- Amazon.co.jp ・本 (287ページ)
- / ISBN・EAN: 9784800310149
感想・レビュー・書評
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昨今、城跡探索を題材にした書籍が多く出版されているが、城郭建築について現存するものと、模擬建造物として造られたものを区分して丁寧に触れられているものは意外と少ないように思う。本書は、いわゆる見学ガイドではないが、特に城郭建築に焦点を当て、かつ、現存十二天守のみではなく模擬天守までも含めて包括的に現状把握とその評価がなされている点がユニークだと感じた。
私が幼い時に住んでいた市にも模擬天守が築かれていたが、幼少期には城があったものと勘違いし、長じては偽物かとがっかりしたものであった。
本書を読むことで城郭建築を復興する際のアプローチの違いに理解を深めることができ、城跡見学などをする際にもより理解を深めることができると思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
戦後の天守閣の復興ブームの中で、鉄筋コンクリートで作られた天守閣の寿命が来ている話。建築基準法や文化財保護、費用などの面で、立て直しが難しい。また、最近では木造で、できるだけ忠実に再現した復元天守が作られているが、これも忠実に再現するための資料(設計図、写真、木組み模型、発掘調査等)が不足しており、なかなか難しいらしい。幅広く、天守やお城全体の復元にまつわることを知ることができて、楽しかった。復元できぬまでも、色々な城のCGが広く公開されて、新しい情報が発見されれば、更新されていくようなそんなウェブ上のインフラがあるといいなと思う。
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「日本から城が消える」というのは結構な衝撃でしたが、読んで納得。昭和30〜40年代くらいまでに鉄筋コンクリートで再建された天守が耐用年数をもうすぐ経過するということでした。本書はその観点に基づいて、城や城跡という文化財の保護について書かれています。
耐用年数を迎えるなら新しく建てればいいのではと考えてしまいましたが、事はそう単純でなく、文化財保護に関する法律や建築基準法など、クリアしなければならない制約がいくつもあるようです。
全国各地にある鉄筋コンクリートの天守や櫓はすべて対象になります。城跡としての保存という選択肢もありますが、より文化財の保存や活用に根ざした選択ができるといいなあと感じました。
専門的な知識はないので、寄付などによる資金面の協力しかできなさそうですが、いち城ファンとしてはやはり城がなくなるのは寂しいので、いい形で城のある風景が残ってほしいと思います。
この手のテーマの城の本は他にないと思います。巻末には再建建造物一覧などもついてて興味深い内容でした。