戦国、まずい飯! (インターナショナル新書)

著者 :
  • 集英社インターナショナル
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本棚登録 : 129
感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784797680485

作品紹介・あらすじ

あの時、あの武将はいったい何を食べていた?

薄味を供した料理人を殺せと命じた信長、糠(ぬか)味噌汁を残して叱られた井伊直政、逃避行中に雑草を食べた真田信之、生米は水に浸してから食べよと心づかいする家康……。
歴史小説家である著者が、さまざまな文献から戦国の食にまつわる面白いエピソードを紹介。さらに文献に登場する料理を再現し、実食する。果たしてその味は……。どれだけまずいのか!?
食を通して、当時の暮らしぶりを知り、戦国の世と先人たちに思いを馳せる。

――第2章より
ある夜、井伊万千代は、大久保忠世から、若い衆がうち集まって旨い料理を食べているからいらっしゃいと招待を受けた。
(中略)
若者たちは焚火に顔をあぶられつつ、生煮えの芋汁を食べている。皆、余計な口はきかない。ただ、汁のすする音、舌を打つ音だけが、騒がしい。三河ものらしい野卑な食べ方である。万千代にも碗にうずたかく芋を盛られたものが与えられた。こちらは碗を持つ手も典雅に、さらさらと口に流し入れる。
が、
「!」
まずい。とても食べられたものではない。万千代は黙って碗を下に置いた。
(原典は『故老諸談』。著者の意訳による)

――目次
第1章 赤米 稲米として最悪のもの?
第2章 糠味噌汁 醤油は贅沢? 叱られた井伊直政
第3章 芋がら縄 戦国時代のインスタントスープ
第4章 干し飯 最重要の保存食を腐らせた武将とは?
第5章 スギナ はなはだ食べづらきもの 真田信之の述懐
第6章 粕取焼酎 ツボいっぱいに詰めてくれ! 真田信繁の好物
第7章 牛肉 宣教師の陰謀か? みんな虜の牛肉料理
第8章 ほうとう 戦国時代の麺食の実態とは?
第9章 味噌 行軍中にできる謎の味噌の正体を追う

■著者略歴
黒澤はゆま(くろさわはゆま) 歴史小説家。1979年、宮崎県生まれ。著者に『劉邦の宦官』(双葉社)、『九度山秘録』(河出書房新社) 、『なぜ闘う男は少年が好きなのか』(KKベストセラーズ)がある。好きなものは酒と猫。

感想・レビュー・書評

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  • この作者さんたら
    戦国時代の文献を調査するだけじゃ
    飽き足らずに実作しちゃった!
    当時使っていたであろう材料を調べ
    できるだけ近いものを使って。
    こういう研究スタイル好きだなぁ
    と思ったら…研究者じゃなくて小説家なんだ!

    戦国時代くらいはまだ
    戦いが始まれば農民も駆り出されたり
    農地もそんなに豊かじゃないから
    領主がめっちゃいいものを食べてたかというと
    そうでもないみたいですね。

    でも、干し飯とかズイキに汁を吸わせて乾燥させた
    戦国インスタントスープとか当時の工夫も面白い。
    あと、井伊直政が薄味だから醤油が欲しいと言って
    居並ぶ猛者に叱られたエピソードが
    なんか印象に残ったわ。

  • 歴史小説などには、陣中での食事として
    「干し飯」なるものが登場します。

    「ああ、干したご飯であって保存食みた
    いなものなのだな」と読者は納得して、
    先に進んでしまいます。

    しかし著者はそこで終わらないのです。

    「それってどんな味がしたのだろうか」
    と、さらに一歩先へと想像を巡らせるの
    です。

    そして出来るだけ忠実にその食事を再現
    させて、食レポをするというのが本書で
    あり、頭が下がる思いの力作です。

    さらに素晴らしいのは、世に知られた
    大名が食べたものだけではなく、名も無
    き雑兵の食事にも焦点を当てた点です。

    戦場で雑兵は何を食べていたのか。

    当然残されている資料は少ないですが、
    非常食として「芋がら縄」というものが
    あったらしいです。

    荒縄は里芋の茎などから作られているの
    で、非常時にはこの荒縄をブツ切りにし
    て味噌汁の具としていたとか。

    もちろんそれも再現して食しています。
    味は読んでのお楽しみです。

  • まずい飯だけじゃないけど、「え、それ食べたの?!」も入っていて、面白かった。
    「え、それ食べたの?!」第一位はスギナ。つくしの後に出てくるあいつ。どう見てもイガイガじゃないか…美味しくはないらしい。そうでしょうね…エピソードは真田幸村(信繁)のお兄ちゃん信之。子供時代。
    第二位は糠味噌汁。要は糠味噌で作ったお味噌汁。糠味噌って糠漬けのあれですよね?!の驚き。エピソードは、若き日の井伊直政。某大河ドラマの影響で、あの役者さんたちで脳内ドラマが展開されました。お好きだった方は、この章だけでも是非。ちなみに「粕取焼酎」は信繁でした。
    第三位は干し飯。これは伊勢物語にも出てくるので平安から食べていたのは知っていたけど、ご飯を炊いて洗って干したやつじゃない、という展開に。読んでいるうちに「あれ?」となって、最後に出てくる筆者の奥様の一言に「あ、やっぱりw」と。
    実は昔やってみようかちょっと迷ったことがある、芋がら縄にチャレンジしてくれていたのが嬉しい。芋がらは作ったことがあるし、けっこう好きなんだけど(ものすんんんんごい手が汚れます、アクが強いので)、どう考えても普通にお味噌汁が美味しいに決まっているので、踏み切らなかったのです。お味の感想は想像していたどおり。
    お味噌がとてもたくさん出てきます。「味噌」の章だけじゃなくて。それだけ、欠かせない調味料だったんでしょうね。

  • 【目次】(「BOOK」データベースより)
    第1章 赤米ー稲米として最悪のもの?/第2章 糠味噌汁ー醤油は贅沢?叱られた井伊直政/第3章 芋がら縄ー戦国時代のインスタントスープ/第4章 干し飯ー最重要の保存食を腐らせた武将とは?/第5章 スギナーはなはだ食べづらきもの、真田信之の述懐/第6章 粕取焼酎ーツボいっぱいに詰めてくれ!真田信繁の好物/第7章 牛肉ー宣教師の陰謀か?みんな虜の牛肉料理/第8章 ほうとうー戦国時代の麺食の実態とは?/第9章 味噌ー行軍中にできる謎の味噌の正体を追う

  • 戦国武将や兵たちは何を食べていたか! 干し飯くらいしか知らなかったけど、糠味噌の汁とかスギナとかまずそう。リサーチして現代でもそれを作って食べてみる著者の試みは興味津々。しかし芋がらで縄を作って普段活用し、いざというときに水で戻して煮込んで汁にって…すごいな。これは食べて見たいかも~

  • 戦国時代の食料を再現。
    文献を当たったり、専門家に問い合わせたりしつつ焼酎は酒税法の絡みもあり市販品ですがそれ以外は自作で味を確認と言う手間暇のかかった本でした。

    『まずい飯』とありますが結構美味しそうなものもあり、当時の食生活が垣間見れました。

  • ふむ

  • 調味料の充実した現代と比較すれば味は単調だが、栄養分に富んだ合理的な戦国時代の兵糧。実際の再現を通じた戦国時代の人々の食の知恵に感動する作品。

    赤米、糠味噌汁、芋がら縄、干し飯、スギナ、カストリ焼酎、牛肉、ほうとう、味噌。

    戦国時代の文献を漁り、当時の食を可能な限り再現する。最初の挑戦ではほぼ間違いなく失敗するところが面白い。

    味噌のアミノ酸の吸収力の高さが戦でのスタミナにつながったり、携行性と保存性に優れていたりと当時の食事は実に理にかなっている。もちろん現代のように調味料が充実していないので、味は短調とはなるが、決してまずそうには思えない。

    食に関する多くの文献を素にした一冊。筆者の苦労は目立たぬが相当なものだったろう。

    定説や迷信を実証的に否定しつつ、おそらく歴史的事実に近づいていく歴史的な実験の過程が楽しめる。新書として完成度の高い満足の一冊でした。

  • 特定の武将が食べたというものを再現するというより、当時食べられていたろう物を再現して食す。その部分はかなり薄い。著者も、食事の研究科ではなく歴史小説家。
    んで、その食べ物から連想される武将のエピソードを記すという構成で、本としても薄いし、中途半端。

    面白くないとは言わないけど、そそられない。

  • 戦国時代に食べられていたものを、文献やその筋のプロの助けをもらって再現、食べてみるという本。うまい飯なら読まなかった、まずい飯のほうが面白いもんね。とはいえ、結果うまい飯だったものもあり。

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著者プロフィール

宮崎県出身。九州大学卒業。九州奥地の谷間の村で、神話と民話、怪談を子守歌に育つ。小説教室『玄月の窟』での二年の修行の後、『劉邦の宦官』でデビュー。

「2015年 『九度山秘録 信玄、昌幸、そして稚児』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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