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- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784791775620
作品紹介・あらすじ
「選択」の幻想という圧倒的な現実の前で。
感情の取り締まり(ポリシング)、トランス排除、宗教右派、エコロジー思想からポストトゥルースまで。故郷喪失者(エグザイル)としての私たちは、これからどこを目指すのか?
緻密な文芸批評にとどまらず、現実社会に対する透徹した思考に貫かれた論考群。
感想・レビュー・書評
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タイトルに惹かれて手に取って、いわゆる文芸批評はとてもひさしぶりだったが、親しみのある映画やアニメも小説も縦横に取り上げられており、一気に読んだ。前半は新自由主義とポストフェミニズム、後半は場所論である。
特に後半では、著者が専門的に研究対象としているレイモンド・ウィリアムズが繰り返し参照される。ウィリアムズについては私は未読なのだが、河野によって紹介されている「生活の糧(livelihood)」という概念は大変興味深いものと思った。p.125からの議論に詳しい。
ウィリアムズのエコロジーをめぐる議論において、「生活の糧(livilihood) 」は「生産(production)」のアンチテーゼとされる。河野の言うように「これらがアンチテーゼだというのはにわかに飲み込めない話(p.125)」なのであるが、「自然と人間の対立を脱構築し、その両者を全体として見るためのもの」として「(生のままの)自然と(人間による)生産という「粗雑な対立」にとってかわる」べく、「よりよく理解された物質世界と、すべての真に必然的な物質的プロセスのうちにあり、その中で作動している」観念である。
話はここから、「風の谷のナウシカ」とりわけ漫画版、そして「もののけ姫」へと接続されていく。
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