《写真記録》これが公害だ: 北九州市「青空がほしい」運動の軌跡

著者 :
  • 新評論
0.00
  • (0)
  • (0)
  • (0)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 12
感想 : 0
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (186ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794810649

作品紹介・あらすじ

著者の記録作家としての原点は公害にある。経済成長が何よりも優先された時代、気がつくと身の回りの自然は汚染され人々の生活は破壊されていた。「人はいつから命よりもカネ儲けが大事になったのか」。その答えを探すためにカメラを手に、この国の不条理を記録してきた。
 えいだいさんが生まれ育った福岡県香春町(かわらまち)は、炭坑節にも唄われた「石炭とセメントの町」である。大学を中退し、六年半勤務した香春町の教育委員会を辞めて「鉄の町」 戸畑市(現北九州市戸畑区)の社会教育課に勤務したのは1962年、えいだいさんが29歳の時だった。転居からほどなくして、幼い二人の娘に喘息の症状が現れた。「大変なところに引っ越した」と思ったそうだ。
 当時の北九州工業地帯は「七色の煙」と形容され、工場からの降灰で洗濯物が外に干せない状況だった。ところが聞こえてくるのは「町の繁栄は企業のおかげ」という声。煙を吐き続ける工場を前に、誰も不満を口にできない。戸畑市の職員だったえいだいさんの、公務員の枠に収まりきれない反骨魂に火がついた。「公害のしわ寄せが真っ先に及ぶのは、家庭や育児をあずかる女性たちだ」。地元の女性たちと始めた運動は、やがて「青空がほしい」という市民キャンペーンとなり、全国の公害克服運動へと繋がった。
 公害は人間の生命や尊厳を軽視し、経済発展を優先する国家と企業のもたれあいによって生まれる。今の日本で、その体質がなくなったと言えるだろうか。東日本大震災による福島第一原発事故を経験した現在、社会のための技術が利益追求の道具となり、人の命や健康を犠牲にするような使われ方は許されないことを私たちは身をもって学んだ。
「人間の英知は科学を創造し、発展させた。しかし、それで人間はしあわせになったであろうか」。えいだいさんは本書の中で、こう指摘している。この言葉には今を生きる人々への厳しい問いかけが込められている。(本書「復刻によせて」より/西嶋真司 映画『抗い 記録作家・林えいだい』監督)

著者プロフィール

1933年福岡県生まれ。ノンフィクション作家。アリラン文庫主宰。読売教育賞、平和・協同ジャーナリスト基金賞ほか受賞多数。著書に『女たちの風船爆弾』(亜紀書房)『黒潮の夏 最後の震洋特攻』『重爆特攻「さくら弾」機』(いずれも光人社)ほか多数。

「2010年 『筑豊・軍艦島 朝鮮人強制連行、その後』 で使われていた紹介文から引用しています。」

林えいだいの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×