山と村の怖い話 (宝島社文庫)

著者 :
  • 宝島社
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  • Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800271747

作品紹介・あらすじ

日本の山々や村には、すぐそばに怪異が潜んでいる-。そこに生きる人々や、旅行で訪れた人々への取材によって集められた、数々の怪異の記憶を収録。死んでもなお歩き続けた学生の幽霊「鳳凰三山に消えた学生」、姥捨て山の怪事「秘湯の老婆」、死者の着物を水で濡らす村の習わし「『水かけ着物』に呼ばれる霊」など、実際に起きた話や伝承をまとめた、75篇の怪奇実話集。

感想・レビュー・書評

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  • 民俗学的な話も少しだけあったけど、基本はよくある体験型怪談。途中で頭を切り替えて、内容を検証するつもりで読んだ。

    A. こういう怖い体験をした
    B. 事前に(もしくは事後に)こういう背景や事情があった
    C. AとBは関連がある

    みたいな構成が多いんだけど、冷静に読めばAとBという事実は関係ない。もしくは事実というより、土地の言い伝えのようなものと関連させたり。A、Bの2つの事象はそれぞれ独立していて、その繋がりは、あくまで体験者や話者が主観のなかで関連付けたものでしかない。しかし人間というのはどうしても自分の中でストーリーを作ってそれに合致するように物事と物事を繋げて考えてしまうものなのだ。

    その「繋げてしまいやすい」性質を自覚し、何らかの因果関係があるのか、主観によるストーリー付けに過ぎないのか切り分けて考えるべきだろうし、そのストーリー付けそのものに着目して人間の特性として分析するのも面白いと思う。もしかすると、人がその特性により陥りやすい過ちはどんなものかといった学びに繋げたりできるかもしれない。

    また、「白い顔の女」「白い服の女」が頻出なのも面白い。男性の場合、単に「男」か、「若い男」などかなり抽象的な表現のことが多い。そもそも性別に言及しないか、女性でも単に「女」とのみ書かれていることもあるけれど、なぜか性別は「女性」、色は「白」についての言及が特に多く、この二つがセットになっていることも多い。それ以外の色、例えば「赤い服の女」「金髪の男」などの形容はまず見たことがない。また女性の髪形については必ずと言っていいほどロングヘアで、ショートカットの女性の怪談というのはないわけではないだろうが、ほぼ思い当たらない。実際この本にもショートカットの女性は一度も登場しなかった。

    例外として、山での体験談の場合は服装にきちんと言及していることが多い。「青いジャケットの初老の男性」といった具合に容姿をはっきりと描写する。これは幻覚の可能性もあると思う。よくハンガーノックなどと言われる低血糖のほか、疲労、脱水、睡眠不足などからくる幻覚症状は登山経験者の体験談に非常に多く、発汗や水分の摂りすぎによるミネラル分の不足も意外な落とし穴なのだそうだ。

    山での恐怖体験の多くは、こういった無自覚な幻覚・幻聴に過去の不幸な事故を結び付けてそれらしいストーリーを作ってしまっているのだろうな。

    (Twitterより)

  • 実際の不思議体験ってオチがある方が稀な気がする。誰もいないのに音や声を聞いた、見かけた人影はスっと消えた的な体験話が多く、返って真実味があった。
    何より山小屋の主人に殺されてしまった事件や津山事件、不意に挟まれる現実にあった不幸な事件は他人事に思えずゾゾッ。身近に恐ろしきは山にいる怪物より山や狭い集落に潜む人間の計り知れない心の闇。
    もたげる好奇心を必死に抑えた「温泉宿の秘密」と2歳以下の子を連れて行ってはいけない「幽霊滝」が印象に残る。うっかり行っちゃった日には…夜寝られなくなりそう。

  • 山には人間と獣以外のナニかが確実にいる。
    「温泉宿の秘密」みたいに何かを目撃したことによって従業員の態度が一変するの地味に怖い。
    「神社のキツネ」でキツネ憑きに遭ったシズオくんがその後どうなったのか気になる。森からちゃんと出てきたのかしら。
    「釣りが許されない池」とか子供が悪意なく禁忌破っちゃうタイプとかいたたまれない気持ちになるね。
    「道端の石仏に残されていた因縁」は自業自得。
    庭に飾ると良さそうだからって石仏持って帰っちゃうとか正気か??酔っててもやらんじゃろ...

  • 登山客や山村の人々の身に起きた怪異を集めた短編集。
    なのだが、津山三十人殺しやおいらん淵なども取り扱っているので、タイトルの趣旨からは脱線しがちな内容である。

  • 売れた山の怪談本の劣化コピーというか便乗で、山に少しでも関係あればよいと開き直ったコンセプトで話を掻き集めて、とりあえず本作った感。有名な怪談本のパクリと思えるものもあるし、二つ目の話なんて岡本綺堂の木曽の旅人からだし。

  •  この手の形式の本が好きな事もあるけれど、ものすごく楽しく読ませて戴いた。

     読了1時間、夢中で。

     淡々と並ぶ怪異に、オチも解決もない。ヒーローもいなければ(たまにいるけど)、救いもカタルシスもない。

     でも、夢中になるのは、そこにこそ読み手に委ねられるも『物語』があるからだと思う。

     出来る事なら、もっとたくさん読みたい。

  • なんか、昔を思い出すような
    なんだか中途半端なホラー感。

  • 夜、布団に入って読むと、家鳴りの音が気になっちゃったりして怖くなってよかった。

  • なんだろう なんか小学生の頃に読んだようなテイストのお話が続きます。 
    それだけ私の「怖いもの」への耐性ができてしまったということでしょうか? それともこの数日続く猛暑日のせい?
    滝山城址とおいらん淵の話が収穫かな? 

  • 怖い、というのは人それぞれですからねえ。
    と言っても、怖く感じない話でした。
    これまで、面白いと思った怖い話の数々は、
    ストーリーが怖い、
    そして、表現。
    描写が怖い。
    この本は、ストーリーが怖くない。
    描写が全く怖くない。
    山の怖い話については、どこかの山の避難小屋で
    一人、ランタンかろうそくの明かりの下でも読めるように思いました。
    村の怖い話については、これまであった事件の数々が書かれていますが、これまで、もっと克明な描写で読んだように思います。
    淡々と時間を過ごすには良いのかもしれません。

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著者プロフィール

作家

「2018年 『本当は怖い! 日本のしきたり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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