増補改訂版 なぜ欧米人は平気でルールを変えるのか ルールメーキング論入門 (ディスカヴァー携書)

著者 :
  • ディスカヴァー・トゥエンティワン
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784799312995

作品紹介・あらすじ

スキージャンプ、F1、柔道などの「国際スポーツ」で…、また、半導体、自動車、大型二輪車などの「国際ビジネス」で…、日本が勝つとルールを変えられるのはなぜ?日本人と欧米人とのルールに対する考え方の違いとその理由を解き明かし、日本人がルール作りに参画するにあたって持つべきプリンシプルと、失ってはいけない美徳を語る。スポーツ、ビジネス、政府関係者など、さまざまな分野のプロフェッショナルから反響を呼び、「国際感覚が磨かれる」「日本的な考え方の良し悪しが分かる」と多数の読者からご好評をいただいた『ずるい!?なぜ欧米人は平気でルールを変えるのか』(2009年12月刊行)に大幅加筆した増補改訂版。

感想・レビュー・書評

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  •  2009年に出た『ずるい!?なぜ欧米人は平気でルールを変えるのか』の増補改訂版となります。読書会でお世話になっている青木さんの旦那様の著作で、前作と同じくいただいてしまいました、、感謝! <(_ _)>

     「プリンシプル(原理・原則)との差異を踏まえた上で、ルール(手段・手続)作りへの参画することが大事」との骨子は同じです。今回はそこからさらに考察を深めて、まさしくこれからの日本と日本人の闘い方を描こうとされている一冊と、感じました。

     「(正々堂々とルールを守り、潔く闘うという従来の日本人の)考え方を堅持したうえで、
      ルールつくりには積極的に参画していくことが大切」

     スキーなどのスポーツや車やバイクなどのビジネスの事例を上げながら、「勝ちすぎは社会を豊かにしない」し、「ルールを支配したからといってずっと勝ち続けられるわけでもない」と、その後の結果まで踏まえて述べられていて、非常に説得力があります。

     例えば、1998年直後のスキージャンプルール改正は、なんとも後味の悪さを感じたのを今でも覚えています。ただ、その後の結果を中長期的に俯瞰すると、体型的に日本人と変わらない方が結構勝利しているとは意外で、「ルールは成長の糧になる」というのを考えさせられた事例です。

     その上で「1チームが勝ちを独占しては面白みがなくなってビジネスとして成り立たなくなる」とされています。これ、身近では日本のプロ野球を見ていると納得してしまうんですよね。先日のWBCが盛り上がる一方で、その波及効果は相変わらずにいまいち見て取れないかな、と感じていますから。。

     大事なのは「自身を含む社会の成長(公益)」で、これはプリンシプル(原理・原則)であり、そうそう変わるものではない。しかし、この原理を最大限に実現していくためのルール(手段・手続)は、適宜変えていくべきだろうとは、双方の区別ができているからこそ、でしょうか。

     ルール(法)はその時代の状況に則して変わっていく、これは「法治」の理念を生み出した古代ローマの時代でも同じで、その系譜を受け継いでいる欧米であればごく当たり前の感覚なのかなと。

     翻って日本はというと、、一度決まったモノはオイソレとは変えないとする傾向は強いと思います。これがプリンシプルに対してであればよいのでしょうが、問題はルールをも混同して不変のものとしてしまっている点でしょうか、特に戦後はその傾向が強くなっていると思います。

     むしろルールという枠組みを守ることにだけ汲々として、肝心の「日本人としてのプリンシプル(美学)」を見失いつつあるのではないでしょうか。「仏作って魂入れず」とはよくいったもので、戦後のGHQ内部の共産主義勢力の在り様を鑑みて、痛感するシーンもしばしば。

     戦後教育を例にとってみると、日教組などの敗戦利得者の暗躍もあるでしょうが、古来より連綿と受け継いできた日本らしさが、完全に断絶されてしまっていたと思います。そのルールとなっていた戦後の教育基本法ですが、こちらは2006年に戦後初めて大幅に改正されています。

     少なくとも旧法よりは日本人としてのプリンシプルを伝えられるような、そして生涯をかけて実現していけるような教育の実現が可能になったと思います。この新法がいい方向に動いてくれるよう期待したいところですが、、さて。

     ルール作りで、一時的に後塵を拝しても、次の機会を見据えて公益に資するルールを検討していく事を継続していく必要があると思います。その指針になるのは「公益」になるのでしょうが、それを実現していくには、自身のブレないプリンシプルも大事なのかなと。

     そのためにも、日本人としての「プリンシプル」を次世代に伝えていきたいですし、その場の一つとなる「教育」はやはり大事だな、と。その意味でも、日本という国の成りたちや在り様を「大きな物語」として語り継いでいきたいところです。

     イギリスの歴史学者、アーノルド・トインビーはこう言っています。「12~13歳までに民族の神話を学ばなかった民族は、例外なく滅びている」と。公教育の場で「日本の神話」を学ばせようとしない、この一事を持ってしても敗戦利得者と呼ばれるヒトビトの目的とするところがよくわかるかと。

     今の日本は、先の大戦後の日本が参加できずに作られた「ルール」に縛られていると思います、教育しかり、憲法しかり。安倍総理が2006年から言い続けている「戦後レジームからの脱却」、これは「ルール」を作る側に回りましょうと読み替えることもできるのではないかと。

     「ルールの作り方や変更の仕方にも、私たちのプリンシプルを入れ込んでいく」

     対外的にはTPP、内政的には憲法や教育など、制度疲労を起こしているルールは山ほどあるかと思います。勝ちすぎず負けすぎず、バランスを取りながら、正々堂々をルールを作り、潔く守っていくことが、ひいては公益(社会的有用性の発露)にもつながっていくのかなと。

     日本人が、グローバリゼーションと対峙するとはこういうことだ、とのヒントをいただける一冊と感じました、まさしく、今の時代が求めているのではないかと、そんな一冊です。

  • 客観的に見れば非常に独特で珍しい思想や文化を持つ日本人と、
    欧米人の、ルールに対しての考え方の違い等を著者の体験等から分析検証した本。

    表題に釣られて買ったが、読み進めて行くとそれが勝手な思い込みであると判る。


    1章
    日本人、ルール変更をなぜずるいと思うのか。

    1,日本文化の中に存在する行動や戦いに関する美学
    2.欧米とのルールに関する考え方の違い。
    3、ルールとプリンシプルの混同

    ぶっちゃけ勝負より美学を大事にしているのかも‥の点に非常に同意。

    日本人、ルールは他の誰かが作るものだと。


    2章
    1,欧米、ルール作りも戦いに含まれる
    2,その戦い方をずるいと考える
    3,当座は、それを作ったほうが有利に展開できる


    3章
    1,変更側が必ず勝つとは限らない
    2,された側が勝者のケースも
    3,特定に有利な変更は、勝ち過ぎを助長することもある

    この本を読む直前、「超」入門 失敗の本質 鈴木博毅 著 を読んでおり、
    それから考えると
    4章は非常に悪い意味での、型にはまり自己に執着し相手に凌駕される日本人像に思え、
    個人的にはあまり同意せずサラリと流した。

    5章
    ルール作りに関する著者からの提案

    ---------------------------

    その、「超」入門 失敗の本質 鈴木博毅 著 で腑に落ちない部分がこれを読む事で補完され、
    こちら本の日本人的考え(から抜け出せていない部分の理解)が、
    その「失敗の~」で補完つまり相互補完された感じで、

    結果的に非常に為になった。
    理解が上がった。拡がりを得た。

  • オリジナルが12年前、今回の増補改訂版は9年前という事で本書の中「ルール変更」の例題にあげられたその後が更に気になるところです。

    欧米とのルールと捉え方、考え方、作り方についての比較がすべて精神論で語られていたのが残念でした。
    もう少し切り込んだ内容であればと思いましたが、手軽に読めるように「ルール」に焦点を絞った内容にしたのでしょう。
    少し物足りなさは感じましたが。

  • ●1980年代後半、ターボによる圧倒的な強さで連戦連勝していた「HONDA F1」。すると、数年後にはターボが禁止に。はたまた、スキージャンプも原田や船木が活躍し、日本が金メダルをとると「スキー板の長さを身長に合わせる」など日本に不利なルールへすぐに変えられた。当時は日本への嫌がらせだと思っていたが、この本を読むと少しスッキリする。なぜなら、これらのルール変更は、日本人と欧米人との哲学や考え方の違いからくるものだとわかったから。非常にわかりやすく、日本人と欧米人の考え方の違いを教えてくれている。一度でも、スポーツのルールで、嫌な思いをした方は是非この本を読んでみては。でも、やっぱり日本的な哲学のほうがスッキリするなあ。

  • 1998年の長野オリンピックで日本人選手が活躍した後、国際スキー連盟は「日本人に不利になる」ルール改定を行ったと報道されています。しかし本当にそうだったんでしょうか? 上辺しか見ないマスコミはそう報道していますが、国際スキー連盟は何を考えてルール変更を行ったのでしょうか。その変更の結果、どんな効果があったのでしょうか。
    この本ではこのような一見日本叩きに見えるようなルール変更は誰が何を考えて行ったのか、その結果どうなったのかなどの、一般にはあまり知られていない所に切り込んでいきます。ははぁ、、、と思えるところがたくさんあります。
    そして、後から「ははぁ、、、」と思っているだけだとやっぱりダメなんだなぁ、とも思います。
    「ルールは誰か偉い人がどこか遠くで決めている」ものではなく、自分たちで作っていくものなのですね。

  • 組織内ルール作成に携わることになったので読んでみたけど,ちょっと違った。でも「喧嘩をしすぎて全体を壊してしまってはどうにもならない」は全くその通りかなと。法務部・知財部は気をつけなくてはならない。あと,ルールづくりに積極的に携わってみようと思うことが大事らしい。それはやってみたいなとおもった。そして,ルールを定めるときには最初は社益・私益でもいいけど,最後は公益だと。機会があれば手をあげてみたいな。

  • 大半の日本人が「ルールとプリンシパル」を履き違えていることが良く分かる。
    本の内容から若干逸脱するが、そもそも日本人の大半は「ルールは守らないといけない(守らないと村八分になる。村八分が嫌だからこそ(本来倫理的にオカシイなと思うことですらルールだからという理由で)「なぁなぁ」にしている感がある)」。ルールは時流によって変わるべきで、ルールを作った側にとって都合が良いだけで実は大半にとってはネガティブでしかないことは沢山あると思う。ルール以前に、プリンシパル(僕は倫理観や道徳観と解釈するが)を確立できている人であれば、「人として絶対にやってはいけないこと」を踏まえて行動できるはず。極端な例で言えば「人殺しはいけません」ということなどが当てはまろう。

    このプリンシパルすら確率できていない人がルールを守れる訳もなく、実例を挙げるならば、例えば金融機関において絶対にやってはいけないことというのが、顧客の資産を自己の判断に基づき勝手に商いを行うという行為がある。その彼は全国でトップセールスマンだったが、結局(噂ベースでは)そのやってはいけないことをして最終的に解雇されたという(勿論、こんなこと決して公にはならないけれども・・・年に数人はいるしバレずに解雇されずヌクヌクと働いてる人もいることを知っている)。こういうことはルールやコンプライアンス以前に、そもそも人の倫理観としてやってはいけないこと、と分かる筈なのに、エゴの為に自分を律しれずプリンシパルを逸脱して、結果第三者に迷惑をかける(倫理観に反する)ということに繋がる。

    そして、ルールは完璧でもないし必ずしも正解ではないのに多くの日本人はそれが正解だと大きな勘違いをしている。ルールは自分の立ち位置によって、いくらでも解釈の余地がある。結局はプリンシパルに則って判断し行動できるかどうか。

    なんてことを感じた一冊。本の内容自体はイマイチやったかな。

    とまぁ、欧米が押し付けているこのグローバル競争で生き残っていく為には、彼らのマインドを理解してネゴシエーションに負けないようにしないと、いつまでたってもやられっぱなしになるでしょう。

  • ・ルール─ 行動が準拠すべき、または準拠することを要求されるプリンシプル・プリンシプル─ 理性や行動の基礎となる、基本的な真理・法律


    プリンシプルはどちらかというと、個人の考えに基づいて決まるも。ルールは他から強制されるものごと、排他的。合意を形成し作り上げるもの。

    日本人はプリンシプルを大事にするが、ルールはお上が作るものとして我関せずの態度をとる人が多い。
    欧米人と比べて日本人は、自己の中だけで完結してしまい、他者とコミュニケーション取りながら合意を形成することがあまり得意ではないのは、このルールとプリンシプルの関係しているのかなと思いました

  • 親しい友人が”欧米人はルールを自分たちが有利なように変える”といっていたのが耳に残っており、この本を手に取った。規格争いなんてまさにルール決めのように思える。そこまで考えが至らなかったために、日本の企業はかなり多くの機会を損失したのだと思う。著者はルールが変わる事による競争の促進というような事を書いていたけど、ここはまあ奢れる会社はやはりどこかでつぶれるので問題ない気がする。そのうちまた読み直そう。

  • 前提条件、ルールに疑問や意義を挟まない日本人の特質が興味深い。

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著者プロフィール

1956年、東京都生まれ。自動車メーカーにて海外勤務を経たのち、渉外部長、総務部長を務め、現在は社長付。海外では販社開発、国内では政官財界との折衝、リスクマネジメント対応、株主対応などを管轄した。ビジネス研究の傍ら、マーケティングやマネジメントに関する書籍の執筆、欧米の関連書籍の翻訳を行うほか、都内の大学院で教鞭にも立っている。著書には「なぜ欧米人は平気でルールを変えるのか」「日本国憲法はどう生まれたか」(以上はディスカヴァー携書)、「白洲次郎に学ぶビジネスの教科書」(講談社)、翻訳書には「想定外」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、「成功のタネを蒔く人」(幻冬舎)、「ストア・ウォーズ」(同友館)など多数がある。

「2017年 『NO BAGGAGE 心の「荷物」を捨てる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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