文庫 日米開戦の謎 (草思社文庫 と 2-18)

著者 :
  • 草思社
3.50
  • (0)
  • (1)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 23
感想 : 1
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (343ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794221612

作品紹介・あらすじ

政府組織内の対立がもたらした恐るべき錯誤。「政治の失敗」という観点から、太平洋戦争開戦の真因を大胆に推理、指摘した歴史評論書。これまで語られなかった新説を提示。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 昭和16(1941)年、当時の政府幹部たちの個々の動きや考え、彼らの議論を追いながら、なぜ日米開戦に向かう動きを止められなかったのかを検討する本。焦点の当て方として、どちらかというと組織論に近い?
    全体としては読みやすくて面白かったけど、脚注がそこまで精緻ではないため、一次資料の引用と著者の想像(主張)の境界線が判別しにくい点がやや難点。学術書というより読み物としての性格の方が色濃く感じた。

    なので、何か結論が明確に導き出されているわけではなく、各章のストーリーテリングの中から読み取っていくしかないのだけれども、「日米開戦の謎」への謎解きとして私が読み取ったことを雑駁に並べると以下。
    ・陸海軍の間で縦割り意識が強すぎて、個々の正面(日中戦争、対ソ、対米等々)を一つの戦争として俯瞰できなかったこと。
    ・俯瞰することを可能にする組織の欠如。天皇以外が調整機能を有しない政府では玉虫色の「戦略」を作ることしかできなかった。
    ・同格だった陸海軍の間での権限争いが他の何にも優先したこと。それに起因して、敗北主義と捉えられることに対する恐怖が、中国からの撤収を口にすることを躊躇わせた。

    リーダーシップの欠如が大いに感じられるのだが、当時の対戦国、例えば米国や英国はどうだったのだろう。
    当時の支那事変、いわゆる日中戦争はなぜ始まったのだったか。昭和16年時点を扱う本書では、日中戦争は既成事実になっているので、次はそこを掘り下げている本も読んでみたい。

全1件中 1 - 1件を表示

著者プロフィール

鳥居 民(とりい・たみ)
1928年(昭和3年)、東京牛込に生まれ、横浜に育つ。水産講習所を経て台湾政治大学へ留学。台湾独立運動に関わる。現代中国史、日本近現代史研究家。代表作であるシリーズ『昭和二十年』(全13巻)は、執筆に1975年ごろから準備し40年ほどを費やした。左翼的な史観にとらわれていた日本の現代史研究に、事実と推論をもって取り組む手法で多大な影響を与える。他の著書に『毛沢東 五つの戦争』『「反日」で生きのびる中国』『原爆を投下するまで日本を降伏させるな』『鳥居民評論集 昭和史を読み解く』(いずれも草思社文庫)などがある。2013年1月急逝。享年八十四。

「2019年 『文庫 山本五十六の乾坤一擲』 で使われていた紹介文から引用しています。」

鳥居民の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×