深山の桜 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

著者 :
  • 宝島社
3.73
  • (15)
  • (20)
  • (20)
  • (4)
  • (1)
本棚登録 : 242
感想 : 26
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (479ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800253422

作品紹介・あらすじ

日本から約一万二千キロ、アフリカ大陸。国際連合南スーダン派遣団の第五次派遣施設隊内では盗難が相次いでいた。定年間近の自衛官・亀尾准陸尉と部下の杉村陸士長が調査に乗り出すが、さらに不可解な事件が連続して発生する。果たして相次ぐ事件は何を意味するのか。日本から特別派遣されてきたオネエの警務官・植木一等陸尉も調査に加わり、事件の謎に挑む。『このミス』大賞優秀賞受賞作!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ジリジリ感。アフリカ大陸の気候というジリジリ感に、人間の想いと行動のギャップを埋められないときのジリジリ感が同調して、人の想いが何倍にも増幅して伝わってくるような気がした。最前線の重み、武器を持つ重みが、良く分かった。

  • 南スーダンへ派遣されている自衛隊。定年間近の亀尾と若い杉村が、自衛隊営舎での紛失騒動を調査する事に。一般人が知る由も無い過酷な生活環境や、官品の取り扱いの厳重さなど、厳しい状況に置かれながらも日々を過ごしている。そして、小銃弾が盗まれた。

  • 南スーダンの自衛隊宿営地で連続する盗難事件を調査するよう命じられた、退官間近の亀尾准陸尉と部下の杉村陸士長。
    日本から特別派遣されてきたオネエの警務官・植木一等陸尉も調査に加わるが謎の脅迫状や小銃弾の紛失という事件が次々と起こり、事態は予想のつかない展開となる…。

    前半は自衛隊内部の階級や独特の習慣や言葉に引っかかることが多く、読み進めるのに苦労しました。
    冗長と思えるほど隊員たちの日常生活や装備などの描写が細かく、それも読みにくい原因かも。
    でも、ディティールが描写されることによってリアルな説得力のある世界が形作られ、現在の自衛隊が抱える問題をより明確に浮き彫りにしていて、物語に奥行きを与えていると感じました。
    描かれる隊員たちの人間関係も日常もかなり緊張感のある厳しいものですが、未知な世界を知ることができて新鮮でした。

    中盤から、オネエ言葉で喋りまくり、物語をガンガンかきまわす植木一尉がかなり目立ってます。
    最初は異色すぎて違和感を感じたのですが、物語の展開がハードになるにつれて、彼の存在がオアシスのように感じられ、ホッとするようになりました~。

    現行の法律や政治が抱える問題や矛盾、現場の隊員たちの矜持についてもわかりやすく描かれ、改めて考えさせられました。
    作者は元自衛官だそうですが、メッセージ性の強い問題提起もちゃんとエンタメに昇華され、完成度の高い作品になっています。

    抒情的なラストシーンは美しすぎて…涙腺がゆるんじゃいました。

  • 世の中は、ほんの一握りのヒーローと
    大多数のクズからできている。
    そのことをまざまざと見せつけられる本(- -

    前半部分、ストーリー的にはあまり進展がなく、
    正直やや冗長な印象を受けた。

    が、そこで細かく描写される「自衛隊員の日常」、
    =一般人にとっての「非日常」が、
    あとからじわじわと効いてくる。

    一応は「犯罪捜査」の話であるが、
    犯罪を「犯す側」の気持ちも嫌と言うほど分かる。
    ...気がする(- -

    誰が悪いのかというと...「現場の目」で見ると
    「事情を真に理解せず勝手なことを言ってる奴ら」
    ということになろう。

    が、それは防衛省の制服組や政治家だけではなく、
    「現場」を理解していない大多数の国民を含む。
    私もあなたも含まれる(- -

    ...そんな「悪い奴ら」ですら、
    いざという時には命がけで守り、助ける。
    それが自衛官というものである(- -

    東日本大震災やら、南スーダンのPKOやら、
    現実に起きたことを絡めて話が進むので、
    誰でもが多かれ少なかれ共感できるものがあろう。

    いつ北朝鮮のミサイルが飛んでくるか分からない今こそ、
    多くの人に読んでいただきたい一冊である(- -

  • 日本から約一万二千キロ、アフリカ大陸。国際連合南スーダン派遣団の第五次派遣施設隊内では盗難が相次いでいた。定年間近の自衛官・亀尾准陸尉と部下の杉村陸士長が調査に乗り出すが、さらに不可解な事件が連続して発生する。果たして相次ぐ事件は何を意味するのか。日本から特別派遣されてきたオネエの警務官・植木一等陸尉も調査に加わり、事件の謎に挑む。『このミス』大賞優秀賞受賞作!

    ようやく読むことができた。いろいろな要素が含まれ、しかもグッとくる結末。今さらながらおすすめ。

  • 前半と読み終えた時の印象がガラッと変わった作品。

    前半は登場人物の多さ、慣れない言葉につまずいて、読み進めるのが少し苦痛だった。ミステリー好きとしては、物足りなさもあったし、自分とあまりにもかけ離れた世界に感情移入が出来ないという点も大きかった。

    でも後半は吸い込まれるように、読むスピードがどんどん加速して、あっという間に読み終えてしまった。社会的な問題も多く盛り込まれていることもあり色々考えさせられたし、はじめは感情移入出来なかった登場人物一人一人に好感すら覚えた。

    ミステリーの賞をとっている事もあり、自分のようにそこが入り口だと、読み進めることに苦痛に感じる方もいると思う。ただ読み終わった時の読了感と印象の違いは清々しいと感想に記しておきたい。

  • 神家正成『深山の桜』宝島社文庫。

    『七四』が文庫化されたのを機会に初作である本作から読んでみようと手にした。

    自衛隊の国連南スーダン共和国派遣を舞台に描かれるミステリー。自衛隊の特殊な世界はやたら詳しく描かれるものの、やたら説明的で、ストーリーのテンポが悪く、今一つ乗り切れなかった。

  • 元陸上自衛官の著者が描く、自衛隊内の窃盗事件を描く。

    舞台は南スーダンに派遣された陸上自衛隊基地内。
    私物の窃盗事件から弾薬の紛失事件へと発展し、それを調査するベテラン隊員と若手隊員の調査を追う。

    アクションは最後以外にほとんどなく、基本的には窃盗事件調査がメイン。

    この本を通して、自衛隊が枝葉末節まで規定するルールと現実を見ない上層部のおべんちゃらに付き合わされ、現場はがんじがらめになっていることがわかる。
    また国民の目を過度に気にすると感じられ、主要な目的外の作業が多すぎると思った。

    こんな枝葉末節にがんじがらめにされてしまうと本当に有事が起きたとき、自衛隊がいかに有能でも、自由迅速に行動する敵に対して、応対行動がとれるのか?と不安になる。。

  • 南スーダン派遣施設隊で起こる事件を題材にしている。

    どうしても、個人的に「ミステリーが苦手(おもしろさがわからない)」性質のせいか、この作品についても謎解き部分に関しては「すごい!」とか、「おもしろい!」といった感想はあまり持てず・・・。


    著者自身が元自衛官ということで、かなり細かい部分がリアルに描かれていると思う。
    ただ、登場人物はちょっとカッコよすぎるかもしれない(笑)


    海外に出ていく自衛隊の「矛盾」をついたストーリーになっている。

  • 植木一等陸尉が登場するまでと登場してから、そして終盤の畳み込むような流れと、息をつくのも忘れて読んでしまいました。そして終盤は泣けて泣けて…
    リアルの中に現れる植木一等陸尉の場面転換力に惚れました。
    映像にするのは難しそうですが、できることなら植木をまったくイメージとかけ離れた玉木宏で見てみたい。

全26件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1969年愛知県生まれ。中学校卒業後、陸上自衛隊少年工科学校(現、高等工科学校)に入校。北海道にて74式戦車の操縦手として勤務。自衛隊を3等陸曹で依願退職。その後、韓国に留学。以降、韓国と関わる仕事に従事。2014年、第13回『このミステリーがすごい!』大賞にて『深山の桜』で優秀賞を受賞。著作に『七四』『赤い白球』『桜と日章』、共著に『伝奇無双「秘宝」 』『幕末暗殺!』がある。

「2023年 『さくらと扇 国を護った二人の姫』 で使われていた紹介文から引用しています。」

神家正成の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×