図解入門よくわかる最新スマートグリッドの基本と仕組み (How-nual図解入門Visual Guide Book)
- 秀和システム (2010年6月30日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (207ページ)
- / ISBN・EAN: 9784798026770
作品紹介・あらすじ
産業構造に変革をもたらす電力網と情報技術の融合。わかりやすくビジュアルに解説。
感想・レビュー・書評
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なかなか聞くには聞けない電気の流れやスマートグリッドで取り組もうとしていることが、素人にもよく分かるように書かれている一冊。これはいい。
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スマートグリッドの解説書には珍しく、手放しの礼賛もしくは反対の立場である電力会社の専守防衛に偏ったスタンスを取ることもなく、バランスのとれた編集である。
取り扱っている内容も、電気事業や電力系統の仕組にまで触れており、スマートグリッドについて考え合わせるべき要素を、ほぼ漏れなくカバーしている(であろう)。
例えば「7−5 発電設備の構成と自然エネルギー」にて、「日本の電力会社は、供給区域内の系統の安定運用には自己責任で対応するのが原則になっていることが、自然エネルギー、とくに風力発電の大量導入が難しい原因の一つだと筆者は考えています。しかし、この自己責任原則が日本の送配電系統の安定性を高めてきたのですから、これを変更することの是非は慎重に検討する必要があります。」
一方、直流技術に対しては、やや楽観的に過ぎる捉え方をされているようだ。
「3−9 交流から直流へ」で「消費機器の直流化には、安全基準、供給電圧の設定、コンセントやスイッチの性能等の標準化が不可欠です。そのため時間を要するかもしませんが、遠くない将来に直流を直接使う機器が商品化されるでしょう」とあるが、直流化の課題はむしろ、超高圧、高圧の大容量送電系統の構成、交流系統の接続に必要となる変換装置のコストの問題であることはあまり言及されていない。「9−6 アジアの電力供給網との連系」でもたやすく直流連系系統の構築が議論されているが、発電エリアから需要エリアへの送電手段として他に代替がないためにやむなく直流送電を採用することはあっても、商取引、融通の活発化のためだけに長距離直流送電システムを構築するのは、経済的にとても高いハードルがあることを認識すべきである。天然ガスのパイプラインとは、建設の意味合いが違うのだ。