ボーイ・ミーツ・ハート! -彼女のフラグは難攻不落!?- (GA文庫)
- SBクリエイティブ (2011年6月14日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784797365924
作品紹介・あらすじ
たとえば予知能力者と透視能力者がトランプで勝負したらどうなるか?超能力者が暮らす砂拠市は、そうした一般的な種目を使った異能バトル・PSYゲームが日常的に行われる街である。そんな街の住人で、音を操る力を持った征司は、他人の心音を聞くのが趣味という残念な高校生だ。彼はある日、幼なじみの少女・狭霧と再会するが、その印象は昔と大きく変わっていた。「彼女を取り戻したい(おもに心音的な意味で)」かつての狭霧を取り戻すため、征司は奔走し始めるが-。
感想・レビュー・書評
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9784797365924 269p 2011・6・30 初版1刷
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“(——ああ、そうか)
思い至ってみれば、こんなにも簡単な理由。
それはとっても単純で。
幼稚とさえ、言えるかもしれないけれど。
だけど自分の中では、何よりも正しい答え。
「僕が、彼女に戻ってほしいと思う理由...それは」
征司は一息。
「今よりも昔の狭霧の心音の方が、僕の好みにあってるからなんです!」
「お姉ちゃんラリアット!」
「ぐはぁ!?」
容赦なく放たれたラリアットに征司はふっ飛ばされた。
「とばりさん、痛いです!」
「うん、割とガチで叩きつけたからね。......ていうか、さすがのお姉ちゃんもこの空気の中でそう言える征司君にはびっくりだわ」
「ええ、自分でもさすがにこれはないと思ってます」
「本当に今のが理由なの?」
「ええ、偽りのない本心です!」
征司は今世紀最高の笑顔で言い切った。
その顔面に吸い込まれるようにして、今度はとばりの右ストレートがめり込んだ。”
なかなか面白いかも。
特に会話のテンポが良くて気持ちいい。
PSYゲームも捻ってあって楽しかった。
“「PSYゲームって楽しいよー。普通のゲームにPSYっていう要素が加わって、もう全然意味の解らない状況になったりして。あ、それとセージ、私のことは君じゃなくて狭霧先輩って呼んでって言ったでしょ」
「同い年なのに先輩は変だとも言ったよ。——まあそれはともかく、PSYゲームなんて最終的には強いPSYで決まるものでしょ?僕はそもそもPSYがまともに操れないし、操れたとしてもそんな強いPSYじゃ」
「このあんぽんたん!」
狭霧の右ストレートが征司の頬にめり込んだ。
「そんなだからミジンコって言われるのよ!」
「僕をそう呼ぶのは君だけだ!」
「私が伝えて回るからすぐに皆ミジンコって呼んでくれるよ!」
「全力で嫌がらせだよねそれ!」
「そんなことはどうでもいいのよ!」
いやどうでもよくないよ、と食い下がろうとした征司だったが、狭霧の強烈な声に吹き飛ばされた。
「PSYゲームはPSYで決まるものじゃない!PSYゲームを決めるのは——心よ!」
「............」
「なにその『うわあ超説得力ないよ』的な顔は」
「惜しい。そこに『しかもなぜかポーズを決めてしたり顔してるし』って付け加えれば完璧だったごめん右ストレートの構えを取らないでくださいお願いします」
「じゃあ左でいくね」
「そういうことを言ってるんじゃないんだけどな」
「右の頬を殴られたら左の頬を差し出しなさいって言うでしょ」
「それは差し出させる方が言っていい台詞じゃないと思うんだ」” -
後書きに書かれていますが、超能力者が自分の能力を駆使して通常のゲームをやったらどうなるか?
と言うのが物語作りの根幹にあり、読み合い・策が面白い。
キャラ立てもしっかりとしているが、主人公が心音フェチと言うのがマニアックに過ぎてどうだろう(笑)
ラノベ的に主人公に気を持ってくれている空回りしがちなクラスメイトは様式美なのかもしれないが、本作だと気の毒な部類。続きが出るのであれば、彼女の立場改善を切に要望したい。
しかしサブタイトルがどうだろう。内容に則してないとまでは言わないけれど、体を示していない。そこで、読者層を損をしている気がして勿体ない。
しかし、作者さんは間違いなく西尾維新さんが大好きですね。掛け合いの雰囲気とか。ボクも大好きだけれど、引きずられ過ぎている気がする。全体的な雰囲気を借りるならば、オマージュ的な台詞がない方が良いように感じたり。