夏目漱石という生き方 (別冊宝島 2424)

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  • Amazon.co.jp ・本 (127ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800250582

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  • 漱石の一生がテーマ別に駆け足で辿れる。

  • ●以下引用

    ただ牛のように、図々しく進んで行くのが、大事です。

    君は自分だけが一人坊っちだと思うかもしれないが、僕も一人坊っちですよ。一人坊っちは崇高なものです『野分』

    私は暗い人世の影を遠慮なくあなたの頭の上に投げかけて上げます。

    漱石も、卒業後に迷走状態に陥ってしまう。(中略)「文学の本質とは何だろうか?」という問いの答えが見つけられなかったのだ。

    「ホトトギス」には発表されたのが『吾輩は猫である』。漱石、この時38歳。ここでようやく、遅咲きの小説家人生がスタートした。

    文学とは何んなものであるか、その概念を根本的に自力で作り上げるより外に、私を救う道はないのだと悟ったのです。(『私の個人主義』)

    漱石は小説を通して強烈な自己批判を行っていたわけだ

    人間の心を弱さのメスでえぐり取り、正体を明らかにしながら、漱石は筆を進めた。だが、鋭いメスを向けた先は、他人の心ではなく、あくまで自分の心だった。つまり、漱石を読むということは、漱石の自己手術を目の前で観察するようなものだ。その壮絶さが、我々の感情を、強く揺り動かすのである。

    たとえ拙くても積極的に表現するよう努力し、それまで言えなかったことがどんどん言えるようになったという

    西洋追従の“他人本位”から自身が価値を判断する“自分本位”へ。この発想の転換により、心の靄は晴れると同時に、文学者として確固たる生き方を手にするようになった

    「大学のような栄誉ある地位を擲って新聞屋になったから驚くと云うならば、やめてもらいたい。(中略)新聞屋が商売ならば、大学屋も商売である」

    仕事の価値は世間が決めるのではない、自分が決めるものなのだ。

    あなたがたは自分の個性が発展できるような場所に尻を落ちつけべく、自分とぴたりと合った仕事を発見するまで邁進しなければ一生の不幸であると。しかし自分がそれだけの個性を尊重し得るように、社会から許されるならば、他人に対してもその個性は認めて、彼らの傾向を尊重するのが理の当然となって来るでしょう『私の個人主義』

    若い後輩を甘やかさない批評をしている

    ★何故に委縮するのである。今日おおいなる作物ができんのは生涯できんという意味にはならない(中略)ただやるだけのやる分のことである

    相手が誰であっても、自分が理解されなかったと思えば落ち込み、それが思い込みだったとわかるやすぐ頭を下げるこの素直さは、漱石が40代後半であったことを考えると驚くべきものといえるだろう

    むやみに人とつながることを慎み、責任を持って付える範囲にとどめる

    英文学を研究する上で、西洋人や先行する批評家の言うことと自分の考えが矛盾すると気が引けていたが、ある時期から自己本位という言葉を手にして以降、自分は強くなったと語っている。(中略)ほかの人間に流されず、自己を貫き通すには、それだけの努力と蓄積が必要だということだ。

    勿論今でも御覧の通りのものしか出来ぬが、しかし当時からくらべるとよほど進歩したものだ。それだから僕は死ぬまで進歩するつもりでいる。(中略)君なども死ぬまで進歩するつもりでやればいいではないか(森田草平宛書簡)

    「数年経って漱石を読み返した時に前回と同じ印象しか持てなければ、それはあなたが大人になっていない証拠だ」

    今の世に神経衰弱にかからぬ奴は金持ちの魯鈍ものか、無教育の無良心の徒か、さらずば二十世紀の軽薄に満足するびょうろく玉に候

    もっとも強い返事をしようと思うときは黙っているに限る。無言は金言である。

    余計なことを言わずに歩行いていれば自然と山の上に出出るさ

    「何だかわからないけれど、その人と一緒にいると何か学べるような気がする」っていう人間的魅力を持っているのが先生なんです

    自分のやり方がいいって、もう何にも疑っていない人っていません?怖いですよ。

    学び続けて自分を変えていくためには、自分を客観的に見つめて、自分を懐疑するしかない。今の自分を懐疑しなかったら、先にはいけない。ティーンエイジャーの頃って、自分に自信がなかったはず。あの感覚で自分を疑えている人は、70歳になろうが80歳になろうが、気持ちが若いんです。

    漱石は徹底的に最後までひとりだったと思います。

    文学と世間一般の道徳や善悪の一致を問いていない

    彼らは自己の心のある部分に、人の見えない結核性の恐ろしいものが潜んでいるのを、仄かに自覚しながら、わざと知らぬ顔に互いと向き合って年を過ごした(門)

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