思い出の記

著者 :
  • 青空文庫POD
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  • Amazon.co.jp ・本 (64ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784802020480

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  • 小泉八雲の妻である小泉節子が思い出を語ったエッセイ。
    小泉八雲は妻のことを「ママさん」と呼び、2人の仲睦まじい様子がよくわかる。
    小泉八雲はこだわりが強く、生活様式には和風を好み、洋風のものは受け付けず、正式な場にモーニングを着させていくのに苦労したことや、家も日本風を好み、しかし紹介された屋敷があまりに気味が悪かったため断ると、後からそこが化物屋敷と噂されていることを知り、住みたかったと後々まで残念がられたらしい。
    普段は朗らかで冗談を言ったり子煩悩であったが、仕事をしている間はとても気難しく神経質になり、箪笥を開け閉めする音にも過敏に反応するため、できるだけ音を立てずに過ごしていたことなどが書かれている。
    読んでいくうちに、これは並大抵の女性では夫婦としてやっていけないだろうと感じたが、そこは西洋に比べまだまだ男性につかえるのが当然とされる時代、献身的に尽くす小泉節子は小泉八雲にとって理想的な妻だったよう。
    とは言え、男尊女卑的な関係ではなく、小泉八雲は旅行に行き妻と離れてしまうと、寂しくて早く会いたいととても率直に気持ちを表し、愛情表現豊かな手紙を送っている。
    小泉八雲は日本に憧れ、初めの頃はこここそが理想郷と感じたらしいが、長く住むうちにその思いは打ち砕かれ、失望すらしている様子が書かれている。もともと一つ所にとどまらず旅を重ねてきた小泉八雲が、それでも日本の地で生を終えたのは小泉節子がいてこそだったと思われる。
    2人が出会っていなければ、おそらく理想を求めて別の地へと旅立っていたであろうし、怪談話もなかっただろう。
    最後は心臓の病だったのか、自分の死期を静かに悟り、そのことを妻に告げてから、そのまま旅立っていったよう。
    お互いを思いやり、深い愛情のもと寄り添いながら人生を送った2人に憧れる。

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