文庫 近衛文麿「黙」して死す (草思社文庫 と 2-4)

著者 :
  • 草思社
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  • Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794220950

作品紹介・あらすじ

昭和20年11月、元首相近衛文麿は巣鴨への収監を予知して自死した。しかし、その背後には元内大臣木戸幸一と進駐軍の調査官E・H・ノーマンによる驚くべき陰謀があった。近衛に開戦責任を負わせ自死させることにより歴史の何が隠蔽されたか。

感想・レビュー・書評

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  • 昭和20年(敗戦)の日々を詳細に描いている鳥居民が描く、戦時内閣の総理大臣、近衛文麿の物語。占領軍のハーバート・ノーマンなる人物(カナダ人、元共産党員)が描いた(稚拙というか偏った日本理解に基づく)シナリオで進められた日米開戦の責任者探しの標的の一人にされた近衛文麿の苦悩が垣間見えます。元老の木戸幸一との関係性についても、鳥居民による解説が興味深いです(木戸は自分の責任回避策として、近衛を利用したのではという見方)。丸谷才一がどこかで、とかく批判されている近衛さんを少し見直したな、というコメントを書いてましたが、その背景には、こういうもの事情もあったのね、であります。文官だった廣田弘毅が戦犯(文官で唯一の死刑判決)となったとなった背景(玄洋社が嫌いだったノーマンの理解等)も垣間見えます。★四つです。

  • 近衛文麿の人物像や能力といった面にはあまり立ち入らず、彼の自殺の理由と経緯についてかなりの想像力を駆使して描かれている。

    本書によると、本来は完結しなかった『昭和二十年』で描く予定の内容だったようで、鳥居民としては「ここ」を先に書きたいということで近衛文麿を中心にした敗戦後の歴史観を描いていたらしい。そのため多少は中途半端な印象もなくはないが、鳥居民を読み直す勢いをつけるには十分だと思う。

    本書を読むことで「近衛文麿についての印象は変わったか?」といえば、正直それほど変わらなかった。だが近衛について知れば知るほど「周りに翻弄される近衛」というイメージが強化されていく点では、印象は変わらなかったが、より深まったという感じか。


    「ヴェノナ文書」に触れずに近現代史について、とくに開戦と敗戦後の経過を観るのはもはや「不可能」なのだが、初版の時期からしてそちら方面はあまり詳しくないのは残念でもあるが読んで良かったと思う。

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著者プロフィール

鳥居 民(とりい・たみ)
1928年(昭和3年)、東京牛込に生まれ、横浜に育つ。水産講習所を経て台湾政治大学へ留学。台湾独立運動に関わる。現代中国史、日本近現代史研究家。代表作であるシリーズ『昭和二十年』(全13巻)は、執筆に1975年ごろから準備し40年ほどを費やした。左翼的な史観にとらわれていた日本の現代史研究に、事実と推論をもって取り組む手法で多大な影響を与える。他の著書に『毛沢東 五つの戦争』『「反日」で生きのびる中国』『原爆を投下するまで日本を降伏させるな』『鳥居民評論集 昭和史を読み解く』(いずれも草思社文庫)などがある。2013年1月急逝。享年八十四。

「2019年 『文庫 山本五十六の乾坤一擲』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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