沖縄を豊かにしたのはアメリカという真実 (宝島社新書)

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  • 宝島社
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800213617

作品紹介・あらすじ

沖縄県は先の大戦で激しい地上戦が展開された。それから二十七年間、米国の施政権下におかれた。国民はそれを憐れんでいるが、実は、沖縄の近代化は米国によって初めて達成されたのである。戦前の沖縄は亜熱帯特有の感染症が蔓延し、寿命も四十七歳と短命であった。ところが米国政府によるプライマリーケアの定着が奏功して、沖縄返還時には感染症は撲滅され、日本最長寿県八十七歳を達成。ところが現在、沖縄の青壮年の死亡率は全国ワーストワン。それは戦後世代が米国統治時代を忘却した結果ではないだろうか。ここで歴史を振り返り、もう一度、健全で健康な沖縄を取り戻すために惠氏が史実を明かにする。

感想・レビュー・書評

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  • 筆者がテレビに出て、沖縄についての意見を述べている姿をみて読んでみた。

    内容は、元々、環境的には、貧困、医学に対する無理解などの劣悪なところであり、伝染病が元々多い気候の土地でアメリカの尽力で看護学校等が設立され、沖縄の人々が健康がよい状況になったことが前半部分。

    後半部分が、教育、産業、金融等でのアメリカの改革について説明する各章と筆者とケビン・メア氏との対談の形の最終章となっている。

    日本でのマスコミの沖縄報道は、地上戦が行われ悲劇の地であること、現在もアメリカ軍の基地が多いことの2点のみの偏向報道が多い。自立を目指したアメリカ型に対して、補助金漬けにしている日本政府の現在の方針は、健康を損ない、寿命が短くなるなどの弊害も実際に出てきている。

    やはり、物事を判断する時に自分の視点だけで考えるのは危険だと思うことが多い本だった。

  • 私はこの本を読んで、沖縄に関する誤った認識を持っていたことを反省しました。数年前に沖縄県民の平均寿命が全国一位から落ちたことは知っていましたが、かすかに記憶しているその時の解説では、沖縄の食生活が西洋化した(アメリカに感化された)ことが原因という事とそのまま信じていました。

    実際は、戦前に多くの疫病が蔓延していて平均寿命が日本で一番低かったのを、沖縄が米国に支配されている間(沖縄返還まで)に、アメリカ式の看護婦の教育を含めた医療改革で、復帰時には、日本で最高の平均寿命を誇るまでになっていたことを初めて知りました。

    この本には、更に沖縄の産業(製糖業)を育てるために尽力されたオグレスビー氏等の逸話が紹介されています。私の認識の中では、沖縄はアメリカの犠牲になっているというイメージを持っていましたが、実は(少なくとも戦後から沖縄復帰までは)そうでは無いことをこの本を知ったことが大きな収穫でした。

    以下は気になったポイントです。

    ・戦前、沖縄は感染症のデパートで、日本政府は沖縄振興に頭を抱えていた。戦前の沖縄はデフレスパイラルに陥り、県民所得は全国平均の40%、県民寿命は47歳、感染症にかかるとユタに頼って祈願を依頼する前近代社会にあった(p3、4)

    ・平成7年(1995)、それまで23年間連続して長寿県を維持してきた沖縄の男性寿命が26位に、平成22年(2010)には、それまで首位だった女性も3位に転落、男性は30位、特に沖縄青壮年(20-64)の死亡率(10万人あたり)は、男性女性ともにワースト一位となった(p5)

    ・昭和20年6/22、第32司令官牛島中将の自決を持って、日本軍の組織的戦闘は終了した(p28)

    ・戦前、沖縄県民の結核の罹患率は全国平均の2倍、死亡率は4倍であった(p31)

    ・沖縄の医療行政(昭和23年6月)まで診療費は無料、医薬品は米国政府によって無償子宮された(P35)

    ・沖縄の人口が順調に増えているのは、米軍政府により種々の感染症の撲滅対策が奏功したことが第一、特に、マラリア・結核・ハンセン病を撲滅した(P71)

    ・現在でも「沖縄県立病院で臨床研修を終えた」というのはステイタスになっている(P82)

    ・昭和47年、沖縄は本土復帰を迎えるが、看護に関しては日本の法体系が施行されたため、後退を余儀なくされた(P92)

    ・平成3年、コザ看護学校と那覇看護学校が統一されて、県立看護学校が設立、そのとき寮制度も廃止、平成14年には看護学校も閉鎖されて県立看護大学が設立、実習時間は復帰以前の5分の1の1000時間未満となった(P94)

    ・昭和20年9月20日に選挙が行われたが、この時、有史以来初めて女性に参政権が付与され、これは本土より半年早かった(P103)

    ・約600年続いた琉球王国は身分制度が厳しく、90%を形成する農民は集落単位で課税され、また一定年毎に耕作地を移動させられるという原始共産主義体制下にあった、農民は農奴化していて文字の読み書きも一切できなかった(p106)

    ・戦前の沖縄社会で出自や性によってハンデを背負わされた女性たちにとって、米国統治は一種の解放を意味した(p112)

    ・沖縄は161の島嶼(有人島は61)からなり、その領域面積は本州の1.6倍に相当する(p117)

    ・昭和23年に導入したB円(第四次通貨交換)を昭和33年にドルへ変更した、日本国土の資本を沖縄に呼び込むため(p144)

    ・昭和47年に沖縄は日本へ返還されたが、オリオンビールは今に至るまで20%も税が優遇されている、税制による輸入制限である(p151)

    ・アメリカのレスキュー隊が助けた人々は、27年間で一万二千人になるが、沖縄のマスコミはそれを無視して事故ばかり報道する、オスプレイ反対派は東京・大阪からなど全国から集まるが、報道されない賛成派もいる(p188、191)

    2013年12月8日作成

  • 多分テレビで見かけて気になった本。

    第二次世界大戦後の沖縄がアメリカに支配されていた時代の闇と光の、光の部分に焦点をあてている。
    看護師の育成、教育、産業、金融。
    そして、今の沖縄を憂いている。
    中国の脅威は尖閣だけではない。
    補助金。

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著者プロフィール

拓殖大学客員教授、シンクタンク「沖縄・尖閣を守る実行委員会」代表。昭和29(1954)年沖縄コザ市生まれ。昭和53(1978)年防衛大学校管理学専攻コース卒業。海上自衛隊幹部候補生学校、世界一周遠洋航海を経て護衛艦隊勤務。昭和57(1982)年退官。その後、琉球銀行勤務。平成9(1997)年米国国務省プログラムにて国際金融、米国国防戦略等研修。現在、積極的な執筆、講演活動を展開している。著書に『敵兵を救助せよ!――英国兵422名を救助した駆逐艦「雷」工藤艦長』(草思社)、『昭和天皇の艦長 沖縄出身提督漢那憲和の生涯』(産経新聞出版)、『海の武士道DVD BOOK』(育鵬社)、『誰も語れなかった沖縄の真実――新・沖縄ノート』(ワック)、『沖縄が中国になる日』(育鵬社)など

「2013年 『中国が沖縄を奪う日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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