文庫 世紀の贋作画商: 「銀座の怪人」と三越事件、松本清張、そしてFBI (草思社文庫 な 2-2)

著者 :
  • 草思社
2.75
  • (0)
  • (0)
  • (9)
  • (3)
  • (0)
本棚登録 : 36
感想 : 7
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794220318

作品紹介・あらすじ

銀座・並木通り画廊街―。贋作絵画を雨あられと降らせた男がいた。松本清張、江上波夫ら大家の名を騙り、手練れの画商たちを操った稀代の詐欺師、「銀座の怪人」と呼ばれた男を追う。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 2004年に米国で贋作詐欺事件の犯人としてイライ・サカイというイラン人が逮捕された。実はこの人物こそ、1982年の「三越贋作事件」を引き起こした張本人だった。そして三越贋作事件のほかでも、サカイは膨大な量の贋作を日本中に撒き散らしていたのだという。

    ある美術品の真贋は当事者にとっては重要な問題でも、部外者のわれわれには関係のない話ーーそれが一般市民の感覚だと思うが、本書を読むと必ずしもそうとは言い切れないことがわかる。バブル期に日本企業が買い集めた絵画が贋作だったならば、それらは巨額の損失となってしまう。公的な美術館が絵画を購入する時、その資金には税金が投入されている。そうして購入した絵画がもし贋作だったら?

    サカイを追うなかで著者は美術品、骨董品を扱う業界そのものが抱える問題をも明らかにしていく。外部からは分かりにくい商習慣や、品物の真贋に関わらずとにかく売れるものは売ってしまえばよいーー他の誰かがババを引くだろう、といった古い体質が、結局はサカイに日本で暗躍する場を与えたようだ。単純にサカイが加害者、日本の画商が被害者と割り切ることはできないのだなと、本書を読んで思う。

    本書はとてもスリリングな内容で、丹念な取材の足跡を読み取ることができる。ただ、所々に出てくる文学調な記述にまどろっこさを感じたり、サカイと著者を重ね合わせる記述にはやや強引さを感じたことがあった。それだけ著者がこの取材に力を入れていたということなのかもしれないが。

  • 作者自らが、国内のみならず海外にも足しげく通い取材した渾身の著作。が、何故か読み始めると眠くなってしまうのは、ワタシだけか?それゆえ、読破までに非常に時間がかかった。

  • まさか老舗百貨店・三越であんなことが起きるとは思わなかった。
    1982年に三越本店で開催された「古代ペルシャ秘宝展」に展示された
    47点の大半が贋作であると判明した。なかには既に売約済みの展示
    品もあった。すっぱ抜いたのは朝日新聞だった。

    この事件はのちのち当時の三越社長の退任劇にまで発展し三越事件
    となるのだが、そのきっかけとなった「古代ペルシャ秘宝展」の贋作に
    深く関わった美術商が本書の主役であるイライ・サカイというイラン系
    ユダヤ人だ。

    バブル期、投資家によって絵画を始めとする美術品は芸術を愛でるもの
    ではなく投機の対象となった。西洋絵画は高値で取り引きされ、価格は
    高騰した。だが、すべて真作だとの根拠はあるのだろうか。

    鑑定書だって偽造すればいくらでも出来る。高名なコレクターの所蔵品
    だからといって、そのコレクターの手に渡るまでの経緯ははっきりとして
    いるものばかりではない。

    意図せずに贋作となってしまう場合もある。画家の卵が習作として模写
    した作品が、いつの間には有名画家の新作として市場に出回ることも
    ある。

    だから本書に興味を持ったのだが、内容はかなり残念と言うほかない。
    はっきり言ってしまえば内容水増しなのだ。

    イライ・サカイは早い時期から日本で商売を始めており、その足跡を追い、
    画廊関係者やイライ・サカイ周辺の人物からも話を聞いており、イライ
    本人にも取材しているのだが、肝心な部分は何もはっきりしていない。

    一体、日本のどの美術館・博物館の収蔵品に、イライが日本にバラまい
    た贋作が眠っているのだろうか。

    書けなかったのか、聞き出せなったのかは不明だが、過去にあった贋作
    事件を詳細に記してお茶を濁している。ニューヨークにあるイライの店舗
    で日本関係の資料を見せてもらっているのだはなかったのかな。

    それならば、過去の贋作事件を多く引くより、イライの資料からの裏付け
    取材は出来なかったのかと思う。著者自身の視点による、自分の自慢
    話なんて書いてくれなくていいからさ。

    美術界の裏面を知るにはいいのだろけれど、本来のテーマが消化不良
    なのである。イライと接触したことのある松本清張に関しても、取材対象
    者の証言ではあるがかなり失礼な記述がある。

    裏取り出来ていないことは書かない方が良かったんじゃないのかな。

    ところで「時代の綾」って表現はありなんだろうか。「言葉の綾」なら私も
    使うんだけれど。

  • これが全部本当だったら、絶対美術品を買いたくなくなります!!

  • 題材は興味深かったんだけれど・・・

  • 仕事で少しオークションに関わって興味があったので読んでみた。ノンフィクション-こんなことが実際にあったなんて信じられないというぐらい、贋作は世に出回っていて今もその影響が少なからずあるんだなと思った。
    画廊、絵画の輸出入など独特の世界が少しわかったような気がする。

全7件中 1 - 7件を表示

著者プロフィール

七尾 和晃(ナナオ カズアキ)

「2018年 『天皇を救った男 笠井重治』 で使われていた紹介文から引用しています。」

七尾和晃の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×