もっと知りたい東山魁夷 生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)
- 東京美術 (2008年3月20日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (80ページ)
- / ISBN・EAN: 9784808708269
感想・レビュー・書評
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ファン歴は短いけど、私が最も好きな日本の画家、東山魁夷。
図書館でこちらを見つけたときはテンションが上がった!
美術コーナーは毎回見ているのに、見落としていた棚があり、そこは魅力的な美術作品集がズラリ・・・!!
一冊ずつ読んだらここでご紹介していこうと思います。
まずはこの方の作品集。
魁夷の生い立ちに沿って、その時の作品が時系列で掲載されている。
魁夷の若い頃の作品を始め、皇居新宮殿大壁画や唐招提寺御影堂に使われた絵の全てが掲載されていたり、旅先でのスケッチも充実。非常に盛り沢山でお得な一冊。
以下、読書メモ。
・旅のスケッチ
留学中に逡巡したフランスやイタリア、スイス、ドイツの街、
古都(皇居新宮殿大壁画制作の際に生かされた)、
中国(唐招提寺御影堂の依頼に生かされた。魁夷の水墨画も魅力的です)等のスケッチが地図と共に掲載されている。
・風景画からの画題の転換
第二次世界大戦が勃発した頃、風景画が画題の主だった魁夷は、「凪」を描きモチーフと転換を図ったという。
風景画は展覧会場で引き立たないと感じたためだそうだ。
・自身と自然との一体感を感じた瞬間
敗戦の直前、彼は死を覚悟していたという。
「そんな彼の目に映ったのは風景に満ちる生の輝きだった。自身と自然との一体感を感じ、風景への眼を開かれた瞬間となった。」
その時の体験から生まれたのが、鹿野山の山頂で描かれた「残照」。
・「道」
表紙にもなっている「道」は、青森県八戸の種差海岸。
シンプルなのに、心が打たれる作品だと感じる私が好きな作品。
目の前に開かれたこれからの道を感じさせるからかな。
・北欧の影響
魁夷は、「静寂のなかに生の息吹が感じられる」北欧の風景に共鳴した。
「青の画家」というイメージは、北欧への旅の影響が大きいのだという。
清澄な雰囲気は北欧の題材を得たことで益々研ぎ澄まされた。
(森と湖の国フィンランドをテーマに描いた「白夜光」、フィンランドのヘルシンキを描いた「二つの月」、コペンハーゲンを描いた「フレデリク城を望む」はとても素敵な作品。)
・白い馬の見える風景
19点の連作。私が最も好きな魁夷の作品です。
このテーマが思い浮かんだとき、彼の頭の中で流れたのはモーツァルトのピアノ協奏曲イ長調の第二楽章が流れたそう。
魁夷はクラシックも好きだったようだ。
東山魁夷の作風、本当に好きだ。改めて思った。
この本、またきっと何度も読みたくなる。
もしかしたら書店で買うかもしれない。
それくらい魅力的な一冊。
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山種美術館で東山魁夷展を見た後で復習として購入。このシリーズはお手頃で代表的な作品を広く浅く網羅してくれててよい。
お高い画集と違って、自炊してタブレットに入れて持ち歩ける気楽さもいい。 -
東山の作品は風景との真摯な対話によって、自身と自然との合一をはかるところに生まれてくる。これもきわめて日本的な考え方とも見えるが、その姿勢は現代において日本人が失いつつあるものである。人間と自然が乖離しつつあるこの時代に、作品を通して自然との対話の大切さを語り続けてきた東山芸術は、その意味で時代に生きる感覚を確かに宿している。東山魁夷の作品が多くの人々の共感を得ているのも、実にそれゆえといえよう。
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長野の東山魁夷美術館に行った後に。このシリーズはカラーだし程よい量なので好きです。行く前に読めればよかったな。