異邦の記憶―故郷・国家・自由

  • 晶文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794967152

作品紹介・あらすじ

『「国語」という思想』(サントリー学芸賞)以来11年の思考を集成した、渾身の文学・政治論。境界を生きる人々の声に耳を澄まし、民族差別の「いま」を問いなおす。

感想・レビュー・書評

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  • 文学から政治までを社会言語学的に分析する。特に「私」と「私たち」という言葉を中心に、国籍の定まらない者、差別を受けてきた者の視点から、「国家」という存在がどれだけ脆弱であるかを示している。
    文学論においては、小説における「私」の身体的感覚を中心に見てゆき、アイデンティティに対する答えを実体ではなく流れであり動きであると位置づけた。そして政治論において、植民地とナショナリズムの思想から、「私たち」とは他者の排除によって成立するものであり、その意味で流動的で脆弱であると結論づけている。
    前作『「国語」という思想』を読んだうえで読めばより理解が深まったかもしれない。言葉遣いが非常に繊細なのが個人的には好き。Ⅰ文学者たちの終わりなき彷徨、Ⅱ人間にとって自由は「重荷」か?Ⅲ越境という思想を辿りなおす の3つに分かれていたが、特にⅠが興味深い。記憶の一番奥底に秘められている感覚は匂いの感覚であるかもしれない。という一文を読み、次はプルーストを読破することを決意。。この一文に関しては、知覚のレベルにおいてさえ人類普遍のものとはいえない社会的パターンがあるのだから、思考と行動のレベルにおいてはなおのことであり、それを共有している集団が民族ではないだろうかという話に続く。

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著者プロフィール

一橋大学大学院言語社会研究科名誉教授。著書に『「国語」という思想――近代日本の言語認識』(岩波書店 1996)、『異邦の記憶 故郷・国家・自由』(晶文社 2007)、『「ことば」という幻影――近代日本の言語イデオロギー』(明石書店 2009)、『朝鮮の女性(1392-1945)――身体、言語、心性』(共著:クオン2016)。

「2023年 『金石範評論集Ⅱ 思想・歴史論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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