めぐりあいの果てに (ソフトバンク文庫 シ 5-2)

著者 : シンディ・ジェラード 鷲見貴久子

• ソフトバンククリエイティブ (2008年2月15日発売)

感想・レビュー・書評

[oatuinoさんの感想 · 2008年12月11日]

ボディガードシリーズの二作目。ＥＤＥＮの双子の長女がヒロイン。ヒーローは元警官で探偵。<br>
シークレットサーヴィス捜査官だったヒロインはその当時に警護を担当した富豪の娘を妹のように思っていた。その富豪の娘と連絡が取れなくなって、独自に行方を捜そうとしている。その最中に自分への殺人予告があり、事態は波乱に満ちてくる。ヒーローは娘の父親の会社から雇われてやはり娘を捜そうとしている。その関係でヒロインと出会う。実はヒーローは十四年前にヒロインがバージンを捧げた相手だった。十八歳で若かったヒロインはその結果、妊娠、流産を経験することになる。しかしヒーローはセックスしたあとでヒロインに連絡せず、そのまま二人の接点はないままに。この部分のヒーローは、かなり最低。もちろんセックス自体はお互いの合意の上だし、いわゆる若いときのたんなる火遊び。でも結果的にヒロインは一人で葛藤を抱えることになった。それ以来、ヒロインにとってヒーローはトリプルＡ最低男（傲慢で、この上ない、くそったれ）として記憶されている。ヒーローはその後、警官となり結婚、離婚を経験。永続的な関係には失望し、たった一人の娘だけを愛している。こんな二人がいつしか富豪の娘の捜索を一緒に行うように。<br>
二人の関係の変化も楽しいけれど、富豪の娘を巡るミステリーやヒロインへの殺人予告など、サスペンスとしても十分に読み応えがあった。<br>
ヒーローはいわゆるタフでマッチョなろくでなしな感じ。調子が良くて快活。正直、ヒーローがヒロインの流産を知らずにヒロインを落とそうと躍起になっている前半は好きになれなかった。けれどヒーローがヒロインを守ろうとする姿勢は真摯で好感が持てる。膝を故障しているにもかかわらず、爆破に巻き込まれないようにかばったりするところは、いかにもヒーロー。<br>
ヒロインにしても結局は初恋の相手であるヒーローへの思いを抱えているわけで、ヒーローに惹かれていく気持ちは抑えられない。結局なし崩し的にセックスに及んでしまい、それを問題として捉え、なかったことにしたがる。時は流れてもヒーローにたいするわだかまりは消えないし、それは当たり前だと思う。しかもヒーローにはかわいい子供がいるとなっては、痛みは大きいだろう。<br>
一方ヒーローにとってヒロインは特別な存在になっていた。そして富豪の娘の捜索劇はパームビーチからラスベガス、ニューヨーク、そしてユタへと。この娘の失踪がただの家出でないことも次第に明らかになり、危機感はつのる。そしてユタの牧場での活劇。ハラハラ感はクライマックス。<br>
逃げるようにウエストパームビーチに戻ったヒロインをヒーローは追いかけてくる。兄貴モードのＥＤＥＮの面々がイイ味だしている。特殊部隊用ともいうべき歯を食いしばったその表情、というのを見てみたい。怖さを克服して、というより認めてヒーローとの結婚を承諾したヒロイン。結局、妊娠、流産のことは最後の最後に明らかに。いかにもヒーローなヒーローは、今後はその痛みを克服しなくてなならないのだろう。ヒロインのほうはヒーローとの結婚によっていがいとあっさり傷を乗り越えてしまった感があったけど。<p>
タフな兄貴たちを前にしてのヒーローの言葉。
「なあ、きみの兄弟がその気になれば、オレを床の敷物にすることもできる。壁紙にすることもできる。そうされてもオレは帰らないからな」
そしてヒーローの告白。
「おれはきみのために、できる限り最高の男になりたいんだ。がっかりさせるんじゃないかと思うと怖いよ。ああ、イヴ。いいかい。きみは。おれがいままで夢見てきたことを全部かなえてくれる。きみは頭がよくて、やさしくて、勇敢で、生意気だ。それに最高にセクシーだ。きみは人生の目標だよ、イヴ。おれがずっと手に入れたいと思っていたものだ。ずっと何年も、きみを忘れようとしてきたけれど、もう失敗は恐れない。きみのためにも。おれたちのためにも。頼むから言ってくれ。この取引を確実なものにするためにはどうしたらいい？」
こんなことを言われたら、ヒロインじゃなくてもグッとくる。