戦国武将 敗者の子孫たち (歴史新書)

著者 :
  • 洋泉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800300287

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  • 歴史は勝者が作ると言われますから、今でも人気御三家の「信長・秀吉・家康」を題材にした小説も多く作られ彼等の行動や考え方を知ることができます。真実か否かは議論がありますが、勝者については多くの資料で取り上げられているので、彼等に触れることが容易にできると思います。

    一方「敗者」となってしまった人達は、資料が残っていることも少なく、今まで伝えられてきたものだけが彼らの実像のようなイメージがあります。
    この本では、私が興味を持っていた「武田勝頼・今川氏真・石田三成・明智光秀」を始めとして合計7名の武将を取り上げていて、興味深く読むことができました。

    以下は気になったポイントです。

    ・信玄は、生前最後となる三方ヶ原の戦いに際して、寡婦にまで税を課して資金調達を図っていた、このような細々した圧政の延長線上に武田家瓦解があった(p19)

    ・本願寺と婚姻関係のある信玄は、それまでの態度を豹変させて信長包囲網に参加して徳川領地に攻め込んだ、これは武田家にとって致命的な負の遺産であった(p23)

    ・勝頼は信勝(勝頼の子)の陣代(後見役)という立場に過ぎなかった、諏訪家に染まった勝頼よりも、信勝に期待が集まったのは無理もない(p28)

    ・勝頼の血を引く喜連川家は、江戸時代も「御所」を称することを許されていた特別な家(p37)

    ・江戸時代は武田氏の家系は疎かにされていないどころか、家康5男信吉が武田家の名跡を継いでいる(p43)

    ・真田家が東西に分かれたのは、信幸の妻は本田忠勝の娘、信繁は三成の盟友である大谷吉継の娘が妻であったから(p57)

    ・光秀は織田家中で特別な待遇を得ていたが、すべて彼の能力ではなく、本能寺の変の1年前に亡くなった妹「御ツマキ」が信長の重要な女官とされていたせいもある(p78)

    ・秀吉は、日本国土から多くの人民が奴隷として輸出されている事実を黙認できずに、バテレン追放令を発した(p94)

    ・明智光秀の血は、武家から公家へ渡り、さらに紆余曲折をへて天皇家(任孝天皇や孝明天皇)へ入っていった。その後、明治・大正・昭和天皇へ引き継がれている(p108)

    ・徳川家の旧敵である石田三成の血を引いた於降の方は、将軍の子を産むという当時の女性が望める最高の地位の女性となった(p128)

    ・秀吉の子には秀勝と名乗る人物が三名存在する(p146)

    ・秀吉とは別に、一若を通じて信長に仕えた中村出身の「猿」がいた、彼は小者として一若らと共に家中で伝令などを務める仕事を続ける人間であった、秀吉を貧農の子とか言われる逸話の多くは、本来別人である「猿」であると推察される(p157)

    ・現在の皇室には、織田・徳川・豊臣・浅井・明智・石田の血が流れている(p172)

    ・戦国時代は成人した息子は、いつ寝首をかかれるかわからない最も危険な因子である、信康の排除は、義父信長はまったく関係なく、徳川家の内部的な事情である(p177)

    ・今川義元が生きている間は同盟者であった武田信玄は、義元の死をきっかけに、今川の婿である義信を廃嫡して、攻めてきた。頼みの家臣団は次々と離反し決戦さえもできなかった(p206)

    ・天正元年に、信長は氏真が所有している茶道具を買いあげている、氏真は裏切られた武田家よりも、父の仇敵である信長と通じた(p209)

    ・長篠の戦に参加した氏真は、目前に崩壊していく武田軍を見た、家臣の朝比奈泰倫は武田家の重臣を討ち取った(p211)

    ・高家吉良家は4200石でありながら、10万石格の身なりを調える必要があった(p225)

    2013年5月1日作成

著者プロフィール

1959年埼玉県飯能市生まれ。日本家紋研究会会長、家系研究協議会理事、歴史研究家。長年、実父の日本家紋研究会前会長の千鹿野茂とともに全国の家紋蒐集を行う。家紋研究の第一人者として、使用家や分布などを、統計を用いて研究する。大著『家紋大辞典』をはじめ、『家紋歳時記』、『家紋と名字』、『戦国武将 敗者の子孫たち』など著書多数。

「2023年 『神紋でたどる神様と神社のお詣り図鑑』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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