吉原で生きる

著者 :
  • 彩図社
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784801302594

感想・レビュー・書評

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  • 関東の風俗街で真っ先に名前があがるのが「吉原」
    その吉原に関わる人々をクローズアップしながら
    吉原の歴史や人々の人生、これからの吉原を描いたルポ
    ソープランド嬢(高級店、大衆店、格安店)、人気定食店の女将、カリスマ風俗講習師、ソープ店店長、ボーイ、吉原の喫茶店の経営者、タクシー運転手、自治会長、写真家、風俗客とまあ取材対象者は幅広い。

    この本の著者は丁寧に吉原に関わる人々をインタビューしているのがすごい。(特にヘンな思い込みなしで…っていうのが!)

    昔の「吉原で働く嬢は別格」という話とか
    嬢の仕事ぶりの変遷話もイマドキのワカモンのワークスタイルに通じるものがあってなかなか興味深かった。
    仕事に対する考え方って何の仕事をするにも共通なんだな~。

    あと、印象的だったのが写真家の樹水駿さんの話
    …メディアは伝えたいことだけを伝え、読者は信じたい内容だけを信じる。真実を捻じ曲げて伝える「オルタナティブ・ファクト」なるものがまかり通り…
    (つまり、スポンサーに遠慮して情報を流すあまり、その結果ウソだらけの情報になるという話。)
    あ~これってホントそう思う。

    さてさて…難しい話は置いといて…
    これからの吉原はどうなるのか?
    東京オリンピック(ってホントに開催されるのかしら?)の規制が厳しくなる中、風俗よりもネットという風潮、お金の使い方が変わっていく若者、そして街の住宅街化…

    昭和から令和
    吉原という町はどうなっていくのか

    風俗というとマイナスの話が多い中、
    印象的だったのは「吉原で救われた」という女性の話
    昔も今も駆け込み寺的な存在だったという吉原
    その存在は「ただの風俗街」ではなく
    やはり多面的で深い。

  • 吉原で働いていた元ソープ嬢、店長、タクシードライバー、町内会の人・・・などなど、吉原にかかわる人々のインタビューを中心にまとめられています。

    大賑わいだった過去の吉原、そして衰退してゆく現在の吉原の中で生きてゆ人々を垣間見た気がしました。

    遊郭だったころから現在まで、何人の女性がそこで男たちを受け入れて生きてきたのか分からないけれど...そこで逞しく生きる女性の強さを感じました。

    1つ少し残念だったのは、現役の嬢のお話が聞ければもっとよかったな~と思いました。

  • 吉原のソープ嬢、店長、ボーイ、喫茶店のママ、風俗嬢専門のカメラマン、風俗情報専門サイト運営者、タクシーの運転手、吉原町内会長等々、吉原の内外で働く人のインタビューを通じ、吉原の今昔、そして未来を展望した本。
    今まで、ソープ嬢や、ソープランド経営者等、吉原内部で働いている人に焦点を当てた本は読んだことがあったが、内部だけでなく、吉原に関わりはあるものの外部の人たちへのインタビューは読んだことがなかったので、両方の視点からとらえた吉原像が浮かび上がる本書は画期的だ。
    2020東京オリンピック開催に伴う、浄化運動や若者の性風俗に対する淡泊化等、吉原を取り巻く状況は楽観できないものであることが本書を通じてよくわかった。

  • 吉原は日本を代表する歓楽街。「江戸時代から続く遊郭の歴史に裏打ちされた伝統と格式への畏怖、日本最大のソープランド街であり日本の風俗文化の中心地への憧れとトキメキ」というイメージが吉原にあります。本書は「全国風俗リンクセンター」を運営する著者が、ソープ嬢、店長、ボーイ、カメラマン、風俗情報サイトなどの業界関係者のほかに、「喫茶店」のママ、タクシー運転手、町内会の幹部など、吉原で生きる幅広い職種の人たちへのインタビューをもとにした地域ルポルタージュです。

    今年62歳になりますが、ソープランドに行ったことは正直言ってありません(キッパリ)。ただ、ソープランドを含む風俗全般には興味があります。一応、ヘルスとソープの違いは存じ上げております。本書は文化人類学を研究する友人の勧めにより、若干のスケベ心から読み始めましたが、非常に真面目で良心的なルポルタージュでした。

    この本を読んで感じたのはお金の大切さと、お金を扱う心の複雑さ。売春で手に入れた大金の行方、大金を持って吉原に行くお客の行動と心理です。

    (30歳の現役ソープ嬢)
    「父の入院以来、ソープで働くまでの私は本当にお金がなくて(中略)吉原に来て初めてお給料もらった時、やっと呼吸ができたと思いました。1万円札を握った瞬間に生きた心地と言うものを感じたんです。私は吉原の初日にそれを実感したんですよ」

    (元某高級店のナンバーワンソープ嬢)
    -吉原にいらっしゃった時は月にどれぐらい稼いでいたんですか?
    「片手かな。500万円くらいあったんじゃないかな。(中略)あんなにお金がいっぱいあったのに、なんで今はないんだろう。当時は何でも欲しいいんだもんで買っちゃっていたし、買わないと頑張れなかった。お金ってあると安心しちゃってダメなんです。なくならないと焦らないから働く気が起きない。仕事を続けるのは大変でした」

    (元ソープ嬢の喫茶店経営者)
    「『あー、よかった。さっぱりした』って帰っていく男性の何ともいえないみたいな顔が1番好きなんです。ソープの代金の65,000円とか80,000円って住宅ローンの金額ですよ。それを男性はたった2時間に費やすんです。だから『よかった』って言う男性の一言で私は報われるんです。でも、最近は帰っていくお客様が肩を落としていらっしゃることが多い。それが1番切ないです」

    上記のインタビューで、不遇の中で必要に迫られて始めた「売春」そのものが充足感を伴った「仕事」になっていくことを読者は知ることができます。そして、その「仕事」をさらに充実させるためには、どんなことに人々が苦心しているのかも読み取れます。

    本書は女性だけでなく、吉原で働く男性にもスポットをあてます。

    (スロットのプロから転職した大衆店の店長)
    -将来の夢はありますか?
    「いっぱいあるよ(笑)。あと10年で60歳近くになるから(中略)50代半ばくらいで一区切りつけたいと思っている。その後は幹部の1人としてこの会社に残っていられたら最高だと思うけどね」

    吉原で生きる14人の人々のインタビューを通じて見えてくるのは、売春とは何かという表面的なものではなく、「仕事とは何か?お金とは何か?」ということ。また、売春という超濃厚接触ビジネスにおいて、コミュニケーションのヒントも紹介されています。そして、人気嬢になるためには美貌よりも一種のコミュニケーション能力と仕事に対するひたむきさです。これは人生全般に言えることです。

    めちゃくちゃ面白いルポルタージュ。お勧めです。なお、吉原で遊びたくなるような類の本ではありませんので、男女問わず楽しめると思います。

  • 吉原に関わるカメラマン、講師、喫茶店、タクシー運転手、客、情報誌、ソープ嬢へのインタビュー。タクシー運転手がホリエモンを乗せたと語ってる。喫茶店は元ソープ嬢が働く。過去は制服を全員来ていたとか奈美悦子の映画とか興味が湧く。

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著者プロフィール

1964年2月23日生まれ。東大阪市出身、岡山県井原市在住。神奈川歯科大学中退。
広告代理店『全国風俗リンクセンター』を運営。ネットラジオ局『レディオ与一』『淫らなラジオ 淫らじ』の2局で局長を務め、それぞれ『ソサエティサイエンスジャーナル』『フーゾクリンクラジオ』のパーソナリティを務める。ライターとしては雑誌『俺の旅』(ミリオン出版)に記事を執筆。著書に『風俗嬢のホンネ』『もっと風俗嬢のホンネ』『風俗嬢たちのリアル』(いずれも彩図社)がある。ビジネスマン、中高年の男性のみならず、一般社会の女性読者からも支持を受けている。

「2015年 『ベテラン風俗ライターが明かす フーゾク業界のぶっちゃけ話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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