外来種は悪じゃない: ミドリガメのための弁明

著者 :
  • 草思社
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本棚登録 : 39
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794226655

作品紹介・あらすじ

 本書は生物関係のテーマで長年ライターをやって来た著者による現代の自然保護政策への批評的ひと言。令和5年6月1日から特定外来生物保護法の改正施行で、ミドリガメ(ミシシッピアカミミガメ)、アメリカザリガニの「輸入・販売」が禁止された。罰則罰金も厳しく、50年以上も日本に住み着き、子どもたちのペットとしても親しまれ飼われてきたこの2種も排除の対象になってしまった。一方で、メディアでは相変わらず外来生物が日本固有の生物や里山的環境を破棄すると誤解に満ちた報道が垂れ流されている。「かいぼり」(池の水抜き)を娯楽化して外来生物と在来生物を分けて駆除するテレビ番組も人気である。――外来生物は悪者で、在来生物は良い存在だという単純な考えにも疑問を抱く。つまり生き物を良い悪いで見ること自体がおかしな自然観だと思うのだ。だから外来生物を取り除けば「理想の自然」が再現される、という考えを疑っている。(本文より) 著者は東京近郊の公園近くに住み河川や池の自然保護などにも参画している。都市環境のなかでどのような自然が生成しているかを見つめてきた。自然の複雑な生態系のありかたは人間の思い描く以上の動きで、ダイナミックに変化している。日本の外来生物移入の歴史(マングースや食用ガエル、またペットの逃亡・放流などの歴史、ミドリガメはお菓子の景品としてアメリカから大量に輸入された。アメリカザリガニは食用ガエルの餌として輸入されたものの生き残り)のエピソードを振り返りつつ、さらに西洋流の環境保護思想の輸入の影響も踏まえ、混乱する外来生物政策の現在の論点を整理しもっと豊かな「新しい自然」観を提唱する痛快自然エッセイ。本書には「もちつきかつみ」さんによる巧みな生物イラストが満載されており、これを見るのも楽しい。

感想・レビュー・書評

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  • 外来種と生態系について。
    非常に難しいテーマ。
    外来種かどうかよりも、環境にどのような影響を与えているかが大切。
    他の種を捕食する外来種も、他の生物の捕食対象にもなっている。
    人間が自然をコントロールできると思わない方が良いのでは。
    カメを飼いたくなった。

  • 説明やイラストが優しく親切なので、子どもにも読んでもらえる本だと思います。

  • ミドリガメのことだけでなく、魚や鳥、樹木になどが外来した理由や歴史などから、外来種とどのように付き合うか学び、考える本です。

    ◎信州大学附属図書館OPACのリンクはこちら:
    https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BD03191068

  • ふむ

  • 外来種たちを無闇に駆除することに威厳を呈する内容。
    エッセイなので大変読みやすい。
    それでいて、外来生物に対する考えを多角的に紹介しているし、学者でも役所勤でもないに一般人でも、どのように自然に向き合えばいいか、提示してくれる。

    何をもって純粋な自然というのか、人工的な手がいっさい加わらない自然は本当に正しいのか、生態系は常に同じサイクルで成り立っているのか、ひとつひとつの項目が興味深い。

    ところどころ差し込まれるイラストがまたいい。
    生き物のこと、自然のこと、もっと知りたいと思わせる。

    特に最後の身近なものを地道に観察したり、ひとつひとつ名前を調べたりするという自然との付き合い方は、これならできそう!と思わせた。
    せっかくスマホという写真機能を持つ便利な機器を持ってるんだし、地元にある川を調べたり、野鳥を調べたりして、土地にあるものに興味を持ちたいと思った。

    外来種というだけで悪いイメージがあったけれど、本書で示されたように、生態系をたすけている外来種もいる。
    ミドリガメだけではなく、その他の外来種たちにも思いを向けられた。

  • 投票フォーム【社会・文化・科学】No.15

  • 外来生物が在来種や生態系に及ぼす影響を識者の考えなどを交え考察する。稲やキャベツなどの西洋野菜も本来は在来種であり現在においては平然と帰化したものであり我々の生活に根付いたものだと。確かにそう考えれば頷けるが、それがミドリガメ(ミシシッピーアカミミガメ)やブラックバスと同列に考えていいものかと思った。日本は大陸の国と違い地続きの国境を持たない。よって、外来種の持ち込みは人間の意図的な持ち込みがほとんどである。沖縄や奄美のマングースの例は悲惨なものであり、この過ちを犯してはならない。

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著者プロフィール

伊地知 英信(いじち・えいしん)
1961年東京生まれ。自然科学書や博物館展示物の編集者・ライター。自然観察のインタープリター。集英社版『完訳ファーブル昆虫記』10巻20冊の編集および脚注・訳注の執筆に関わる。『しもばしら』(岩崎書店)で第58回児童福祉文化賞など。

「2023年 『ファーブル昆虫記 誰も知らなかった楽しみ方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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