新型コロナワクチン: 遺伝子ワクチンによるパンデミックの克服

著者 :
  • 東京化学同人
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  • Amazon.co.jp ・本 (132ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784807920167

作品紹介・あらすじ

mRNAワクチンとは? ウイルスベクターワクチンって何?
遺伝子ワクチン開発の草分け研究者が徹底解説

今回の新型コロナウイルス感染症では、2021年2月23日現在、感染者は1億1172万人、死者は247万人に達しています。幸いなことに、遺伝子操作などを駆使して開発されたいわゆる「遺伝子ワクチン」が、これまでにないスピードで開発され、ようやく日本国内でも、2021年2月7日に、新型コロナウイルスに対するワクチン接種が始まりました。

今のところ世界で接種の始まった遺伝子ワクチンは、メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンとウイルスベクター(VV)ワクチンですが、いずれもこれまであまり人体に用いられたことのないタイプのものです。そのために、副反応を恐れている方もいるでしょう。しかし、これらのワクチン開発の背景には、20?40年前から積み重ねられてきた基礎研究があります。

本書では、遺伝子ワクチンの仕組みを紹介します。そして、世界保健機関(WHO)の主導による天然痘の根絶など、人類のパンデミック克服の歴史を振り返り、そこからの教訓について考えます。そして、将来人類を襲う可能性のあるパンデミックの備えに対する展望を考えてみたいと思います。

感想・レビュー・書評

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  • 日本でも接種が加速されている新型コロナワクチン。
    その基礎知識を整理しようという1冊。

    著者は、ワクチン開発にも従事してきた、免疫ウイルス学・細胞生物学の研究者。
    わかりやすくコンパクトにまとめられている。

    過去のパンデミックやこれまでのワクチン、免疫系の働きなどから説き起こし、今回の新型コロナワクチンがどのような性質を持つものかを解説していく。

    帯には
    「ファイザー製とアストラゼネカ製の違いは?」
    「有効率95%ってどういう意味?」
    「ワクチンを打ったら、もうマスクはいらない?」
    「副反応が心配・・・血栓ができると聞いたよ」
    「たった1年で開発されたらしいけど大丈夫?」
    「ウイルスベクターワクチンって何?」
    「mRNAワクチンって?」
    「ワクチン以外の薬も知りたい」
    などの疑問が。
    こうした疑問がある人は一読するとよいだろう。

    ファイザーとアストラゼネカのワクチンの大きな違いは、前者がmRNAワクチンであり、後者がウイルスベクターワクチンであることである。
    mRNAはタンパク質に「翻訳」される情報を持つ核酸である。非常に分解されやすい物質だが、ワクチンに使用する際は脂質膜でコーティングされる。ウイルスのスパイクタンパク質の情報を持つmRNAが投与され、これが体内でタンパク質となり、これに対する免疫反応が起こるというしくみである。モデルナのものもこのタイプである。
    ウイルスベクター(VV)ワクチンは、他のウイルス(今回のアストラゼネカの場合はアデノウイルス)の外被を、ベクター(いわば「運び屋」)として用い、その中に(今回はコロナウイルスの)スパイクタンパク質のDNAを入れる。「運び屋」のウイルスは生体内で増殖せず、宿主ゲノムに組み込まれる危険性もない。1回の接種でも有効とされるジョンソン&ジョンソンもこのタイプ。

    従来は長い年月がかかっていたワクチン開発だが、今回開発が早かったのは、1つには、mRNAワクチンもVVワクチンも「遺伝子組み換え技術を用いて作製された、おもに核酸で構成されたワクチン」であることが大きいという。
    従来の生ワクチンでは、弱毒化や不活化されたウイルスを用い、鶏胚や培養細胞にウイルスを接種して増やす必要があり、危険が伴う上、何かと時間がかかった。
    これに対して、核酸は化学合成できる。変異に対する対応も迅速であることが期待される。
    今回はこれに加えて、承認までの工程を1つずつではなく、ある程度重複して進めていったことも加速につながった。通常、基礎研究→非臨床→臨床試験→申請→審査→承認→生産体制整備と進むところ、基礎研究を行いながら臨床試験も進め、生産にも備えていった形である。パンデミックが急速に広まったため、ワクチンを接種する群と偽薬接種群に分けた臨床試験のデータが取りやすかったのも(皮肉なことだが)大きな要因となった。

    意外に誤解されやすいのが「有効率」という言葉だが、例えば、95%の有効率といった場合、100人がワクチン接種を受けたとき、5%が発症することではない。接種しなかった人に比べて、接種した人では発症率が95%低いという意味である。実際のファイザーのデータでは、ワクチン接種者18,198人のうち発症者が8人(0.04%)、ワクチン非接種者18,325人のうち発症者が162人(0.87%)で、下の等式に当てはめると有効率は95%となる。

    著者はVVワクチンの開発にあたった経験があり、そのあたりの裏話もなかなか興味深い。
    その他、ワクチン以外のウイルス薬、動物由来のウイルス、パンデミックと国家安全保障などにも触れている。

  • 新型コロナワクチンについて、技術的要素多めで語られた一冊。新型コロナワクチンとして使われている、mRNAワクチンとウイルスベクターワクチンの2つの遺伝子ワクチンの概要・副反応はもちろん、変異株(にワクチンは九効くのか?)についての情報も掲載されている。他のワクチン本と違い、かなり細かいところまで詳しく解説されている。難しい箇所も多かったが概ね理解できた。

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