生物界をつくった微生物

  • 築地書館
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  • Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784806715030

作品紹介・あらすじ

DNAの大部分はウィルス由来。
植物の葉緑体はバクテリア。
生きものは、微生物でできている!

 何世紀もの間、我々人類は自分が目にした動物や植物をもとにして、生物の世界を描いてきた。顕微鏡が微生物の隠れた世界を垣間見せてくれたが、微生物世界の真の大きさとその重要性に光が当てられたのは、ここ10年ばかりのことである。
 人体、樹木、海水や海底の泥、土壌や湖沼や河川、大気などのすべてが、微生物に満ちあふれている。しかも、その活動は地球の歴史とともに、生物圏を形作り、維持するのに必要不可欠なものなのだ。微生物は、我々自身にとっても必須の存在であり、食べ物を消化するという点で膨大な数の微生物に頼っているのだ。
 著者のニコラス・マネーは、地球上の生物に対する考え方を、ひっくり返さなければならないと説く。葉緑体からミトコンドリアまで、生物界は微生物の集合体であり、動物や植物は、微生物が支配する生物界のほんの一部にすぎないのだ。
 著者は単細胞の原核生物や藻類、菌類、バクテリア、古細菌、ウイルスなど、その際立った働きを紹介しながら、我々を驚くべき生物の世界へ導いてくれる。また、繊細で美しい植物プランクトンから、空気中の菌の胞子や土の中にいる空中窒素固定細菌、海底の黒い噴出孔にくらす極限環境微生物の古細菌に至るまで、地球上のあらゆる場所に微生物が満ちあふれていることも教えてくれる。
肉眼では見えない小さな生物の大きな世界へ想像の翼をひろげよう。

感想・レビュー・書評

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  • 生物学、科学、厳密性が問われる。
    各章の書き出しは具体的な記述ではなく、
    情景やイメージの表現から入る。

    書き出しが詩的表現から入り、具体的な例に導いていく。
    一見、関係ない題材から問題の核心に迫っていく。

    動物や植物はあくまでも、
    生物界を構築する上でほんの一部分であり、
    微生物こそが生物界を構築する主役であると著者は説く。
    厳密さが求められる科学の世界とは裏腹に、
    著者の語り口はまるで、
    詩を読んでいくかの如く軽快な語り口で読者をいざなうも、
    最終的には広くそして、深く生物学の大きな世界へいざなってくれる。
    例えば、
    本書の序章は以下の文から始まる。

    《さて、今回は「動物や植物は生物全体の中で最も小さなグループだ」という、
    ちょっと風変わりな見方で話を進めてみよう。
    この一見突飛な考え方をわかりやすくするには、
    たとえ話が役に立つかもしれない。それは亡くなった家主がつけていたカツラのことなのだ。》P1

    「動物や植物は生物全体の中で最も小さなグループだ」という主張は分かるのだが、
    たとえ話が「亡くなった家主がつけていたカツラ」のことだと言われても、
    それが何につながっているのだろうか?見当もつかない。
    その後、以下のように文章は展開していく。

    《カツラだけからランディーのことをわかろうとするのは馬鹿げている。
    その通期のよい鳥の巣のようなカツラをいくら調べても、誰も彼が先の大戦の英雄で、
    裸のパラグライダー乗りとして有名だったことなどわかりもしない。
    同じような見当違いのとらえ方が、現代生物学の弱点にもなっているのだ。》P1

    「家主のカツラ」の例えが一転して、いつの間にか現代生物学の弱点という壮大なテーマに発展している。
    人類や植物はあくまでも進化の上では後発のグループ群であって、
    著者が言う所の「部屋の中のアメーバ」が生物学における本来の主役にも関わらず、
    忘れられているか、ほとんど無視されている事を著者は嘆く。

    軽妙な語り口も本書の魅力の一つだが、
    やはり科学書である以上、科学的厳密性、
    生物界についての深い洞察についても触れずにはいられない。
    例えば、「クリプトモナス」というのは、入れ子人形の如く、
    多くの生物が融合してできた複雑な構造の生物の例として取り上げられているが、
    それだけではない更に秘密の部分を持っていると著者は述べている。

    《しかし、クリプトモナスという人形には、まだ多くの中身がある。
    葉緑隊体はミトコンドリア同様、否定の余地がない細菌起源で、真ん中に細菌の染色体を持っている。
    これがゲノムⅢである。
    植物細胞はどれも同じ光合成のための細菌小器官を持っているのだから、
    この藻類と同じ三つのゲノム複合体を持っていることになる。
    クリフトモスにはもう一つのゲノム、ゲノムⅣがあって、
    それは緑葉体の周りを包んでいる複層幕の間にはさまれている。
    ゲノムⅣはそれ自身の膜の中におさまっており、
    ヌクレオモルフ(訳注:二次共生起源の色素体で共生したものの核が残存した構造)と呼ばれ、
    五〇〇ほどの遺伝子をコードしている三つの染色体を小型化した核である。》P23


    微生物の世界はかくも複雑で、かつその世界観は大きく、そしてまた深い。
    その厳密さ、複雑さゆえに、最初のハードルを高く感じがちだが、
    本著はその入り口のハードルを軽妙な語り口で下げて、
    徐々にその深い世界への橋渡しをしてくれる。
    科学的、厳密性と、詩的、軽妙な筆致が見事に融合した傑作だと思う

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB99812217

  • 生物が好きだと思っていたけどただ微生物が好きなんじゃなくて、人体、生活に関わってるより身近なものに興味があって好きなんだと思った

    脂肪と糖類が多い食事とってたら、糖類をうまく消化する菌が増えて太る


    シアノバクテリア:ミクロネシアのソテツの根に共生している空中窒素固定細菌。神経細胞の退化をうながす毒素のアミノ酸は種子に移動、コウモリの脳に濃縮されて人が食べるとALSパーキンソン型認知症になる。コウモリは撃ち殺されて絶滅した。

  • 欲張りすぎている。
    且つ、知性をひけらかしたいという筆者の自己満足的な文章で書かれている。
    それを感じるので、気持ちが悪い。

    優れた文章とは、難しいことを簡単にわかりやすく、簡単なことを深く説いているものだ、と思う。
    この本は、わかりにくくて困るというほどではないが、丁寧でもない。
    何よりも、イマイチ文章にセンスを感じない。
    筆者の傲慢さが鼻につく。
    何を気どっとるのだ、と。
    文化の違いだろうか。

  • 難しかった。

  • 請求記号 465/Mo 33

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