改訂新版 敗者から見た関ヶ原合戦 (歴史新書y 64)

著者 :
  • 洋泉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800310699

感想・レビュー・書評

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  • 合戦の勝敗を決めたのは小早川秀秋の裏切りだと言われるが、この本を読んで同じかそれ以上に吉川広家の動きが影響したと感じた。
    P210にある、南宮山の毛利秀元、安国寺恵瓊らの部隊を動かさないようにとの通告が、合戦前日に家康から吉川広家にあり、この時の起請文は大阪の毛利輝元の了解を得ていたもいうのである。と同時に、栗原山の長宗我部、長束正家も動きを封じられたこととなる。
    何より、南宮山が動かなければ、桃配山の家康を挟撃するという作戦も実現せず、何より毛利輝元擁する豊臣秀頼が出陣しないことが、西軍の士気を落とし、東軍に付いた豊臣系大名たちが秀頼に刃を向けるという意識にはさせず、家康を有利にすることとなった。

    小早川秀秋が早くから家康に内応していたというのも大きいが、直前まで西軍優勢の戦況を見て逡巡していたことを考えると、毛利秀元部隊の出馬があれば西軍に付いたことも考えられないだろうか。その意味でも、毛利の動きを封じた吉川広家の働きが、勝敗に大きく影響したと思う。

    疑問点はP197、西軍は陣地の普請を事前に行っていたにも関わらず、石田、島津、小西、宇喜多という主力部隊の陣跡が、あまり普請されていないこと。ここは敢えて、北国街道を封鎖するため、有利な高所を捨ててでも、前に討って出ようということなのだろうか。

    いずれにしても、この筆者は時分の足で歩き、目で見た地形などから丁寧に当時を読み解こうとするので、分かりやすくおもしろい。

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著者プロフィール

歴史作家。戦国期の歴史の現場を精力的に踏査し、現場からの視点で歴史の定説を見直す作業をすすめている。主な著書に「真説・川中島合戦」「真説・千房の一族真田三代」など

「2017年 『天秀尼の生涯 豊臣家最後の姫』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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