チョムスキーと言語脳科学 (インターナショナル新書)

著者 :
  • 集英社インターナショナル
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784797680379

作品紹介・あらすじ

「言葉と脳」の研究で今最も注目される著者が、議論百出するチョムスキーの言語理論に迫る!

子どもが楽々と言葉を身につけられるのはなぜか?
第二言語の習得が難しいのはどうしてか?
人工知能が言語をうまく扱えない本当の理由ーー。
チョムスキーの理論を言語脳科学で実証し数々の謎が明らかに!

すべての自然言語には共通の基盤があり、言語機能は生得的だとする「生成文法理論」は正しいのか。
言語研究の「革命」を告げるチョムスキー著『統辞構造論』を詳しく解説し、生成文法理論の核心となる〈文法中枢〉が脳内に存在することを、言語脳科学の実証実験によって明らかにする!

【内容】(「目次」より)
序章 「世界で最も誤解されている偉人」ノーム・チョムスキー
ダーウィンやアインシュタインと並ぶ革新性/文系の言語学を「サイエンス」にしたゆえの摩擦/「猿を研究すれば人間が理解できる」と思っていたが/チョムスキーがモデルにした「物理学」の発想とは
第一章 チョムスキー理論の革新性
現象論だけでは「サイエンス」にならない/「プラトンの問題」〜なぜ乏しい入力で言語を獲得できるのか/行動主義心理学との決定的な違い/「学習説」と「生得説」/チョムスキーが進化論を否定したという誤解/言語は双子から生まれたのかもしれない/文の秩序を支える「木構造」/「みにくいあひるの子」は何がみにくいのか/再帰的な階層性
第二章 『統辞構造論』を読む
言語研究の「革命」開始を告げる記念碑的著作/「装置」と見なせるような文法/動物の鳴き声を研究しても人間の言語の解明は「不可能」/文法のチョムスキー階層/句構造と構成素/句構造などを生み出す書き換え規則/文脈依存文法と文脈自由文法/句構造文法の限界を超えるには/「変換分析」というアイディア/言語理論を絞り込む三つの条件/「言語学的レベル」とは何か/統辞論と意味論/チョムスキー批判に答える
第三章 脳科学で実証する生成文法の企て
文法装置としての脳/脳の言語地図〜語彙・音韻・文法・読解の中枢/入力と出力を超える「脳内コミュニケーション」/自然な多言語習得を目指して/脳の活動を「見る」fMRI/言語能力と認知能力をどう区別するか/併合度の予想値と見事に一致した実験結果/脳腫瘍患者の「失文法」が明らかに
最終章 言語の自然法則を求めて
サイエンスにおける「仮説」/都合のよい解釈を避ける工夫/因果関係を証明することの難しさ/悪魔にだまされていないか

【著者略歴】
酒井邦嘉 言語脳科学者、東京大学大学院教授。1964年生まれ。東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。1996年マサチューセッツ工科大学客員研究員を経て、2012年より現職。第56回毎日出版文化賞、第19回塚原仲晃記念賞受賞。脳機能イメージングなどの先端的手法を駆使し、人間にしかない言語や創造的な能力の解明に取り組んでいる。著書に『言語の脳科学』『科学者という仕事』(とも

感想・レビュー・書評

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  • 酒井邦嘉「チョムスキーと言語脳科学」読了。NHKラジオ番組カルチャーラジオ・科学と人間“科学者6人で探る独創性”で酒井先生のお話を聴講し大変感動した。そんな先生の著書を見つけ読んでみた。すでにラジオでチョムスキーの事を聴いてはいたが、生成AI、大規模言語モデルの登場で注目される言語を科学的に捉え普遍文法を示した統辞構造論、そして先生の脳科学的なアプローチに引き込まれた。おかげで科学の素晴らしさを存分に堪能する事ができた。

  • 正直微妙だった。
    チョムスキーの理論がどのような点で革新的であったかはなんとなくわかったが、それと脳科学の関係、チョムスキーのその後の研究の展開など、気になるところがあまり書いていなかった。
    科学哲学についてかなりページを使って書いていたが、そのような話はいるのか?と感じる。読者が読みたいのはその分野のわかりやすい解説であって、著者の主観的な哲学ではないと思った。

  • “今さら” と言われるかもしれないけど、あえて基本に立ち返って『統辞構造論』の解説を試みているところが本書の最大の魅力ではないかと思う。
    もちろん、“文法中枢” の実在を示した著者自身の研究の紹介も説得力があり、おもしろいのだけど。ただ、現在の生成文法の主流は、いわゆる “文法中枢” が言語だけに特化したものとは考えないで、むしろ言語以外の認知能力との共通性を探求する方向に向かっているので(Strong Minimalist Thesis)、誤解しないように注意しなければならないと思う。

  • 中途半端な本
    チョムスキーの入門としては、いまいちチョムスキーの凄さが分からず、言語脳科学の入門としては、著者の曖昧な実験の概要しか分からない。

    特に実験については、想起する能力、認知能力と文法の能力の切り分けが十分になされているかは甚だ疑問

  • <シラバス掲載参考図書一覧は、図書館HPから確認できます>https://libipu.iwate-pu.ac.jp/drupal/ja/node/190

  • 二章が分からなくて流し読み。文法は意味から独立して成り立つ。文法の成立は、文法中枢に依存し、文法中枢は脳内に存在する。

    p244 因果関係を証明することの難しさ。
    「Aが増えると同時にBが増えた」という結果がでた場合、AとBには相関関係があるといえるが、AとBには因果関係がある(「Aの増加が原因でBが増えた」といえる)かどうかは分からない。

  • 2019.08―読了

  •  すべての事前言語には共通の基盤がある。誤解されやすいチョムスキーの言語脳科学について概観したものが本書である。
     AIを考える時に身体性が実は重要らしい。ヒトの言語運用能力についても、①もともと持っている能力と、②学習を通じてその能力を運用できるようになる能力の2つが必要だというのが本書の主張である。
     言語学に対してコペルニクス的な転換をもたらしたのがチョムスキーである。ヒトが言語を運用する根底にすべての個別言語に共通する「普遍文法」があるという考えである。また、ヒトは母語を獲得する能力を生得的にもっているとする。
     共通の文法があるなら、複数の言語運用も容易なはずなのになっていないのがおかしい。普遍文法の存在を疑う素朴な疑問はいくらでも出てくる。本書はこれらに対して丁寧に説明している。どちらかというと私達が「言語」に持つ概念が実態と合っていない、と考えるほうが良さそうだ。
     エンジニアであれば、ハードウェア、OS、アプリケーションと機能分化するという風に直感的に気づく様なことである。一方、言語学はどちらかというと文系の学問分野であった。故に博物的に取り扱う。本書ではこれを「蝶々あつめ」と称している。調査⇒分析という流れになる。この流れで分析すると例外ばかりになる。共通の要素は無いという結論に陥ってしまう。
     「新記号論」では「ヒトはみな同じ文字を書いている」という。つまり、全ての文字は脳の同じ機能を用いていると考えられる。
     また「<脳と文明>の暗号」では話し言葉、音声においても同様なことをが述べられている。
     これら2つに関して「ニューロン・リサイクル説」というものもある。進化により獲得したある能力を別の場面で適用するというものである。そういういみではチョムスキーの説もこの具現の可能性もあるだろう。
     「言語」を学ぶには、①自身の心身の仕組みを理解すること、②その理解に合わせた学習法を見出すこと、なのだと思う。

  • 言語学を徹底的にサイエンスとして扱っている。サイエンスと言いながらもその反証がサイエンスではないことをよく理解してほしい。
    第2章はチョムスキーの統辞構造論解読のための手引き。
    3章は、人類が生得的に備えている生成文法の存在を証明する過程と結果。
    科学的であるとはどういうことかを考え、その向き合い方も考えさせられた。

  • 言語というと、どうしても現象論的アプローチのイメージが強い。だからこそ、言語能力を科学的に検証し、普遍的な法則を見つけ出す作業は斬新でワクワクする作業。畑違いなので難しい部分もあったけれど、チョムスキー理論の骨子はわかりやすく解説されていたし、統辞構造論を学びたくなった。小さい時に読んだ谷川俊太郎さんの「これはのみのぴこ」が出てきたのも良かった、笑

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著者プロフィール

言語脳科学者。

「2023年 『高校生と考える 21世紀の突破口』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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