超訳 君主論―マキャベリに学ぶ帝王学―

著者 :
  • 彩図社
3.50
  • (1)
  • (5)
  • (3)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 56
感想 : 5
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784801302952

作品紹介・あらすじ

世界最古にして、最強のビジネス書を全文超訳。「経営者の聖書」を読んで、明日に勝て!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 【感想】
    決して「超訳」ではない。
    マキャベリの君主論をモチーフにした、「この人なりの君主論」って感じだった。
    この本だけでは「君主論」にどのような事が書いてあるのか一切わからないかな。
    せめて、もっとたくさん引用文がほしかった。

    という具合に、「君主論」を謳う書物としては今一つな印象だったが、肝心の中身は決して悪くなかった。
    「帝王学のバイブル」として、リーダーがどういう思考回路でいるべきかという要点やノウハウが本著にはまとめられていたように思う。

    要点として一つ、「権力を維持するためには、信義に欠けようと冷酷であろうと、非人間的に行動しなければならない時がある」という事が挙げられる。
    やはり物事を自分の思い通りに進め、統制をはかるためには「アメとムチ」が必要で、リーダーシップを発揮するためには「畏怖の対象」であるべきだ。
    これは生ぬるい現代においても、ある程度は必要不可欠な要素ではないかなと読んでいて思った。
    (勿論、やりすぎると一発退場だが・・・・)

    あと、成功の二つの要因である「ヴィルトゥ」と「フォルトゥナ」という要素は、リーダーに限らずどのパーソンにも理解しておかなければならない重要事項だと思う。
    作中にある、この2点。
    「成功をできるだけ他人に依存せず、自分の力量に頼る事。しかしそうしながらも、不確定要素の役割を決して過小評価せず、失敗をあまり気にしない事。そういう両輪の姿勢が成功のために要求されるのである。」
    「失敗の可能性を認めて、試行錯誤するしかない。サイコロを多く投げた方が、成功する回数は必然的に多くなるのだから。」

    人事を尽くして天命を待つ。そういったスタンスでチャレンジし続ける事が大切なんだなーと読んでいて思いました。


    【内容まとめ】
    0.「帝王学のバイブル」
    君主が知っておくべき統治の技術や、成功する組織を作る秘訣や、敵に勝つための戦略を教えてくれる。

    1.君主は善悪を兼備せよ。
    君主は権力を維持するためには、信義に欠けようと冷酷であろうと、非人間的に行動しなければならない時がある。
    できるなら善良に行動すべきだが、必要に応じて悪行を犯すこともできなければならない。
    また、恐怖の対象になっても、憎悪の対象になってはいけない。
    尊敬されるために恐れられる必要があるが、それは憎悪の対象になることとは違う。

    2.君主は理想だけを追い求めるな
    仕方がない場合であれば、悪事を働くことを躊躇すべきではない。
    一見善行に見える行動が君主を破滅に導くこともあるし、一見悪行に見える行動が結果的には君主の権力を強化し、国に繁栄をもたらすこともある。

    3.ローマ帝国を苦しめた名将ハンニバル
    ハンニバルの非人間的なほどの残忍さが、彼を恐れと尊敬の対象にした。
    リーダーは度々、やむを得ず冷たい選択をしなければならない時がある。
    そんな時、個人的な感情に左右されず、常に冷静な判断力を堅持できるリーダーが勝利する。

    4.君主が避けなければならない二つのことは、「憎悪されること」と「軽蔑されること」。
    ほとんどの人は、財産と名誉を奪われない限り、君主に恨みを持つとなく満足して暮らすため、そう難しいことではない。
    君主はただ、少数の野心ある者たちをよく管理すればいいのだ。

    5.「ヴィルトゥ(実力)」と「フォルトゥナ(運命)」
    ヴィルトゥ(実力):自分がコントロールできる内的要素。つまり能力や才能、努力。
    フォルトゥナ(運命):自分がコントロールできる要素以外のもの、つまり外的要素。

    ・成功の二つの要因である「ヴィルトゥとフォルトゥナ」
    →自らの力を使う方法と、他人の力を借りる方法。
    ある程度のフォルトゥナは、実力次第で変えることができる。
    フォルトゥナは不確実なものであるため、できるだけヴィルトゥに依存するのが賢明な戦略である。

    6.他人の約束を過信する君主は没落する。
    そもそも人間は恩知らずで、気まぐれで、狡猾で、危険を避けるくせに欲には目がない。窮地に陥れば、しっぽを巻いて逃げてしまうものだ。
    人の忠誠心や約束を鵜呑みにして、いざという時のための準備を怠った君主は、自分の没落を自ら招いてしまう。
    「他人も自分と同じく信用を重視してくれる。」と錯覚してはいけない。

    7.イギリスの主たる民族である「アングロサクソン」について
    もともとイギリス南部には「ケルト族」がローマ帝国の支配の下、平和に暮らしていた。
    しかし帝国の没落後、ローマ軍がイギリスから撤収すると、北部スコットランドに住んでいた民族が南部侵略を開始した。
    自分たちを保護する軍がいなくなったケルト族は、海の向こう側に住んでいた戦闘民族サクソン人に選択の余地なく援軍要請したが、サクソン人は逆にケルト人を駆逐し、そこに住むようになった。
    (その後、サクソン人の隣に住んでいた野蛮人・アングル人たちもイギリスに移住してきた。)
    このように、援軍に依存したケルト族に代わってイギリスに居座ったのが、アングロサクソン人というわけだ。

    8.外的要素(フォルトゥナ、運)と内的要素(ヴィルトゥ、実力)
    どちらに偏っても成功しないものだ。
    失敗の可能性を認めて、試行錯誤するしかない。サイコロを多く投げた方が、成功する回数は必然的に多くなるのだから。

    結論として、成功をできるだけ他人に依存せず、自分の力量に頼る事。
    しかしそうしながらも、不確定要素の役割を決して過小評価せず、失敗をあまり気にしない事。
    そういう両輪の姿勢が成功のために要求されるのである。

    9.問題点は早期に発見、解決せよ。
    すぐに混乱を鎮圧すれば簡単に解決できた内乱を、放置して拡大した後に解決しようとすれば非常に難しくなる。
    病気と同じで、初期症状の診断は難しいが治療は容易いものだ。
    将来起こるかもしれない問題を予測し、その小さな兆しが見えた時に素早く解決すること。



    【引用】
    快適な社会生活を送るためにも、「リーダーならどう振る舞うべきなのか」を理解する必要がある。
    「君主論」は西洋の「孫子の兵法」とも呼ばれている本で、君主が知っておくべき統治の技術や、成功する組織を作る秘訣や、敵に勝つための戦略を教えてくれる。
    「帝王学のバイブル」である。


    p20
    ・君主は理想だけを追い求めるな
    あらゆる美徳を備えた理想的な君主がいたとしたら、それはもちろん褒められるべきだが、現実的にはそれは不可能だ。
    仕方がない場合であれば、悪事を働くことを躊躇すべきではない。
    一見善行に見える行動が君主を破滅に導くこともあるし、一見悪行に見える行動が結果的には君主の権力を強化し、国に繁栄をもたらすこともある。

    立派な理想に固執するリーダーが、組織の生存を危うくすることもある。
    未来の理想も大切だが、今の生存もまた大切なのである。


    ・リーダーは冷酷な面を持て。
    君主が軍を率いる時は、冷酷だという評判を気にしてはいけない。
    なぜなら兵士たちが君主を恐れなければ、軍隊の結束と秩序が成り立たないからだ。

    ローマ帝国を苦しめた名将ハンニバル
    ハンニバルの非人間的なほどの残忍さが、彼を恐れと尊敬の対象にした。
    もし彼が冷酷さを欠いていたとしたら、他の優れた能力もあれほど発揮されることはなかった。

    リーダーは度々、やむを得ず冷たい選択をしなければならない時がある。
    そんな時、個人的な感情に左右されず、常に冷静な判断力を堅持できるリーダーが勝利する。


    p25
    ・囚人のジレンマ
    「個々にとっての最適な選択が、全体としての最適な選択とはならない。」

    共謀して罪を犯した2人を別々の部屋に収監。
    ①2人とも黙秘したら2人とも懲役1年
    ②2人とも自白したら2人とも懲役3年
    ③2人の中で1人だけが自白すれば自白した者のみを自由にし、もう一方を懲役12年


    p34
    ・君主が避けなければならない二つのこと
    「憎悪されること」と「軽蔑されること」。

    君主に限らず誰もが避けるべきことである。
    企業にしろ個人にしろ、憎悪と軽蔑を買うのは没落の原因となる。


    p36
    ・君主が軽蔑されないためには
    軽蔑されるのは、彼の気が変わりやすく、軽薄で、怠惰で、心が狭く、優柔不断な人物だと見なされる場合である。
    君主はいつも決断力のある偉大な人物に見えるために努力しなければならない。


    p38
    ・君主が憎悪されないためには
    君主が憎悪されるとすれば、自分の強欲で他人に被害を与えての事だ。
    ほとんどの人は、財産と名誉を奪われない限り、君主に恨みを持つとなく満足して暮らすため、そう難しいことではない。
    君主はただ、少数の野心ある者たちをよく管理すればいいのだ。


    p44
    ・嫌な仕事は押しつけろ。
    賢い君主は、嫌われ役は他人に任せて、恩を売るときは自分が引き受ける。


    p46
    ・リーダーは、部下の富の創出を助ける存在である。
    リーダーは直接働くわけではない。実際に富(=利益)を創出するのは、個々の構成員である。
    良いリーダーとは、構成員の活力や意欲を高め、富の創出を手伝える人の事である。
    当たり前のことだが、働く意欲を低下させる上司にならないことは、人の上に立つ最低限の条件と言って良い。


    p51
    ・「ヴィルトゥ」と「フォルトゥナ」
    ヴィルトゥ(実力)
    →自分がコントロールできる内的要素。つまり能力や才能、努力。
    フォルトゥナ(運命)
    →自分がコントロールできる要素以外のもの、つまり外的要素。

    ポーカーをするとして、手札の良し悪しを責めず、勝てる戦略を考えなければならない。


    p53
    ・成功の二つの要因である「ヴィルトゥとフォルトゥナ」
    →自らの力を使う方法と、他人の力を借りる方法。

    ある程度のフォルトゥナは、実力次第で変えることができる。
    フォルトゥナは不確実なものであるため、できるだけヴィルトゥに依存するのが賢明な戦略である。


    p57
    ・他人の約束を過信する君主は没落する。
    そもそも人間は恩知らずで、気まぐれで、狡猾で、危険を避けるくせに欲には目がない。
    窮地に陥れば、しっぽを巻いて逃げてしまうものだ。
    人の忠誠心や約束を鵜呑みにして、いざという時のための準備を怠った君主は、自分の没落を自ら招いてしまう。

    「他人も自分と同じく信用を重視してくれる。」と錯覚してはいけない。


    p61
    ・賢明な君主は、他人の武力を借りない。
    国の基礎は、良い制度と良い軍隊である。
    良い軍隊とは、傭兵などを使わない、自国民で編成された自国軍である。
    傭兵は報酬目当てのため、忠誠心もなく平気で裏切るものである。

    会社や自身の核心部分は決してアウトソーシングしてはいけない!


    p64
    ・援軍に依存すれば自滅する。
    援軍は傭兵よりも無益な上に、非常に危険な存在である。
    彼らが忠誠を誓っているのはあなたではなく、別の誰かなのである。


    p65
    ・イギリスの主たる民族である「アングロサクソン」
    もともとイギリス南部にはケルト族がローマ帝国の支配の下、平和に暮らしていた。
    しかし帝国の没落後、ローマ軍がイギリスから撤収すると、北部スコットランドに住んでいた民族が南部侵略を開始した。
    自分たちを保護する軍がいなくなったケルト族は、海の向こう側に住んでいた戦闘民族サクソン人に選択の余地なく援軍要請したが、サクソン人は逆にケルト人を駆逐し、そこに住むようになった。
    (その後、サクソン人の隣に住んでいた野蛮人・アングル人たちもイギリスに移住してきた。)

    このように、援軍に依存したケルト族に代わってイギリスに居座ったのが、アングロサクソン人というわけだ。


    p71
    ・外的要素(フォルトゥナ、運)と内的要素(ヴィルトゥ、実力)
    どちらに偏っても成功しないものだ。
    失敗の可能性を認めて、試行錯誤するしかない。サイコロを多く投げた方が、成功する回数は必然的に多くなるのだから。

    結論として、成功をできるだけ他人に依存せず、自分の力量に頼る事。
    しかしそうしながらも、不確定要素の役割を決して過小評価せず、失敗をあまり気にしない事。
    そういう両輪の姿勢が成功のために要求されるのである。


    p75
    ・内部の敵から身を守る方法
    君主が反逆の陰謀から身を守る一番の方法は、大衆の支持を受けることである。
    反逆者は大衆の怒りを買うことを恐れ、たくらみを躊躇せざるを得なくなる。
    賢明な君主は、大衆の支持を受けるためにいつも努力し、「憎悪と軽蔑」を避ける行動を取る。


    p80
    ・有力者の支持より民衆の支持を得よ。
    君主になる方法として、貴族の支持と民衆の支持を受けることの二つが挙げられる。
    貴族たちが望むのは、民衆から富を搾取して欲望を満たすことだが、これを許容すれば民衆の恨みを買う。


    p82
    ・君主が大衆の支持を受ける方法
    民衆が願うのは、ただ「抑圧されないこと」の一点のみ。

    1.業務に集中できるよう支援すること
    2.ストレスが多い職場であれば、否定的な感情を減らす雰囲気を創り出すこと
    3.楽観主義を広め、肯定的な考えに誘導すること

    また、「成功体験」をもたらすことも必須である。
    社員は、自分の仕事が社会的に意味があり、成功していると感じると、強要せずとも自分から一生懸命に働くようになる。


    p93
    ・君主が権力を維持する方法
    1.圧倒的多数から支持を受けること。
    →常に率先して組織のために動く事で得られる。

    2.野望のある人を牽制すること。
    →多数からの支持を得れば簡単に牽制できる。

    3.権威だけではなく、説得力で統率すること。
    →人心を得ることが何より必須!

    4.側近の忠誠心を確保すること。
    →優秀な右腕が現状に満足し、保全したいと思うくらいに優遇すること。

    5.熱烈なファンをつくること。

    6.組織内部の利害関係に注意を払うこと。


    p100
    ・君主は善悪を兼備せよ。
    君主は権力を維持するためには、信義に欠けようと冷酷であろうと、非人間的に行動しなければならない時がある。
    できるなら善良に行動すべきだが、必要に応じて悪行を犯すこともできなければならない。


    p104
    ・恐怖の対象になっても、憎悪の対象になってはいけない。
    尊敬されるために恐れられる必要があるが、それは憎悪の対象になることとは違う。


    p120
    ・未来に備えることがリーダーの務めである。
    常に本番を想定している日常を送る事で、どんな状況でも対処できるようになる。
    平和な時も、いつも戦術を考える。
    友人と原野をぶらついていても、常に戦いをシミュレーションし、疑問をぶつけて議論を深める。


    p124
    ・問題点は早期に発見、解決せよ。
    すぐに混乱を鎮圧すれば簡単に解決できた内乱を、放置して拡大した後に解決しようとすれば非常に難しくなる。
    病気と同じで、初期症状の診断は難しいが治療は容易いものだ。
    将来起こるかもしれない問題を予測し、その小さな兆しが見えた時に素早く解決すること。


    p205
    ・自分の状況に合った先例を参考にすること。
    ・いつも柔軟に振る舞うことで、外部の状況に逆らうのではなく、それを活用すること。
    ・どんな状況も、努力次第で運命を変えられると信じる事。

  • 君主論を例つきでわかりやすく解説してくれている本。

  • audibleで読了
    もちろん君主論自体を読んだことが無いが、現在の実例に当てはめて説明してあるのでわかりやすい。聖人君子的な考え方だけでは無いことも書いてあるところが他の本と違うと感じた。

  • オーディブルで鑑賞。
    上司としてどう振る舞うべきか、どう支配すべきかという点で、孫子の兵法に近いものを感じた。
    超訳なので原書とは構成や例が違い、きっと印象も全く異なると思うが、エッセンスを知ることができてよかった。
    これを読んだおかげで、次はもう少し深掘った解説書など読めるかもしれない。

  • リーダーは部下の富の創出を助ける存在である

    やってはならない上司
    1.意図的に部下のプライドを傷つける上司
    2.部下の感情に無頓着な上司
    3.信頼できない上司

全5件中 1 - 5件を表示

著者プロフィール

 2000年KAIST(国立韓国科学技術院)大学院卒(工学修士)。ゲーム製作、インスタレーションアートなど、様々なプロジェクトの経験から、組織作り・リーダーシップを研究するようになり、ビジネス・リーダーシップ関連の著作を多数執筆。
 主な著書に『超訳 孫子の兵法』『超訳 君主論』『超訳 論語』『超訳 アランの幸福論』(小社)、『1日ごとに差が開く 天才たちのライフハック』(すばる舎)などがある。

「2022年 『図解 超訳 資本論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

許成準の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×