤楸邨

    〈寒雷やびりりびりりと真夜の玻璃【はり】〉を代表句とし、「人間探求派」として知られた俳人。昭和20年代には、雑誌等に短歌も発表しており、この度、全集未収録の作品も含めた全歌集が刊行された。

     1905年(明治38年)、東京生まれ。父が病に倒れ、苦学の末に代用教員となった。中学や高等女学校で教鞭をとり、俳誌「馬酔木【あしび】」を経て、「寒雷」を主宰した。

     戦後は社会運動にも積極的に参加し、青空学校の現場や、組合活動の歌などもある。

     冒頭の歌は、敗戦を経て価値観が一変した時代でも、自身が頼みにしてきた一つの声、信念だけは守っていこうという歌である。人心が荒ぶる時代にあっても、誠実な「ひとつのこゑ」を保持していこうという姿勢は、生活苦を乗り越える自戒でもあったのだろう。
     
     その後、胸部疾患など病にも悩まされた。それもあってか、いつも横で支えてくれた「妻」が、多くの歌材になっている。

    ・わが胸にさし入れてゐし妻の指たまたまうごき寝息たてはじむ

     添い寝する妻の寝息が健やかで、温かい。
     70代の、この字余りの歌も印象的だ。

    ・もう一度生れて来れば何するか猫とあらそひ妻とあらそひわれとあらそふ

     猫とも妻とも自分とも「あらそふ」ほどに深く関わり、すみずみまで理解して愛するということなのだろう。93年没。享年88。
    (2020年11月29日掲載)

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