地図帳の深読み 鉄道編

著者 :
  • 帝国書院
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本棚登録 : 140
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (181ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784807166404

作品紹介・あらすじ

地図帳の老舗・帝国書院と地図研究家・今尾恵介氏がタッグを組んだ『地図帳の深読み』 待望の第3弾! 今回のテーマは、「鉄道」。
帝国書院の地図帳から鉄道の奥深き世界へ、さぁ出発進行~♪

感想・レビュー・書評

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  • 国内外の地図に描かれている鉄道路線から、それぞれの地域の地形や歴史を読み解いていく本。

    この本で紹介されている鉄道は、不自然な線形をしていることが多い。ループ橋やスイッチバック、迂回路などなど、まるでジェットコースターのような線形が多く登場し、どの事例も少年心をくすぐられるものである。

    個人的に印象に残ったのは、台湾の山岳鉄道に登場する3重ループ橋である。地図ではトグロを巻くように描かれており、標高差を稼ぐためにグルグルと登っていくのだが、大半はトンネルであり、ループであることに気付かない乗客もいるのだろう。

    新幹線はじめ、直線的で、トンネルや遮音壁に囲われた線形では、なかなか外の景色は楽しめない。多少移動時間は要するが、アトラクションとしての鉄道の旅(移動手段そのものが目的の旅)も魅力的に思えてきた。

  • 今西氏の地図深読みシリーズ第3弾、鉄道編。
     青函トンネルや丹奈トンネル、日本のループ線やスイッチバック鉄道の歴史、未成線や廃線、外国の植民地での鉄道、など地図と資料で丁寧に解説。

    第4章の、その「鉄道」はなぜそこにあるのか、がおもしろい。

    一関から大船渡までの「大船渡線」は途中、猊鼻渓あたりで逆Uの字に大きく迂回している。これだけで何分余計にかかるやら、と現在の我々は思う。氏によると、大正10年に途中まで開通したが、敷設場所をめぐってはその地出身の国会議員の意向があった。つまりおらが村に鉄道を通したい。そして現在は目的地までいかに速く行くか、が主眼になるが、当時にあっては時間ではなく、くまなく鉄道を通し、沿線住民の便を図る、ことが重要だった、とあった。これはなるほど、明治大正にあっては、そうだったのかな、と目からうろこだった。

    もうひとつ、最大の発見!
    「宿場の人たちが鉄道に反対したのは事実か」である。
     ・・今は否定されているという。

    明治期、鉄道が通ると鶏が卵を産まなくなる、とかで江戸時代からの宿場町の人は鉄道通過を反対した、という「鉄道忌避伝説」なるものが全国にあるというのだ。実は我が町も反対したので鉄道は通らず、結果隣町がずんずん大きくなってしまい、今頃悔しがるか・・ という・・ 全国にこういう伝説があったとは知らなかった。我が町だけかと思っていた。

    まず、新宿から八王子までの中央線(甲武鉄道)。「調布市百年史」(1968)には、「明治20年代・・沿線の強い反対によって、現在の位置に変更され、明治22年に新宿-立川間に通じた。もし甲武鉄道が調布を通っていたら、今日の様相はかなりかわったものとなっていたであろう」とある。多摩地方では常識のようなものとして浸透しているという。が今尾氏は、もともと甲武鉄道が玉川上水の築堤上に馬車鉄道を走らせる計画が蒸気鉄道に変化した経緯があり、計画時点で甲州街道沿い(調布、府中)に計画する文書が発見されていない、府中の旧名主の日記に鉄道のことが一切無い。反対運動があれば書いただろう。これらから野原の真ん中の一直線コースは鉄道として理想的であり、明治27年の調布の地図が載せてあり、今とは大違いで沿線に一列の甲州街道の宿場の家があるのみ、バックに人家は無い状態。東京から八王子を目指す鉄道がわざわざ調布や府中に立ち寄る必要性が乏しかったのがわかる、とある。

    「鉄道忌避伝説の謎」青木栄一著(2006吉川弘文館)があるというので、読んでみたい。



    2022.9.15発行 図書館

  • シリーズ第3弾、今回のテーマは鉄道。国内に限らず世界の地形図を元に独自の視点から見た鉄道史。地図上の空想旅行。

    筆者も気に入っているという、大阪~徳島の交通路の変遷が面白い。船便から南海で和歌山経由、昭和37年からは飛行機、その後高速船。それが明石海峡大橋の開通により高速バスの時代。陸海空全てを使った交通路の歴史が楽しめる。

    近年ようやく浸透し始めた鉄道忌避伝説を否定する内容も。鉄道史も見直しが進んでいる。

    オールカラーで懐かしい帝国書院の社会の地図をベースにした机上の小旅行が楽しめる一冊。

  • 100年以上わたる地図の内容の変化に着目する本
    です。これは鉄道路線の変化を取り上げています。

    鉄道マニアでもあることを公言する今尾氏ですが
    彼は著作の中では、それほどマニアックなところ
    を見せないのが好感が持てます。

    本書でも日本以外に、欧州の鉄道路線も紹介して
    その路線変更の目的が航空機からのシフトを促す
    ためである、という鋭い分析をしています。

    また路面電車でも同様です。

    日本でもようやく議論が始まったLRTの効用は、
    欧州ではとっくに先を見越して取り入れています。

    こういったグローバルは視点で書かれているのが
    特徴です。

    「古きをたずねて新しきを知る」の温故知新を体
    現できる一冊です。

  •  地図から読み取れる鉄道の歴史や豆知識などを数ページごとにまとめた本。鉄道が好きでしかも地図が好きなら楽しめるし、どちらかが好きでも楽しめる本だった。

  • 電車旅に出かけたくなった

  • <目次>
    第1章  地形に従い地形を制す「鉄道」
    第2章  「鉄道」栄枯盛衰
    第3章  「鉄道」から見えてくる外国の姿
    第4章  その「鉄道」はなぜそこにあるのか
    第5章  地図帳を見て気づく「鉄道」あれこれ

    <内容>
    帝国書院の今尾恵介「地図帳」シリーズの第3弾。地図オタの代表格の今尾さん。今回もやってくれてます。地図の中に話題の部分は赤矢印がしっかりと!ちょっと小さいけどね。帝国書院も、教科書が停滞していますから、なんとか売れ線狙いなんだね。”我田引鉄”の話が参考になりました。

  • 地形や地質、天候といった自然の制約に加え、政治や経済、文化といった人間の制約があり、線路は走るよどこまでも、まっすぐまっすぐ、というわけにはいかない。
    そして敷設された線路には未来永劫需要が約束されているわけでもない。栄枯盛衰。
    そんなロマンがつまった本書。

  • 地図帳の深読みも3冊目、今回は鉄道が題材です。
    このシリーズ、基本的には古い地図と新しい地図を見比べてその間の変化を読み取ろうというものですが、使用している地図が帝国書院の教科書用のものなので小縮尺で……。何度か、ええい国土地理院の1:25,000持ってこーいと叫びそうになりました。いや扱ってる内容は面白いのですけど。
    あと海外の鉄道に関する話は類書に余り見ないので参考になりました。

  • 嘗て都市計画を志した人間として、この号が一番面白かった。
    特に鉄道忌避伝説に言及した説は鉄道敷設に必要な前提に触れていることで、地図の表面だけでは理解できない部分を含めて解説しており評価できる。

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著者プロフィール

今尾 恵介(いまお・けいすけ):1959年横浜市生まれ。地図研究家、エッセイスト、フリーライター。中学生の頃から国土地理院の地形図に親しみ、時刻表を愛読する。音楽出版社勤務を経てフリーライターとして独立、イラストマップ作成や地図・鉄道関連の著作に携わってきた。著書に『日本の地名おもしろ探訪記』『日本地図のたのしみ』『ふしぎ地名巡り』(以上ちくま文庫)、『地名の楽しみ』(ちくまプリマー新書)ほか著書多数。

「2023年 『ふらり珍地名の旅』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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