深夜薬局 歌舞伎町26時、いつもの薬剤師がここにいます

著者 :
  • 小学館集英社プロダクション
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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784796878173

作品紹介・あらすじ

ネオン街の一角に、夜8時から営業する薬局がある。
訪れるのは、
親からの虐待を告白する多重人格の女性や
コロナ禍で生活苦を訴える風俗嬢、
「眠れない」とあせる入試前夜の高校生など、
その事情はさまざま。
誰かに聴いてほしい。
でも、誰にも言えない。
「何か」を抱えたお客さんとたった一人の薬剤師との物語。

感想・レビュー・書評

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  • いつか訪れてみたいなぁと思えてしまう薬局。
    こんなに親身になってくれる薬剤師さん、素敵です。
    ドラッグストアにいる薬剤師さんは、どことなく忙しそうだし
    かかりつけの調剤薬局の薬剤師さんは、すごい親身でいいけど市販薬は置いてないし
    いいなぁ、こんな薬局
    近くに欲しいです。

  • 本屋で何気なく手に取り、タイトルと帯に惹かれて購入。
    深夜薬局、歌舞伎町ならでは薬局
    いろんなお客さんがいて薬が欲しい人だけでなく、ただ話をしたい人が来たり待ち合わせ場所になったりと様々な人々が来るらしい。
    きっと話しやすい人なんだろうなと思う。
    作者は薬剤師の中沢さんを「優しい止まり木」と表現した。その通りだと思う。

  • 深夜薬局なるものが、新宿歌舞伎町にあるなんて知りませんでした。でも読むほどに薬剤師さんの中沢さんの人柄が伝わり、そしてこの街になくてはならない薬局であることが分かりました。

    何でも相談出来る薬局ってなかなかないよな。特に都会では。でも都会だからこその孤独や悩みを抱える人達もいるはずで。そんな人達の悩みを、話したければ話してもらう、駄目なことははっきり言うけど、基本聞く姿勢でいてくれる。すごく貴重な存在だと思いました。

    夜の街がコロナの影響で、次々に休業して生活に困る人達が大勢いたこと。ニュースでしか知らなかった私だけど、それを間近で見ていて、その人達のために、コロナ禍でも開けていた中沢さん。本当に困った人達に寄り添っていることがこのことからも分かりました。

    そして1番心に残ったのは、疾患ではなくてその人をみること、そしてその人に寄り添った方法を一緒に考えること。これはたくさん言われてきたけれど、働いていると忘れてしまいがち。また改めてそうだなと思い知らされました。

  • 以前NHKの「ドキュメント72時間」で取り上げられていたのが印象的だった、新宿歌舞伎町の街角にある「ニュクス薬局」。
    営業時間は20時から翌朝9時まで。40代の薬剤師である中沢宏昭さんが、1人きりで切り盛りしている。
    周りはきらびやかなネオンが光り、同じビルには風俗店なども入っている、まさに夜の街の一角に佇むこの薬局には、駆け込み寺的にこの街で働くたくさんの人々が出入りし、時には個人的な悩みを打ち明ける大切な場所として機能している。

    街にはたくさんの薬局や調剤薬局があるし、私自身そこに行くこともよくあるけれど、そこで働く薬剤師さんに個人的な悩みを打ち明けることなんて、これまでもきっとこの先もないだろうと思う。だからこのニュクス薬局は特殊だと思うのだけど、それはやはり立地と営業時間の奇跡的な兼ね合いで成立しているのだと思う。
    普段はお客さんの話を聞く立場である水商売の世界で働く人々が、買い物や調剤の用事があっても無くてもこの薬局に立ち寄って、そこに用意されている椅子に座って様々な話をする。
    中沢さんの対応もまた絶妙で、打ち明け話をしたい人は雰囲気で分かるそうなのだけど、直接的ではなく話の流れでそれを引き出すのがとても上手い。そしてそれに対する説教めいたアドバイスは一切しないところもまた良い。「ただ聞く」というスタンスは、簡単なようでなかなかできるものではない。

    ニュクス薬局に訪れる人々との交流や、中沢さんが歌舞伎町で薬局を開くまでの苦難、そしてようやく開いてからのあれこれが章ごとに紹介されている。
    病院の側にある門前薬局ではないため信用されず、なかなか薬を卸してもらえなかったことや、客だった歌舞伎町で働く若い女性がコロナ禍で自死を選んでしまったことなど、明るくはないエピソードもある。
    だけど全般的にはとても希望を感じる1冊だった。「ここにこの場所があるから頑張れる」という、ほっとできる光のような薬局だと思う。
    いつか行ってみる…ことは無いとしても、そこにあることを確かめてみたい気持ちになった。

  • 人の話を聴く。自分を出さないことだと思う。相手のことを想いながら寄り添うことの難しいこと。頭が下がります。

  • フィクションと思って手に取ったら、まさかの実在の薬局のお話だった。本当に大変だと思うけど、こうやって利益追求でなく、心や身体を支えること、守ることを医療人として指名にされている方がいること、本当に救われるし、頭が下がる。そして、それを表に出していないのがまたいい。いい意味でゆるいと言うか、身構えないで行ける空気感が本越しにも伝わってきた。

    p.88 「高校の時からかな、心と体のことを気楽に相談できる場所って、絶対必要だよなとはずっと思ってたんですよ。みんなが相談しやすいのは薬局かな。薬局みたいなところに、いつも相談できる同じ人がいればいいのにな」

    p.109 確かに椅子があれば、ない時に比べて長い出来るようになる気持ちはわかる。お医者さんにお伝えられなかった、ちょっとしたことを、喋ってみようかなと言う気持ちになるかもしれない。「まぁちょっと座りなよ」と言える。立ったままの状態でどうしたのと言われたところで、実は子とはいかない。道端にある占いの店にも、教会の告解部屋(いわゆる懺悔室)にも、椅子がある。人間、立ったままでは、体も揺れるし、気持ちってしまうし、なかなか踏み込んだ話ができないだろう。だから、中沢さんは、座って向かい合うことができる、ちょっと隔離されたような、こっそり、そして、じっくり話せるスペースを作ったそうだ。こうした小さな工夫の積み重ねが、落ち着ける場所、心の武装を解ける場所を作り上げてきたのだろう。

    ちなみに、もう一つ、メンタルバランスを崩した人は多くやってくるだろうと見越して工夫したものがある。壁紙の色を柔らかいピンクにしたことだ。肌色と桃色の間のような天川色。これは精神的に安心感のある色、なんだそう「ともかく、ここに来れば安心と思ってもらえたら、嬉しいです」

    p.116 そんな顧客のニーズに応えた、かゆいところに手が届く商品選定のだ。バラ売りすることで、気楽に購入でき、きっちりと否認する人が増えるのならば、社会的に有意義な商売だと言えるだろう。

    p.127 「例えば、キャバ嬢の子が、処方箋の順番待ちをしながら電話誰かと喧嘩をしていたとします。内容的に、ホストの彼氏と揉めているのだなとわかった。でもそういう時も、ダイレクトに彼氏と喧嘩したの?とは聞かない。ただ何かあったって軽く尋ねる位にする。そこで、相手が、ぼかしたり話したくなさそうだったら、それ以上深掘りしません。逆に話したそうにしたら…、その時は、相手が言葉にするのを待ちます」

    p.131 「夜の仕事の人で多いのは、個人事業主が入る国民健康保険で、かつ扶養家族。20代半ばの人でこれに該当していたら夜の仕事かなとあたりをつけます。会社員だと社会保険の本人になりますから。後は保険者番号の左端の数字ですね。中小企業だと01006 =組合がある所なので、しっかりした大企業が多いとか、いろんな情報が得られます。その他にも、番号欄に書かれた数字が1だと、創業者、といったこともわかるのだそうだ」

    p.150 弱っていない、困りごとを抱えていない相手には、きちんと対応する。しかし、薬局内で人と接する時は、あえて言葉を崩す。この場で必要とされるためには、言葉から変えようと言う、明確な意識の表れなのだと言う。

    p.171 「患者とは、心を串刺しにされているもののことで、看護とは、手と目を使ってみることだ」としばしば言われる。

  • 『ザ・ノンフィクション』で拝見してからずっと気になっていました。
    番組をみていて「お客さんとの距離感が良いな」と思っていたのですが、心理学やマインドリーディングを勉強して実践されているとこの本で知りました。
    「自分の意見をはさまず人の話をずっと聴く」というのは大変だと思うのに飄々とそれができているように見えていたのですが、やはり色々勉強されていたんだと感服しました。
    また、自転車での薬の宅配、バイク便での配達など、深夜にしんどくなっている患者さんにしっかり寄り添われていて、とても頼りにされている理由がよくわかりました。
    ニュクス薬局、この本を読むと一度は行ってみたくなりますね。中沢さんとお話してみたいです。

  • 前にテレビで見た薬剤師さんの話と知らずに借りていた。
    正直、さらりと読めてそんな深い内容の本ではなかったけれど、「遠くから投げるボール」という話が職業、年齢関係なく、人とコミュニケーションをとる上で大切な事だなぁと思いました。

  • 2023/06/28予約
    新宿・歌舞伎町の一角に、夜8時から朝9時まで営業する薬局。
    いつも同じ人がたったひとりで営業する。
    キヨーレオピンのボトルキープ(液体をボトルから付属のカプセルに注ぎ入れすぐにカプセルごと飲む、という商品だと知らなかった)や、コンドームのバラ売り。
    処方薬の自転車配達(無料だそう)やバイク便などの独自サービスが好評。
    なかなか興味深いノンフィクションなので、もっと深く知りたかった。

  • おもしろい!まるでドキュメンタリー。
    デュラ好きとして、同じにおいを感じた。
    実際にある非現実感。
    中沢さんに会ってみたくなる。

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著者プロフィール

編集・デザインディレクターを経て、現在、国内外の歴史、古典文学関連を中心に、精力的に執筆活動を行なう作家として活躍中。主な著書に『世界史もわかる日本史』、『ねこねこ日本史でよくわかる日本の歴史』、『100年前のビックリ教科書』、『裏も表もわかる日本史[江戸時代編]』(ともに実業之日本社)、『豪商たちがつくった幕末・維新』(彩図 社)、『人間愚痴大全』(小学館集英社プロダクション)、『川柳と浮世絵でわかる江戸時代のくらし』辰巳出版)、など。『浮世絵の謎』の著者でもある。ABC 朝日放送『ビーバップ! ハイヒール』に浮世絵講師としても出演。

「2022年 『春画コレクション ~絵師が描くエロスとユーモア ~』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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