江戸学入門 江戸の理系力

  • 洋泉社
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800303738

作品紹介・あらすじ

日本初のオリジナルの暦、世界最高水準の地図、世界初の全身麻酔手術、エレキテル、からくり…世界をアッと言わせた江戸のチカラの数々!江戸時代の科学技術の実力は世界水準を超えていた!

感想・レビュー・書評

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  • 江戸時代の科学について紹介する本。
    戦国武将も新撰組も登場しない、淡々と事実を記載した内容だが結構エキサイティングだ。
    世界最高水準だったという日本の科学力と、全力で取り組む先人たちにたまらなく惹かれる。

    天文暦学、測量術、医学、数学・和算、人物伝に分けて記述。
    冒頭に作家.冲方丁さんが登場するが、[天地明察]を読まれた方は関連事項がどんどん出てくるので楽しめるかと。
    天文暦学では、西洋天文学の理論を取り入れた「寛政歴(1798年)」が作られるまでの話。
    一行で語ってしまうのは惜しいほどの、エポックメイキングな出来事だ。
    後押ししたのはかの八代将軍吉宗さん。

    測量術では皆さんご存知の「伊能忠敬」が登場する。
    地球の周囲を測る、という目的から蝦夷地に出向いた忠敬だったが、蝦夷地での測量の結果、緯度1度の距離は28.2里であると算出した。
    1里は3,927kmなので、28,2里は約111km。111km×360度=約4万km(!!!)。
    この数値の誤差は0,3%という驚異的に正確なものだったらしい。
    当時としては大変な快挙だったと言える。完成した地図もたくさん出てくる。

    医学で忘れてならないのは杉田玄白と華岡青洲。
    ここは、世界初の全身麻酔手術を成功させた華岡青洲の話を。
    アメリカの歯科医ウィリアム・モートンが全身麻酔手術に成功するのがその42年後というから、やはり青洲はすごかった。
    様々な漢方薬を参照して独自に開発したは良いが、実験によって母親は死亡、妻は失明。
    命がけの手術が行われたのは1804年10月13日だ。
    ためらう青洲に患者は「死んで本望だ」と激励したという。
    これ以降も次々と手術を成功させ、全国から患者が押し寄せたらしい。
    乳がん、膀胱結石、舌がん、重症の痔、口唇裂、多指症、等々。
    青洲はきっと、多くのひとの信頼を集めた名医だったに違いない。

    読んでいて一番楽しかったのは数学・和算の部分。
    識字率も高く、読み書きそろばんも庶民の間で広まってはいたが、もっと驚きなのは数学そのものが「遊び」だったということ。
    ひとりが和算の問題を出すと、別の誰かが解答して新しい問題を提出するというようにリレー形式の娯楽として遊んでいたという。
    更に、数学の新しい問題を編み出すと巨大な絵馬に描いて神社に奉納したというのだ。
    これは「算額」で画像検索できるからちょっと見てみてね。
    後に文化財に指定された賛額も数多い。
    江戸の人びとが複雑な図形問題を楽しんでいたこと、また神社に奉納するという風習も併せ持っていたことに二重に驚く。

    260年間も続いた泰平の世だったから、産業も学問も文化も進んだのかも。
    しかも一部の特権階級のものではなく、庶民にまで広く門戸が開かれていたというのが本当に素晴らしい。お上の力もあるが、むしろ庶民が支えていたといっても良い。
    戦乱の世の中だったら、教育どころではなかっただろう。
    黒船を初めてみて驚いた翌々年には蒸気船を作ってしまったという江戸の人たちの、その科学技術と知的好奇心の高さ。もしかしたら、皆さんの中にも継承されているかもですよ。

    表紙の「万年自鳴鐘(和時計)」だけでなく、たくさんの用具と機器類の画像が掲載されている。まるで芸術品のように美しく、眺めていて飽きない。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      nejidonさん
      仔猫だった時にドラマで、、、
      実在の人物だったと知ったのは、いつだったかなぁ?
      nejidonさん
      仔猫だった時にドラマで、、、
      実在の人物だったと知ったのは、いつだったかなぁ?
      2020/10/07
    • 夜型さん
      nejidonさん、改めましてこんばんは。
      これと関連して、こちらはいかがですか。
      集と断片
      類聚と編纂の日本文化
      https://...
      nejidonさん、改めましてこんばんは。
      これと関連して、こちらはいかがですか。
      集と断片
      類聚と編纂の日本文化
      https://bensei.jp/index.php?main_page=product_book_info&products_id=100346&language=ja
      図書館をぜひ利用してください!
      2020/10/09
    • nejidonさん
      夜型さん。
      これはまた興味深い本ですね!
      「‥集」というのは日本独特の編集法なのですか。
      考えてもみませんでした。
      そこにどんな歴史...
      夜型さん。
      これはまた興味深い本ですね!
      「‥集」というのは日本独特の編集法なのですか。
      考えてもみませんでした。
      そこにどんな歴史があるのでしょうね。
      ぜひ読んでみたいです。ありがとうございます!
      台風がだいぶ反れました。ホッとしているワタクシです。
      2020/10/09
  • 江戸の科学する心『江戸の理系力』 - HONZ
    https://honz.jp/articles/-/40377

    江戸の理系力 / 洋泉社編集部【編】 - 紀伊國屋書店ウェブストア|オンライン書店|本、雑誌の通販、電子書籍ストア
    https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784800303738

  • 長く鎖国の続いた江戸時代、西洋ではその宗教観に沿い世界を司る法則をみつけるべく、科学や数学が発達していたころ、わが国でもそれに負けないくらいの科学や数学が発達していたことは驚きだ。
    まずは江戸時代の天文暦学からはじまり、測量術、医学、数学・和算、そして江戸時代の理系人(科学者・数学者)の紹介と、聞いたことはあるけど案外その詳細については知らないことが結構あって、新鮮である。
    1804年に全身麻酔による手術で成功したというのが、実は世界初の全身麻酔適用例だということには、特に驚きである。

  • 江戸時代には、優秀な理系人たちが多くいました。天文暦学では渋川春海、測量では伊能忠敬、和算では関孝和などです。和算を基礎としながら、密接に関連していた江戸の理系人たち。娯楽の要素を含んでいた和算は、上流階級のみではなく庶民にまで実学として広く浸透していきました。

  • 江戸という時代に、発明によって人びとを楽しませ、生活を便利にし、新たな知識を広めてくれた人がいたということを忘れてはならない。

  • <閲覧スタッフより>
    江戸の科学技術に焦点をあてた一冊。
    有名な測量術や世界初の全身麻酔など、庶民の好奇心から発展した様子が物語風になっていて興味深々。試験前の一夜漬けで終わっていた内容が深まります。
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    所在記号:402.105||エト
    資料番号:20102440
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  • ★2014SIST読書マラソン推薦図書★
    所在:展示架
    資料ID:11400591

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